お化けだぞう

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267014789

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  • 江戸、呉服商の主人藤兵衛は本草学に憑かれ草木の不思議を求めて各地を旅をする。妻タキとお供たちをつれての珍道中がおもしろい。街道、宿場町の様子、各地の名産。江戸時代の旅の様子が伝わってくる。

    遭遇する摩訶不思議な草木に気持ちを奪われた。本の中で旅しながらも、実際に共に旅したい、草木の不思議を味わいたいと(物語と現実の境も越えて)切望するほど魅力的だ。
    「天と地の持つ漲る力が樹木にもおよび、そこに働く力用こそを不思議といい奇妙と呼ぶのだ」とある。草木の中に天と地の漲るエネルギーを感じたい。

    妻タキは旅先にありながら装いに手抜かりはなく、季節ごとの着物の意匠の描写も興味深い。そのタキ、没落した武家の深窓の佳人であるが、旅を重ねるにつれ魅力を増し、解放されていく。その様子が興味深く、最後はまさかの……改めて最終章の題に得心。村田喜代子さん、やはり女性の描き方が素晴らしい。

    「本草の心は、道を訪ねて憧れ歩くことから始まる。」とあった。草木に憧れて旅にでたい。江戸時代の旅人のような旅がしたい。

    それにしてもこの本のタイトル、もったいない。物語の魅力を全く伝えてないと思うのだが…

著者プロフィール

1945(昭和20)年、福岡県北九州市八幡生まれ。1987年「鍋の中」で芥川賞を受賞。1990年『白い山』で女流文学賞、1992年『真夜中の自転車』で平林たい子文学賞、1997年『蟹女』で紫式部文学賞、1998年「望潮」で川端康成文学賞、1999年『龍秘御天歌』で芸術選奨文部大臣賞、2010年『故郷のわが家』で野間文芸賞、2014年『ゆうじょこう』で読売文学賞、2019年『飛族』で谷崎潤一郎賞、2021年『姉の島』で泉鏡花文学賞をそれぞれ受賞。ほかに『蕨野行』『光線』『八幡炎炎記』『屋根屋』『火環』『エリザベスの友達』『偏愛ムラタ美術館 発掘篇』など著書多数。

「2022年 『耳の叔母』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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