必携 インターネット広告 プロが押さえておきたい新常識

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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784295007401

感想・レビュー・書評

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  • 【はじめに】
    「業界団体「日本インタラクティブ広告協会(JIAA)」がまとめた、インターネット広告のプロのための手引書」という触れ込みで2019年に出版された解説本。表紙にあるように「ネット広告の理解をアップデートする」ための本とも言える。急成長を遂げる中でさまざまな課題を抱えているインターネット広告について、これまでの歴史を踏まえた上で現時点のマーケティング全体におけるポジションや、広告効果測定の理論的背景の解説となっている。

    【概要】
    ■インターネット広告の歴史
    2019年には日本でもついにテレビ広告市場を抜き、2020年には広告市場全体の36%、2.2兆円(テレビ広告は27%、1.7兆円)となったインターネット広告。1994年HotWiredのバナー広告から始まったと言われるインターネット広告の25年の短い歴史を辿り、検索連動広告、ターゲティング(オーディエンスターゲティングなど)の進化、運用型広告の高度化(アドエクスチェンジ/アドネットワーク/DSP・SSP・RTB)、広告フォーマットの多様化(ネイティブ広告、レスポンシブ広告、ダイナミック広告、動画広告)、モバイル広告の急成長、などがおさらいされる。

    検索連動型広告、アドネットワーク、DSP/SSPを介した運用型広告が2018年には8割前後を越え、当初の予約型広告に対して大きく成長を遂げたことがスマートフォンの普及に伴うモバイルシフトとともにこの10数年の大きな変化であったと言える。その結果としてますますグローバルプラットフォーム事業者の影響度が強まっているのがインターネット広告市場の現状と言えるだろう。

    ■ インターネット広告の効果測定
    インターネット広告では、TVCMなどと違って広告効果を確実に把握できることがメリットとされてきた。

    「認知・ブランディング施策」と「獲得・ダイレクトセールス施策」に分けて考えることが重要だが、これまで前者はマス広告でインターネット広告は後者の施策として注目されることが多かったが、今後のインターネット広告施策では両方の施策を総合的に見ていくことが必要になってくるだろう。

    本書では、インプレッション、リーチ(CPM、UU数、UB数、MAU/WAU/DAU)、クリック(Click数、CTR、CPC)、コンバージョン(CV、CVR、CPA、CPO)、コスト効率(ROAS、ROI)などの運用型広告における指標の丁寧な説明がある。効率が高いところへ集中的に出しすぎると獲得最大化という目的に合致しないなど、実際の運用者にとっては常識なのかもしれないが、そうではない自分などにとっては知識面からも勉強になる。

    また、マルチチャネルでの広告効果測定の手法として、ニールセンが開発したDAR (Digital Ad Rating)、アトリビューション分析、マーケティングミックスモデリング(MMM)などの最新動向に触れられている。

    ■ インターネット広告業界の構造
    インターネット広告市場は、その成長とデジタル化による変容を機会と捉えて、ベンチャと中心とした多くの新規企業が参入して市場成長をしてきたため、様々なポジションに多数の企業が絡んだ業界構造はかなり混沌としたものになっており一部で「カオスマップ」と呼ばれる状況になっている。本書では、DSP、SSP、アドネットワーク、アドエクスチェンジ、媒体社、広告運用会社、広告主の関係を整理しているが、実態は一つの事業者が複数の機能を提供するケースも多くシンプルな形にはなっていないのが実情であるとのこと。そのため、今後機能面での統合や、それに向けた合従連衡や事業者の整理が進むものと想定される。プライバシー保護の高まりを受けたサードパーティクッキーの利用禁止に向けた動きなどもこういった業界構造の再編を進めることになるのではと思われ、今後とも注意が必要であろう。

    また、運用型広告だからといって自動化・省力化が実現されているとは言い難く、広告会社も労働力や付加価値面で重要な役割を果たす余地が大きいだろうと指摘されているのは、持っておくべき重要な知見であると思われる。

    なお、日本のインターネット広告市場では過去ダンピング競争による広告単価の過剰な下落があり、主要先進国と比較して数分の1程度の単価相場になっているとのこと。今後、グローバルの基準に収斂していくことも想定されるとすると需要側としても供給側としても中長期視点で押さえておくべき状況ではないかと思われる。

    ■ インターネット広告の課題
    インターネット広告市場が急速に成長したことに伴い、いくつかの大きな課題も顕在化してきたというのが現状だと考えられる。本書では、不快な広告経験(アドエクスペリエンス)、不正広告(マルアドバタイジング)、不適切な広告表現(フェイク広告など)、ステルス広告、不適切な掲載先への広告配信によるブランド毀損、広告費の不正取得(アドフラウド)が挙げられる。

    挙げられた課題は広く業界で認識されており、改善に向け業界としての取り組みが進められている。本書をまとめた日本インタラクティブ広告協会(JIAA)もそういった活動を支える団体のひとつである。グローバルにも標準ルールの策定に向けCBA (Coalition for Better Ads)という団体も組織されている。
    ブランド毀損の問題についても、JIAAが「広告掲載先の品質確保に関するガイドライン(ブランドセーフティガイドライン)」を策定したり、不完全ながらもホワイトリストやブラックリストの運用がなされている。また、広告掲載先を限定して取引を行うPMP (Private Market Place)も広まりつつあるという。

    また、もう一方のユーザプライバシー保護の課題についても近年はいろいろな取り組みがなされている。データ管理プラットフォーム(DMP/CDP)の高度化によって発展してきたインターネット広告では欧州でのGDPR制定などを機会として、その不透明性の改善やユーザによる利用許諾の徹底などが行われている。AppleのITPなどサードパーティクッキーの利用を制限しようとする取り組みもその流れだ。


    【所感】
    コロナで外出が抑制された2021年のゴールデンウィーク中に頭の整理のために手に取ったが、インターネット広告の現状について、非常によくまとまってわかりやすい本だった。『DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門』という本を5年ほど前に読んだが、知識が更新された。

    デジタル広告市場は、GoogleやFacebookなどのグローバルプラットフォーム事業者の存在感がますます高まってきており、その成長とともに課題にも注目されている。本書で指摘されたインターネット広告の透明性やプライバシーの問題は、今後もしばらく大きな課題であり続けるだろう。一方で、インターネット上でのマネタイズのひとつの中心となっている広告市場は今後も一部の既存メディアの収益を取り込む形で成長していくだろう。
    こういった観点から内閣主導でまとめられたデジタル競争市場会議がまとめた『デジタル広告市場の競争評価 最終報告(案)』が2021年時点での最新の日本市場の情報としては網羅的なものとなっている。また、同報告書が参照する2月にまとめられた『デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書』も競争市場分析として信頼できる。本書に興味があって手に取った方なら、ざっとでも必ず目を通しておくべきだと思われる。自分も本書と合わせて読むと理解が深めることができたように思う。


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    『DSP/RTBオーディエンスターゲティング入門』(横山隆治、菅原健一、楳田良輝)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4864780013
    『アドテクノロジーの教科書 デジタルマーケティング実践指南』
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4798144606
    『デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書(概要)』(公正取引委員会 2021年2月)
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/kyosokaigi/dai5/sankou2-2.pdf
    『デジタル広告分野の取引実態に関する最終報告書』(公正取引委員会 2021年2月)
    https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/feb/digital/210217_hontai_rev.pdf
    『デジタル広告市場の競争評価 最終報告(案) 概要』(デジタル市場競争会議 2021年4月)
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/kyosokaigi/dai5/siryou2.pdf
    『デジタル広告市場の競争評価 最終報告(案)』(デジタル市場競争会議 2021年4月)
    https://www.kantei.go.jp/jp/singi/digitalmarket/kyosokaigi/dai5/siryou3s.pdf


  • ★内容
    ・web広告黎明期から現在までの歴史
    ・web広告業界と各プレイヤーの存在意義
    ・最新の広告情勢
    ・基本的な広告運用のハウツー

    ★感想
    マーケティング全体からweb広告の細部まで
    俯瞰的な視点で広く書かれている。
    体系的に学べる教科書的な一冊になった。

    自分は、2年ほど業界から離れていたが
    復習として丁度よかった。
    新情報もインプットでき学びが多かった。

    何より、著者の方がweb広告を愛しており、
    この業界で働くの社会的意義を受け取れた。
    そういう意味でもモチベーションも向上した。
    何度か読み直しして復習したい。

    ★オススメの方
    ・これからweb広告業界に参入する方
    ・web広告業界情勢をリスニングしたい方
     ※具体的な広告運用のハウツーは少ない。
     広告運用の打ち手を学びたい方は期待外れになる。




  • インターネットの売上が立つ仕組み、バリュードライバーを理解するのに役立った

  • 2022/8/14
    市場
    マスメディア4媒体(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)、プロモーションメディア、インターネットメディアのそれぞれの広告規模は2021年で2.4、1.6、2.7兆円。
    https://dentsu-ho.com/articles/8090#:~:text=%E4%B8%AD%E3%81%A7%E3%82%82%E4%BE%8B%E5%B9%B4%E5%A5%BD%E8%AA%BF%E3%81%AE%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88,%E5%86%86%E3%82%92%E4%B8%8A%E5%9B%9E%E3%82%8A%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F%E3%80%82
    インターネットメディアはパブリッシャー(newspics)、情報プラットフォーム(yahoo,google)、コミュニケーションプラットフォーム(Facebook,twitter)に分けられる。広告主からみてオウンドメディア、アーンドメディア、ペイドメディアと分類することも可能
    報酬のあり方からは、検索連動型広告、運用型ディスプレイ広告(動画含む)、予約型ディスプレイ広告、アフィリエイトに分けられ規模は2018で5700,5700,1600,1000。予約型はバナーやネイティブ広告など単価の高い広告が多い
    マーケティング戦略
    市場の理解(3C分析)、方針検討(SWOT分析)、セグメンテーション・ターゲティング・ポジニョニング(STP)、具体的なマーケティングプラン策定(4P)、コミュニケーションプラン策定
    広告の目的はブランディング広告と販促広告に分けられる。前者で測るべき指標は到達指標と行動変容指標であり、後者は効果測定指標である。インターネット広告は主にCTR,CVRが測定できるため後者が可視化されていた。ただ前者にも有効であることがわかってきているが、前者はマルチメディアや時間差を想定する必要があり効果測定は難しい
    金融取引のノウハウを活用した運用型広告の誕生によって、適切な戦略をたてれば枠から人へ無駄な配信を抑えることができるようになった。これはコンサルのエイジェンシー参画をもたらし、アドテクの中間コストが増えカオスマップが必要なほど多様なプレイヤーが存在するようになり、またアドフラウドやアドエクスピリエンス、低品質な媒体や広告の混入といった技術課題も生んだ

  • インターネットビジネス入門者に読んでほしい。これまでの歴史から現場課題までを丁寧に説明する教科書。業界団体著のため、インターネット広告の有用性を啓蒙したい気持ちはよく伝わりましたよ。

  •   

  • メモ。インターネット広告の概要が掴める。マーケティング要素、歴史、技術、課題、リスク、展望。

  • 分かりよい。また問題提起もありよい。

  • _sanが書いた様子

  • 2019.11.03 インターネット広告の業界は、成長が成長と言われているが、その陰でいろんな問題を抱えている実態もよくわかる。急激に成長したしわ寄せが来ている気もする。

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