漱石センセと私

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784267021374

作品紹介・あらすじ

漱石センセに恋い焦がれた少女時代、漱石の妻・鏡子との奇妙な絆、正岡子規から学
んだ俳句、そして生涯の伴侶・久保猪之吉との出会い──。
「センセ」はどんな人なのか? 鏡子夫人は本当に「悪妻」だったのか? 
より江から見た、知られざる「夏目漱石」がここにある!

松山に住む美少女が、漱石、鏡子、子規、高浜虚子、柳原白蓮らとの出会いや別れを通して、やがて大人の女性へと変貌を遂げていく。

感想・レビュー・書評

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  • 夏目漱石と樋口一葉に関しては一家言もニ家言も持ちあわせてる著者が、漱石センセに縁のある久保より江という俳人の半生を追う。わたくしは俳句に造詣なく、初めて知る女性だ。より江が少女時代に、漱石と正岡子規が彼女の祖父母の家に下宿していたようで、彼らとのほのぼのとしたやり取りが微笑ましい。やがて、医学博士にして著名な俳人となられる久保猪之吉と出会い、結ばれるまでの波乱万丈ってほどでもないけれど、当時の女性としては刺激的で自立した人生が描かれる。著者らしい温もりのある筆致で、漱石夫妻の微妙な関係や歩みもやんわりと。

  • 吾輩は猫の雪江さんモデルの女性の話。漱石の周りは人物が華やか。でも、普通に学生だったりするから、楽しい。

  • 面白かったです。出久根さんは初めて読みました。
    より江という少女の視点で、夏目漱石や妻の鏡子を描く…というより、メインはより江の成長でした。
    より江と猪之吉とのあれこれがほとんどだったのですが、優しい目線でおおらかに読めます。
    描かれる出来事は、どの登場人物にとっても結構おおごとなのですが、穏やかに素直に描かれているので良かったです。
    鏡子夫人は悪妻でもなんでもなかったです。むしろ、漱石と付き合うにはこれくらいさばけていた方が良いと思いました。
    漱石の著作のモデルとか、エピソードの元になったものも色々と挙げられていて、また読みたくなりました。
    エピローグで、実際の久保夫妻が福岡にいたのを知っていきなり物語が身近になりました。

  • 久保より江から見た、夏目漱石とその夫人や当時の状況について。

  • 夏目漱石の作品を通してしか漱石を知らなかったが、俳人・久保より江さんを通して漱石の人物像を表現した作品。漱石の作品も身近な人を題材にして作られていたのも初めて知った。
    しかし夏目漱石の話しがメインではなく、あくまでも明治の女・久保より江の話しでしたが、なんとなく温かくてノスタルジックな作品で良かったですね。

  •  面白い。明治という時代背景に、ほんわかとした面白さが満ち溢れている。
     
     「おばあちゃんが化け猫だというんです」
     「襖を手で開けるから気味悪いって」
     「おや。確か猫は手で開けるよ。襖も障子も。重くなければ板戸だって横にすべらせるよ。器用に開けて外に出ていくよ。ちっとも変じゃないよ」
     「でも」
     「そんなことで化け猫は扱いは、そりゃちと、可愛そうだね」
     「この猫、開けた戸を閉めて行くって言うんです」
     「えっ?開けた戸を閉めて行く?」
     「開けっ放しにしていくのではなく、きちんと閉めて行くって」
     「猫が?この猫がかい?」
     「開けて閉めながら、ニヤリと笑ったんですって」
     「ニヤリと?二ヤァじゃなくて?」
     「センセ。あたし、真剣なんです」

     猪之吉がスカーフでなく、黒猫を抱いているのだ。そしてより江は、はっきりと黒猫の声を耳に聞いた。「ご主人は僕が守りますよ」と言っていた。
     「お願いよ」より江は叫んだ。「頼みますよお」何度も叫んだ。
     「ご安心なさい」猫がうなづく。
     より江の眼から涙がほとばしった。

  • マイブーム・正岡子規ばっっかり読みすぎていたので、漱石メインの本を何か…と書架をさまよっていて見つけた一冊。おお、出久根達郎さんの新刊じゃないか!パラリと捲って、のっけから子規in愚陀仏庵だったので、結局ウハウハだった訳ですが。

    タイトルや帯には漱石と打ってありますが、久保より江さんと仰る、後に俳人・医師として名を馳せる久保猪之吉の奥さんの少女時代からの伝記的小説でした。愚陀仏庵を漱石に提供していた上野家のお嬢さん、と云う事らしいです。彼女の初々しい目から見た漱石と、妻・鏡子さんへの複雑な思いが、物語の縁側。全体的に出久根さんらしい、優しく始終和やかな空気感は読了後も余韻に浸る事が出来ます。

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著者プロフィール

出久根達郎(でくね・たつろう):1944年茨城県生まれ。中学卒業後、上京、古書店に勤務する。73年から古書店・芳雅堂(現在は閉店)を営む傍ら、文筆活動に入る。92年『本のお口よごしですが』で講談社エッセイ賞、93年『佃島ふたり書房』で直木賞を受賞する。2015年には『短篇集半分コ』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書に『おんな飛脚人』『安政大変』『作家の値段』など多数がある。

「2023年 『出久根達郎の古本屋小説集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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