陰暦暮らし

著者 :
  • 武田ランダムハウスジャパン
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784270002285

作品紹介・あらすじ

梅雨の真っ最中になぜ七夕?十二月の討ち入りになぜ梅の香?これすべて、暦のいたずら。忘れてしまった季節の移ろいを「陰暦」でよみがえらせる。

感想・レビュー・書評

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  • さらっと目を通しただけ。あまり興味をひかれなかった。

  • 去年今年貫くものは選挙だけ【赤松正雄の読書録ブログ】

     ラジオからの声を聴いていて、読みたいと思った。千葉望『陰暦暮らし』は不思議な魅力に充ちている。日本に生まれ育って60余年。いかに何も分かっていぬかを思い知らされて甚だ面白くないような、また有り難いような。28編の陰暦に関するエッセイはいずれをとっても味わい深い。岩手のお寺に生まれた著者は、着物姿が似合いそうな和風美人(写真から推察)。日本の古き文化、伝統、芸能などに卓越した知識を持っておられる。是非一度会ってみたい気も。

     年々歳々、正月気分は薄れがちで、いつの間にか暮れがやってきて慌しく正月が過ぎ去ってしまう。ゆえに、せめて本の上だけでも正月気分に浸ろうと言う思いもあって、年末年始のくだりから読みすすめた。「去年今年貫く棒の如きもの」という虚子の句は、年が変わるといってもたいした違いもないとの解釈が普通。私など「去年今年貫くものは選挙だけ」などと茶化しているが、著者はさすがに貫くものは「鐘の音」と、新鮮な響きをかもし出す。 

     冒頭はご存知忠臣蔵から。新暦12月14日は私の地元播州・赤穂でも義士祭があるものの、旧暦でないと、やはりピンとこない。泉岳寺、吉良邸跡とめぐっての思いが綴ってあるが、赤穂城跡にも来てもらいたいもの。先日、赤穂城前や息継ぎ所など歴史的風情溢れた場所で街頭演説をした。毎度のことながら仇討ちの本場では自ずと声にも力が入る。

     正岡子規が35年の生涯を閉じた根岸。先日テレビで放映された『坂の上の雲』にその住まいが登場したばかり。「雛あらば娘あらばと思ひけり」と生涯独身だった子規の句の紹介をしている著者も実は独身。「子規がとうとう実現できなかった人生である」との記述にそこはかとない重なりを見てしまうのは、おおきなお世話に違いない。

     新年が過ぎたあとに、ますます寒さが厳しくなるのは新暦の矛盾ではないか、と。旧暦であれば、新たな年の開幕と同時に幾ばくかでも暖かくなる気配がするのだから、気分のノリが違うというわけだ。季節感漂う陰暦について、手ほどきをいただき清々しい気分に浸ることが出来た。

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著者プロフィール

岩手県生まれ。早稲田大学文学部日本文学専修卒業。佛教大学大学院仏教文化専攻修士課程終了。ノンフィクション・ライターとして、人物インタビューやルポ、書評などを執筆。『実践する!仏教』(すばる舎)『共に在りて』(講談社)ほか。児童書に写真絵本『マリモを守る。』『お月さまのこよみ絵本』(理論社)『大切な人は今もそこにいる』(理論社)は読書感想画の指定図書に選ばれる。

「2023年 『遠くの人と手をつなぐ SOSの届け方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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