ラベンダーとソプラノ

著者 :
  • 岩崎書店
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本棚登録 : 244
感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784265840359

作品紹介・あらすじ

「今年こそ金賞を」の重圧と厳しい練習で崩壊寸前の合唱クラブ。
小6の真子はボーイソプラノの朔や商店街の合唱団と出会い、頑張ることの意味やクラブのあり方を考える。

青春小説『ヒトリコ』『タスキメシ』の著者が描く、初の児童文学!

感想・レビュー・書評

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  • 額賀さん初の児童書。
    コンクールで金賞を取るために、厳しい練習が続きギスギスしてしまった合唱部クラブ。
    そして、ゆるっと自分のペースで楽しむ半地下合唱団。
    どちらがいい悪いではなく、それぞれのスタイルを選べて認め合えるようになったらいいんだろうな。
    でも、子どもに対しては、「目標に向かって仲間と全力で頑張る」という姿を求めてしまいがち。
    みんながそうできる訳ではないことを、改めて考えさせられた。

  • こんなことなかったかな?と反省させられる。楽しいが一番大事、は今ならわかる。一生懸命な小中学生に読んでほしい。

  • 楽しむこととがんばらないことは同じではない。
    間違ってはいないけど正しくはなかった。

    胸にスッとくる言葉がたくさんあった。

    がんばることって、「頑張ってる自分」に誇りを持ったり、他の人より頑張ることで優越感を感じたりできるから、気づかないうちに暗い方へ向かっちゃう。特に合唱という1人ではできないものだと、「こんなに私は頑張ってるのに何でみんな頑張ってくれないの?」という気持ちになりがちだし、そう考えている自分が正しくも感じてしまう。

    目標の達成にはある程度のしんどさは必要かもしれないけど、しんどくなることや周りを傷つけてまで行う頑張りは本当に嫌だよね。

  • こういう本を必要としている子ども達もいるかと思いました。

  • きっと娘がこれから経験していく世界。指導者で雰囲気や結果が大きく変わる頃。難しいけれど、頑張ってくれ、と思う。先生も生徒も。いわゆる「くすみカラー」というのは小学生でもまだまだ流行中らしい。選択肢が多い事が羨ましい。

  • 全国でも有名な合唱強豪校にいる真子。全国大会目指して練習を重ねるが、「今年こそは優勝を」というプレッシャーに不協和音が響きだす。下級生の優里の退部希望から不登校になり、真子も不調に陥るが朔と知り合い、商店街の地下合唱団の存在を知り、歌の楽しさを思い出す。児童書向けの単純な筋書きであるが、内容は割と重い。合唱部はただ「優勝する」だけの目的で練習を重ねていて、顧問を始め人間の事はお構いなしになっている。誰が悪いというわけではないが、顧問は顧問で保護者達からのクレームでプレッシャーがかかり厳しく指導するようになったのかも知れないし、部長の穂乃花は子供特有の勝利願望なのか、部長だから優勝に導かないといけないという責任感なのかはわからない。徐々に部員達の心が離れていくのに気付かずに最後の方になって数人が舞台練習をボイコットしても顧問と穂乃花は何が悪いのか気づいていないようだ。真子は地下合唱団で伸び伸びと歌うようになり、楽しさを思い出すが、ルールの中で練習する大切さにも気づいたようだ。地下合唱団は好きな時に集まり、好きな歌をみんなで歌う。メンバーの中には同性カップルもいれば、アロマンティックの人のもいる。今、流行りのLGBTも取り入れている。人々の動きや仕草が流麗に描かれており、商店街の活気溢れる様子や風景描写はとてもいい。真子が穂乃花と言い合いになった時に朔が突然、歌い出すのは少し意味がわからなかった。

  • 楽しんでる人が努力してないとは限らない。これは先生が残念な話。。

  • 感動系の本。真子ちゃんと朔くんとどんどん仲良くなり、強くなるのがいい。感動した。

  • 主人公の真子は、ラベンダー色のランドセルを持っている6年生の背の高い女子。歌うことが好きで、合唱部の強豪校でアルトパートリーダーをしている。

    コンクールの金賞を逃し、卒業する先輩たちに「次こそ金賞を!」と夢を託された新6年生。プレッシャー、うまくいかない焦り。上から押さえつけることで状況を打開しようとする、2年目の顧問、部長。当然、反発する部員もいるし、委縮してしまう部員もいる。歌はまとまらず、ますます部長は焦るし、雰囲気は最悪。悪循環のなかにある。

    部長のやり方に違和感を覚えても、真子は何も言えず。自分には何もできないと思ったり、もっと部の雰囲気を悪くしてはいけないと思ったり。対立することを恐れている。何より、自分自身の抱える気持ちを言葉にすることができない。

    気がつけば、歌うことが楽しくなくなってしまう。そんな中、アルトパートの5年生・優里が不登校になる。優里の幼馴染、朔に出会う。朔の両親が経営するバーで、商店街の人たちがいる小さな半地下合唱団に誘われる。

    合唱団は、トランスジェンダーではないけれど制服のスカートをはきたくない女子中学生や同性カップルのおにぎり屋さんなどが、普通に登場し、日常に溶け込んでいて、新しい世代の小説なのだと感じた。
    朔の美しいボーイソプラノと半地下合唱団での大人たちとの出会いが真子を成長させる。

    半地下合唱団で和気藹々と歌うことは楽しい、一方で、真子は「きびしい練習をすること、きびしい指導をされること、それらを全部否定したら、わたしたちはきっと、ほしいものを何も手に入れられない。」ことに気がついている。合唱部が楽しくなくなってしまっても、練習には欠かさず出るような頑張っている子が言うと説得力がある。

    「先生だって人間だもの。生まれたときから〈先生〉って特別な生き物だったんじゃなくって、真子ちゃんと同じ、ただの子どもの延長上にいるんだよ。」

    保健室の南先生の言葉。真子はびっくりする。「大人は絶対で、賢くて間違えない。」そう思っていた自分の生真面目な子供時代と重なった。真子が、南先生にかぎらず、出会えてよかったと思えるような大人たちに会えてよかった。

    歌を楽しむ合唱団と、コンクールを狙う合唱部。優劣をつけるものではない。どちらが正しいかということもない。いよいよ終盤になって、真子はコンクールで金賞を取りたいと猛進する部長に意見する。でも、否定はしない。でも、このままじゃ、合唱が嫌いになっちゃうと訴える。それぞれの〈正しさ〉が違うだけで、ぶつかり合ってる。ぶつかっても、離れなければ、絆は強くなる。遠慮して何も言えないよりずっといい。

    半地下合唱団の活動がバレて、お母さんと真子が話す場面も泣ける。
    こんな風に自分の思うことを言葉にできる小学生って稀有な存在なんじゃないか?と思う。
    お母さんは、ステレオタイプに、学校の部活の方を頑張れって主張するけど、お父さんは思うようにやってみろって言ってくれる。良い家庭だと思った。

    装丁のラベンダー畑で歌う真子と裏面の微笑む朔が爽やかで優しくて素敵だ。

  • 額賀さん初の児童書は「今年こそ金賞を」の重圧と厳しい練習で崩壊寸前の合唱クラブを描いた物語。

    児童書と侮るなかれ、とても刺さった。

    大人が読めば過去の体験を思い出すだろう。
    現在、部活を頑張っている小中高生が読めば共感する事が多いと思う。

    「好き・楽しい」から始めたものが、先輩部員や顧問の厳しい言葉で嫌いになっていく。
    ピリピリとした雰囲気の中で合唱部員達が怯え葛藤する姿がリアルだ。

    誰の為の何の為の部活なんだろうと首を傾げずにはいられなくなる。
    心を壊してまで続ける部活に意味はない。

    子供達の繊細な心に寄り添った一冊。

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著者プロフィール

1990年、茨城県生まれ。日本大学芸術学部卒業。2015年、「ウインドノーツ」(刊行時に『屋上のウインドノーツ』と改題)で第22回松本清張賞、同年、『ヒトリコ』で第16回小学館文庫小説賞を受賞する。著書に、『ラベンダーとソプラノ』『モノクロの夏に帰る』『弊社は買収されました!』『世界の美しさを思い知れ』『風は山から吹いている』『沖晴くんの涙を殺して』、「タスキメシ」シリーズなど。

「2023年 『転職の魔王様』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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