燕京伶人抄 (潮漫画文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267017117

感想・レビュー・書評

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  • 皇先生の作品は墨が美しい。

  • タイトルに惹かれ手にとって
    裏表紙を見てハッとした


    ”このシリーズを書くきっかけになったのは
    一本の映画……
    そう、京劇を中心に話しが進む前半の数話は、
    当時一世を風靡した(んだっけ?)
    香港映画「さらば我が愛~覇王別姫~」の
    絶大なる影響下にあります 
            (著者あとがきより引用) ”

    そう著者が語っているように

    美麗に描かれた京劇役者の姿は
    「さらば、わが愛 覇王別姫」の蝶衣そのままのような
    夢のような姿だし
    綴られる物語世界は
    レスリー・チャン演じる少爺とアニタ・ムイの娼妓の
    時空を越えてなお悲しい愛の物語り 
    「ルージュ」 の世界もどこか思い出させる。


    お話はあの映画のような、ドラマチックに悲恋や
    悲劇の物語りではないのだけれど
    京劇世界と関わりを持った人々のあれやこれやが描かれ
    著者がこよなく愛して止まなかったという「古き良き北京」の面影が
    ギュッと詰まったような短編漫画集は
    どこかから京劇の音が流れ続けているのが
    聞こえてきそうな絵物語に酔わせてくれる。



    1920年代、北京。
        馮家の大太爺の誕生祝いの席に招かれた
        評判の京劇役者・楊洛仙たち一座の者と
        戯迷(芝居好き)の度が過ぎて
        その日も戯を聴くことすら禁じられている
        馮家の三少爺・如山


    映画「ルージュ」での少爺(お坊ちゃま)のような
    京劇好きで唄を習い素人芝居にうつつを抜かす道楽息子というような話しなのかな?
    と読み初めは思ったのだけれど

    だから役者たちが後日、戯団を訪ねてきた三少爺に
    誉めそやすのも
    …これはおバカな金持ちの家の息子を
    煽ててあわよくば…

    などと意地悪な、でもわりとよくありがちの筋書きを
    思い浮かべてしまったりしたのだけれど

    でも彼らには、そんな
    表で誉めて陰で人を馬鹿にするような
    陰湿といえばそうだけれど
    身分の低いもの、蔑まれるものの悲しさなんかは
    ありもしなくて
    役者の仕事に心から誇りを持ち
    だから人にも優しい、優しくできる
    そんなまっとうな人々で


    覇王別姫のあのそう生きるしかない生
    実るはずのない愛だからこその悲しさ。
    ルージュの放蕩息子の弱さ、頼りなさと
    後の世に幽霊になってまで
    現れる女の恋情の行き違う悲しさ…
    それらは悲しいからこそ映画を胸に迫る物語りに仕立ててくれていたけれど
    でもこんな風な優しい人々の世界に
    あの蝶衣や如花がいたとしたら…?と
    思わずにいられなかった。
    彼らが幸せでいられたかもしれないような
    もう一つの世界
    そんなものを思わせてくれて

    後半ではあとがきにも書かれているように
    馮家の四妹を中心に、少女たちが見聞きする身の周りのあれこれや
    そんな人の世に触れながら大人になっていく姿が描かれているのだけれど

    世の中が移り変わるさなか
    新旧の価値観がぶつかり合ったり混在している世界は
    古き良き、というだけでなく
    正に激動の時代のただ中でもあったんだなぁと読んでいて興味深いし
    激動の時代といっても
    例えば宋家の三姉妹なんかのような
    その嵐そのものや、嵐の中心にいたような人々の話ではなくて
    何だか分けも分からず、嘆いたり反発したり翻弄されつつも
    生きて行くしかないような、
    市井の人々の話しだからこその面白さもあるような。


    美しい絵と小さな話だけれど、豊かな物語り世界
    楽しませてもらいつつ、でもやっぱりどこかで胸切なくするような
    二胡の調べでも
    微かに聞こえてきそうな気がするのは
    これが今はもう失われた世界の話しで
    ノスタルジックなお話しだからなのかもしれませんが

    一つの時代と、場所を思った
    作者の気持ちが小さな宝石になったよなうな
    漫画でした。

  • レトロチャイナでシリアスで美麗画とかもうどうしたらいいのかと。素晴らしいの一言。

  • 1920年代の北京が舞台。はっきり言ってもうこれだけでワタシの好みです。
    大金持ち大家族の子ども達や京劇の売れっ子役者、その友達や周囲の人々を描く連作。
    絵がきれいなので、女性達の服装を眺めてるだけでも楽しいのに、それぞれにの人物が抱えているものが丁寧に描かれていてジーンとできたりもする、オススメの一冊。

  • 繊細で美しく絵を描く漫画家・皇なつきの京劇漫画。


    “1920年代燕北(北京)。古い慣習と新しい空気の交錯した時代。大家の少爺[わかさま]、如山の戯[しばい]好きに激怒する兄、如海の本心とは……?
    名旦[おやま]、楊洛仙を軸に織りなされる、京劇に魅せられた人々の夢と現を描く。絢爛たる舞台は一時の至福、そして永遠の憧憬……。”―表紙より。

     ◇鳳凰乱舞
     ◇愁雨歳月
     ◇鏡花水月
     ◇落花流水


    漫画とは思えない緻密な絵で、古き良き北京の姿が描かれていて、中国文化の勉強にもなります。
    京劇の世界って憧れるわぁ。衣裳も素敵。

    文学作品のように読めるコミックです。
    中国好きな方にオススメ。

  • 画の美しさが無類。どの話も読み応えがあります。

  • 皇なつきの中国漫画だいすきです
    中国じゃなくてもだいすきだけど

  • 大好き。

  • 清代末期の中国文化の描写が美しい。
    細かく描き込まれていて見てて楽しい。

  • 好!

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著者プロフィール

1990年デビューの漫画家。京都在住。近刊『山に住む神』(あすかコミックスDX)

「2021年 『お江戸ふしぎ噺 あやし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

皇なつきの作品

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