マーケティングの新しい基本 顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296000517

作品紹介・あらすじ

「つながっている価値」のない企業は、顧客の日常から消えていく――。
デジタル革命によって「顧客とつながる」ことが前提になり、マーケティングの基礎そのものが変わろうとしている時代の「New Basic of Marketing」を理論と事例の両面から解説。新しいフレームワークとして「カスタマー・バリュー・ピラミッド」「エンゲージメント4P」などを提唱する。さらに、その視点から、注目すべきビジネスモデルを持つ企業の事例を分析していく。D2C、OMO、DXなどを推進する上での大原則がここにある。

4P×デジタル革命
本書はデジタル革命を前提として、それがもたらすマーケティング変化に目を向ける。顧客の「暮らしのデジタルシフト」が加速したいま、チャネルやプロモーションのデジタル化という次元を超え、マーケティング思考の根本がデジタルを前提としたものに置き換わりつつある。
本書ではマーケティング思考の基本とも言える4P(プロダクト、プライス、プロモーション、プレイス)を再考し進化させ、デジタル時代における「マーケティングの新しい基本」として提示する。さらにこれを用いて、ペロトン、ルルレモン、YAMAP、スナックミー、トライアル、ニトリ、カインズ、ナイキ、ウォルマート、アマゾンフレッシュ、ウォルグリーン、盒馬鮮生(ヘマーセンシェン)などの国内外の企業事例を具体的に観察し、彼らの「デジタルを前提とした戦い方」を解釈していく。
マッカーシーが提唱した4Pなんて古すぎる、使えないと思われるかもしれない。しかし本書はあえてこの誰もが知る思考法を使うことで、デジタル革命において起きている思考進化を描出する。そしてこの思考法を軸として、革命の真っ只中にいるマーケティング現場が取り組むべき問いを考えていくこととしたい。(プロローグより)

感想・レビュー・書評

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  • オンラインとオフラインは代替ではない、一体だ、という考え方はもはやごく当たり前だと思うが、それをマーケティングの観点で改めて整理。
    顧客から見て、なぜそのサービスと繋がりたいと思えるのか、という顧客提供価値、すなわちエンゲージメントを、4つのP、product price promotion placeのある意味古典的な枠組みで問い直す。

    具体例を含め切り口はシャープ。一方で、広告代理店系プロフェッショナルの本にありがちなことだが、結局儲かっているのか?についての回答は示されない。
    例えば顧客がそのままファンになってしまうほどの認知度を誇る登山サポートサイトのYAMAP、私もヘビーユーザーだからその使い勝手はわかっているつもり。だが、このサービスは未だ黒字化していない。

    この本をベースにビジネスアイデアを組み上げて、さてキャッシュが回るか、はまた別の話、という割り切りは必要な、でも世の中に全ての回答を詰め込んだ本は存在しないとの前提に立つなら得るところの大きい本。

  • 「ものを売るのではなく価値を売る」と、従来のコンテンツマーケティングをデジタル中心の今時のビジネスモデルを解説しつつ教えてくれる本。
    マーケターが必須で読むべきかというと正直そうでもないと思う。

    今世の中に蔓延っているSaasと言われるサービスは、単純な計算でモノの価格を決めることができない。ものを売る時代では部品の価格と人件費、その他諸々を計算するとおおよその妥当な金額がだせていた。
    だが、今の時代の価値は顧客が決めてそこに支払う妥当な金額も顧客が決める時代だ。モノそのものに原価や人件費が加算されにくい分、体験に対して価値を決める時代になっている。

    ただ物を売るのではなく、体験を売るのを再認識させられた本でした。

  • ▪️エンゲージメント4P
     デジタルを活用した独自の顧客接点(Place)によって顧客とのつながり(Engagement)を築き、それに基づいてパーソナライズした最適な商品サービス(Product)・課金方法(Price)・促進施策(Promotion)を実現する、提案し続ける(CRMプログラム)

    ▪️アマゾンが率先して体現したこのビジネスモデルの要諦を列挙すると、エンゲージメント4Pの左側にあたる次の4点に整理できる。
    ①顧客にとっての「つながる価値」を明確に持っていること(エンゲージメント)
    ②デジタルを前提とした顧客接点を持っていること(プレイス)
    ③個客を認証するデジタルIDとデータ&システムを持っていること(データシステム)
    ④個客に最適かつ直接的な提案を行うCRMを行っていること(CRMプログラム)

    ▪️エンゲージメント4Pを用いた思考法
    Q1.顧客にとって「自社とつながり続ける価値」とは何か
    Q2.それを体験できるどのような顧客接点を持っているか、あるいは持ちたいか
    Q3.どのような商品サービスを提案しているか、あるいは提案したいか
    Q4.どのような課金方法を提案しているか、あるいは提案したいか
    Q5.どのような促進施策を行なっているか、あるいは行いたいか
    Q6.どのような継続的な顧客提案の仕組みを持っているか、あるいは持ちたいか
    Q7.どのような顧客理解の仕組みを持っているか、あるいは持ちたいか


    ▪️「ありがとうYAMAP」を増やしていく商品提案
     築き上げた顧客とのつながりに基づいて顧客行動を理解し、最適な商品サービスを開発し、顧客接点を通して直接的かつタイムリーに提案する。YAMAPのこのモデルの強みが活きたのが、まさにコロナ禍で多くの顧客が外出すらままならない状況に陥った時だった。
     コロナ禍では登山も感染リスクがあるとの認識が広まり、山に行く人は大きく減少した。登山という行動自体が減ることは、それに寄り添うYAMAPにとっては経営危機と言える状況だった。
     しかしYAMAPはそれでも、顧客行動を注視することをやめなかった。その結果「我々が持つ280万ユーザーの位置データから、コロナ禍の極めて初期に『遠くの山まで行き1泊する」のではなく『近くの低山へ日帰りで行く」という行動シフトの兆候を掴むことができた」(小野寺氏)という。
     もちろんこの時点ではその兆候が、どの程度力強いものかは分からなかった。しかし他社に先立ってこの変化を掴んだYAMAPは、「バックパックの売れ筋が、低山日帰り登山に適した小容量タイプに移行するのでは」との予測を立てた。そしてこれに基づいていち早く小型バックパックの商品在庫を確保し、YAMAPストアを通じて顧客に直接提案を行ったのだ。
     結果として、その後に低山登山へのシフトは決定的なものになり、商品在庫を十分に持っていたYAMAPでは、小型バックパックの販売数が目標対比で5倍に跳ね上がることになった。
     この成果をもたらしたのは、商品の売れ行きが低迷したコロナ禍に、闇雲に顧客にプロモーション・メールを送ったり、セールス・コールを何度も掛けたりした一部の通販他社とは本質的に異なる顧客データへの姿勢だ。YAMAPは顧客データを、顧客を追い回すために使うのではなく、「いま何が求められているか」を理解し提案を最適化するために活用している。顧客理解があるからこそ、YAMAPは顧客にとって価値ある提案を繰り出せるという循環を作り上げているのだ。
     この顧客データに基づく提案姿勢は、EC商品だけでなくYAMAPのオリジナル商品でも活かされている。「YAMAP登山保険」もその1つだ。
     YAMAPアプリでは事前に地図のダウンロードが必要でユーザーはその地図を持って山に登るため、「地図をダウンロードする=山に登る日が近い」という予測が立つ。そこで地図をダウンロードしたタイミングに絞って、登山保険のポップアップを出すように設定している。山に行く必要がない時にむやみに保険の案内をされると迷惑だが、登山を予定しているタイミングでのリマインドはむしろ顧客にとって価値のあることであり、「ありがとうYAMAP、という声」(小野寺氏)につながっている。
     さらにYAMAP登山保険では、加入日数は1日単位から選ぶことができるが、低山登山へのシフトもあり1日だけの加入者が増える傾向が顧客データにも表れていた。しかし遭難事故では家族から捜索願が出されるのはたいてい夜で、警察が動き始めるのは翌朝というケースが多い。そこで、保険料シミュレーション画面に「警察への連絡が翌日以降になる場合を想定して+1日を推奨しています」と記載した。
     この文言を添えることで、顧客は遭難して発見されるまでのことをイメージできるようになり、自分の安心のために申し込んでおこうと気づく。さらには、多めの食料を備えるなど、登山者自身による対策への意識を高めるきっかけにもなる。実際にこの表記を入れる前後で比較すると、加入日数に大きな変化が見られた。
     一方でYAMAPにとっては、これは売上の増加につながる。加入日数を1日ではなく2日間で申し込むケースが増えれば、わずか50円の差でも販売単価は20%アップする。顧客と直接的なつながりを持っているからこそ、「契約者を20%増やすのは大変だが、顧客への提案を通して販売単価を20%アップさせるのは十分可能」(小野寺氏)と言えるのだ。
     YAMAPのオリジナル商品としては、他にも登山ウエアなどがある。YAMAP自身は、製造に関わる設備や人材を自社で抱えているわけではない。しかしYAMAPは280万人の顧客がどのようなものを使い、求め、評価するかを知っている。既に久留米かすりといった伝統工芸を使ったオリジナルウエアなどの商品を作り、サイト上での販売を始めている。YAMAPが持つ顧客理解を背景として他社とのアライアンスを活用すれば、さらに柔軟な顧客基点でのものづくりが実現できる可能性は大いにあるだろう。
     企業の売上とはあくまでも顧客への提案の総和であり、顧客を追い回す効率性によって決まるものではない。そのことを真に理解し実践できているかが、顧客と直接つながる時代における企業のマーケティング行動の差として如実に顕れるようになっている。YAMAPの顧客基点に立った顧客行動データの活用法こそ、まさにデジタル時代のマーケティングが目指すべき姿を示していると言える。


    ▪️目指すは「考えない買い物」
     トライアルの基本的な顧客価値は明確で、店内で「なんでも揃うトライアルー!」と連呼されているキャッチフレーズの通りだ。あえて自社ブライベートブランドなどよりも、ナショナルブランドを取り扱うことによって、幅広い商品カバー率を確保している。目的買いのための来店ではなく、「トライアルにいくこと自体を目的化」してもらうことを重視しているからだ。すべての日用品を買い回れるように、幅広い品ぞろえと低価格の両立を揺るがない価値においている。
     店頭で日用品を買い回る顧客にとっての最大の苦痛とは、レジ待ちの時間である。トライアルがスマートショッピングカートを導入したのは、「顧客に快適な買い物体験を提供するため」であって、顧客データを取るためではない。このことを西川氏も「アイランドシティ店が何よりも目指したのは、レジ待ちなく買物ができる、顧客にとっての快適さ」であると語っている。


    ▪️デジタル時代におけるビジネスモデルがもたらす競争の要諦
     1つ目は、「顧客価値による競合」だ。顧客価値が同じで顧客とのつながりを奪い合っていれば、もはや商品や業態区分での業界が違えど競合になる。共に「Empowering People」を掲げているルルレモンとペロトンも商品区分だけを見れば異業種だが、顧客価値の実現を追求した結果、明らかな競合になっている。デジタルで顧客とつながれる時代とは、顧客価値に基づきデジタルでの顧客とのつながりを奪い合う競争の時代であるということだ。
     2つ目は、「1st Party Dataの質による競争」だ。ここまで見てきたすべての企業が、顧客と直接向き合い、その「行動」を自社IDによって把握している。デジタルを前提としたビジネスモデルにおいては、どのくらいの顧客を有しているかという顧客基盤と、この顧客基盤から顧客行動を可視化するIDが不可欠になる。より数多く、より質高く保有していることが資産となる。これがこれからの競争優位をもたらすだけでなく、他社とのアライアンス基盤にもなる。逆に言えば顧客とのつながりが薄く単なる顧客の購買データしか把握できていない企業は、顧客から選ばれ続ける競争力は弱くなり、他社から見れば組むべき相手として価値を認められなくなるだろう。
     そして3つ目は、「顧客接点の奪い合いの激化」だ。ルルレモンのミラー、ペロトンのスマートバイク、ウォルグリーンのアプリは、顧客が商品サービスを購入した後の使用時間にも自社がつながりを築くための顧客接点である。使用時間に配置した顧客接点からこそ、「顧客行動」の把握が可能になる。そしてそれが強固な顧客とのつながりを生み出す場になる。1st Party Dataの質がこれからの競争力の源泉だとしたら、顧客の使用時間とつながる顧客接点はその源泉を手に入れるための入り口だ。トライアルのスマートショッピングカートのように自社で開発するか、あるいはルルレモンのように他社から手に入れるのか。いずれにせよ顧客とつながる顧客接点を持っていることは、これからの競争における前提条件となるだろう。


    ▪️さらなる情報を預けてもらうためには、『信頼』が最も重要」
     さらにホワイトサイド氏はコロナ後の予測として、「顧客の『サービス需要”が高まる」ことを述べた。そしてデータは顧客を追いかけるためではなく、「その顧客からのサービスへの要望に応えるためにある」という考え方も明確にしている。
     例えば急激に需要が高まっているピックアップやデリバリーのサービスは顧客を認識するデータがあるからこそ実現できるし、データへの信頼があるからこそ顧客は見知らぬ店員が自分のニーズを理解し頼んだものを用意したり届けたりしてくれることを信じている。だからこそ、「さらなる情報を預けてもらうためには、『信頼』が最も重要」(ホワイトサイド氏)になるのだ。ホワイトサイド氏は、「どんなにデータマイニングや活用に優れていても、顧客にとってそれが快適なサービスにつながることでなければ何の意味もない」と述べている。
     顧客からのデータと信頼があれば、より最適な顧客提案を行うことも可能になる。それこそが、ウォルマートの成長につながる。つまり今後の戦略意図とは、「顧客からの信頼とデータを基盤とし、顧客への提案とパーソナライズ・サービスで勝負する」ことである。それ自体は企業のデジタル対応でよく聞くコメントだが、それをリテールのリーダーであるウォルマートが語っていることに大きな意味がある。彼らは本気で、「その世界をつくろう」とするからだ。


    ▪️9つの問い
     システムとは単なる要素の羅列ではなく、それらが相互に関係してはじめて機能するもので ある。デジタル事業システムの図は、各要素が意味するところを把握すると同時に、自社がそれらを備え、各要素の整合が取れているかのチェックリストとしても使っていただきたい。この観点から、システム図が示す各要素への「問い」を立ててみてほしい。以下の9つの問いだ。

    問い1 デジタル社会における自社の「事業目的」とは何か
    問い2 デジタル社会における自社の「事業目標」とは何か
    問い3 その事業目標を達成するためにどのような「顧客戦略」が必要か
    問い4 その顧客が自社とつながり続けたいと思う「顧客価値」は何か
    問い5 その顧客価値を実現するためにどのような「顧客接点」が必要か
    問い6 その顧客接点を通して、どのような「顧客提案」が必要か
    問い7 その顧客提案を行うためにどのような「顧客理解」の仕組みが必要か
    問い8 これらの「事業成果」を、どのような指標で測るか
    問い9 これらを実現し運用するためにはどのようなふうな「事業組織」が必要か


     またNRF2021においては、マイクロソフトが「米国の生活者がどのようなブランドの商品サービスを選択するか」についての調査結果を発表していた。これによると、8割を超える消費者が「信頼するブランドからのみ検討する」と答えたという。また、消費者の約6割は「ブランドに対する信頼がなくなったため購買をやめた」という経験を語り、うち約7割は「2度とそのブランドを購入しない」と答えたという。加えて欧米のミレニアル世代とZ世代の6割が「商品サービスそのものよりもブランドが果たす『社会的問題の解決”で購買を判断する」と答えたとしている。
     つまり生活者はその企業が社会に果たす役割を見定め、それらを含めて「この企業とつながっている価値があるか」を判断するようになっているということだ。企業が実現する社会的価値への関心の高まりと共に、デジタル社会によって企業活動の透明性が高まったことが背景にある。
     この発表においてマイクロソフトは、企業が真の信頼を得るために行うべきマーケティング活動を「Marketing with Purpose」と表現し、5つの重要なポイントがあるとしている。
     まず第1のポイントは"People want the truth and transparency:「人々は真実と透明性を求めている」。
     いつの時代も企業は顧客に誠実でなければいけないことは当然だが、特にパンデミックの世の中で人々は分断の世界へと叩き込まれ、今まで心の奥に抱えていた不安と不信を顕在化させている。ペロトンが支持されたのは、その事業の原点に「分断されたコミュニティの再生」を掲げ、これに向き合ってきたことと無縁ではない。顧客が抱える不安に企業が向き合い、自社の問題点も含めて包み隠すことなく顧客に提示し、顧客とつながることによって解決していく姿勢を示さねばならない。
     第2のポイントはPeople want equitable experiences, not just compliance、「人々は、企業に対して平等な体験提供を求めており、それは最低限のコンプライアンス重視を意味するものではない」。
     このメッセージは多分に米国の現状を示しているともいえるが、日本企業に対しても示唆するものは大きい。分断が進み、Black Lives Matter運動が起こった2021年。そして、オリンピック以上に人類の可能性を我々に提示してくれたパラリンピック。企業においても他者を差別したり排除したりするのではなく、多様性を認める社会とそのシステムを実現する姿勢が求められている。誰かが決めたルールを守ってさえいれば、顧客がその企業を信用するという時代は終わった。事業目的を掲げることは、その企業が実現する人間の幸せを定義することにほかならない。その価値を掲げ、社会をリードする企業にならなければ、顧客から信頼され、支援され、つながり続けたいと思われる存在にはなれない。
     第3のポイントは"People want brands that take a stand, not just play it safe”、「人々は態度を示すブランドを求めているのであって、ミスを恐れた安全運行に務めるブランドを求めてはいない」。
     これは第2のポイントとつながるところが多いが、顧客への体験提供のために、企業が社会に対する自らの態度を明確に示すことが求められるということである。コロナ禍でデジタル化の推進どころか、たびかさなる緊急事態宣言に右往左往した企業も多かっただろう。しかしそれは顧客にとっても同じで、暮らしは混乱し多くの新しい課題が発生した時期でもあった。このような不明瞭な時にこそ、顧客の現状を理解してそれを解決しようという態度を示すことが求められる。パート1で紹介したカインズが行ったマスクなどの抽選販売は、その良い事例だろう。一歩先を行く企業は常に変化への態度を示し、新しい顧客体験と顧客とつながり続けたいという意志を明らかにする。顧客と向き合い、語り合う。時に辛辣なコメントもあるだろうが、それを拝聴することこそが、企業が示す事業目的を明らかにし、そのための行動を方向づける源泉になる。
     第4のポイントは“People want positive-impact products、「人々は、社会や人生に影響を与える(貢献)する商品を求めている」。
    ここまで述べてきたように、デジタル社会においては、顧客はつながり続け、自身の課題解決をもたらす価値のある企業と関係性を結ぶ。社会課題は、顧客にとっての課題である。
     Good for Life' Social Goodといった顧客にとっての成功(カスタマーサクセス)を共に目指す企業こそが、顧客から選択される。例えばYAMAPは地図を提供するだけでなく、「みまもり機能」を提供して安全安心な登山の実現を支えている。また、独自のロイヤルティ・フログラムによって、顧客と共に山の保全に寄与することも可能にした。これらはまさに顧客が望む社会や人生に良い影響をもたらすものだ。企業の事業目的は、良き企業行動を生み出す起点として位置付けられている必要がある。
     第5のポイントはPeople want inclusion, not just to be included」、「人々は共創を求めているのであって、囲い込まれたいのではない」。

  • 普通

  • マイクロソフトCEOの『2年で起きる変化が2ヶ月で起きた。』発言を受け、コロナ禍で変わった顧客、環境の中で進めるマーケティング戦略が提示されている。
    4Pを拡張したフレームワークと合致する事例は、サンプルが少ないながらも、説得力を持つ。参考にしよう。

  • 巷で騒がれているDX事例や企業を、「繋がっている価値」という点で、まとめあげていて、理解しやすく、自ら事業戦略を考える際にも役立つフレームワークだと感じた。
    知らない企業事例もあり、新鮮だった。

  • コロナ禍以降のデジタルマーケティングが事例とともに記載されている。
    CRM担当者も参考になる内容。

  • マーケティングにおけるデジタル活用の再定義を行うにあたり役に立った。
    今までデジタルをとりあえず使う、例えば小売にECを使えばデジタルしたっしょみたいな感覚だったがそれは本質ではないと気づいた。

    本質はデジタルを用いることでお客様をより理解し、その上でどう繋がりを作り信頼度を上げていくのかが必要であって、デジタルはいわゆるHOWの一つでしかない。

    この本は近年それを理解し、うまく活用されている事例が記載されておりイメージがつきやすい点が非常によかった。

  • ■マーケティングの4Pを書き直す
    マーケティングの分野には4Pという有名なフレームワークがある。

    これはジェローム・マッカーシーが1960年に書籍『ベーシック・マーケティング』で提唱した概念で、具体的にはProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)のことを指す。

    俺も仕事で競合調査や外部環境分析をする際には、3C分析やPEST分析などとともに、チャネル整理のツールとして4Pを使うことがある。

    しかし、時代の変化とともにこの従来の理論は使い物にならなくなってきたのではないか?と思うこともある。

    本書ではこうした懸念に対し、マーケティングの基本は依然として重要であると述べる。

    その上で従来のフレームワークをさらに進化させる必要があるとし、「エンゲージメント4P」「カスタマー・バリュー・ピラミッド」などの新たな考え方を提唱する。

    ■デジタルでの顧客接点を前提としたビジネスモデル
    加えて、デジタル革命真っ只中の現代におけるマーケティングの変化を考察し、D2C、OMO、DXなどを推進する上での大原則を探っていく。

    コロナ禍で加速した生活のデジタルシフトは誰もが痛感するところであり、デジタル化に乗り遅れまいと多くの企業が生き残りをかけて戦っている。

    そうした熾烈な競争の中で、顧客に持続的に価値を与え、顧客から求められ続けているビジネスにはどんな共通点があるだろうか。

    本書ではペロトン、ルルレモン、YAMAP、スナックミー、トライアル、ニトリ、カインズ、ナイキ、ウォルマート、アマゾンフレッシュ、ウォルグリーン、盒馬鮮生(ヘマーセンシェン)などの国内外の企業事例を考察し、顧客体験価値を提供しているビジネスモデルの共通項を見出す。

    そして、デジタル化を前提とした新たなマーケティング理論の構築を展開していく。

    「うちのビジネスは人と人との対面が大事だから」と自社のビジネスモデルを見直すことをしない旧態依然な企業は数多い。

    もちろん業界によっては対面でのコミュニケーションが重要となるケースはまだまだあるが、今後は顧客とのつながりを維持していくためにはそれだけでは不十分となってくるだろう。

    顧客にとって価値のある製品・サービスを提供するだけでなく、インタラクティブにつながり続け、高い体験価値を提供できる企業が求められる。

    それを実現するためには、個客を認証するデジタルIDとデータ&システムを持つこと、個客に最適かつ直接的な提案を行うCRMを構築することが重要となる。

    つまり、そもそもがデジタルでの顧客接点を前提としたビジネスモデルを構築する必要があるのだ。

    本書では以下のように述べられる。
    「顧客から見てデジタルでつながっていることの価値を感じられない企業は、顧客の生活から排除されるということだ。単にデジタル顧客接点を持っているだけでは、もはや駄目なのだ。顧客に向き合う企業姿勢を持ち、常時の顧客提案を行っていくことを可能にするビジネスモデルを築き、顧客とのつながりを強めなければ、顧客から選ばれ続けることは難しいということだ。」

    ■おわりに
    マーケティング関連の新刊は大体目を通しているが、基本概念の焼き直しや、抽象的な理論だけの教科書的な内容のものが多い。

    本書はその中でも事例研究と新たな理論構築、実践的な方法論までが展開されているので、あらゆる事業に関わる実務家やビジネスパーソンにおすすめできる。

  • デジタルでの顧客接点を持っているだけでは消えてゆく。繋がっている価値をコンスタントに発信していく必要がある。→繋がりを継続していくこと

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著者プロフィール

株式会社顧客時間共同CEO取締役。オイシックス・ラ・大地株式会社専門役員COCO(Chief Omni-Channel Officer)。株式会社イー・ロジット社外取締役。株式会社Engagement Commerce Lab.代表取締役。1997年良品計画入社。衣服雑貨のカテゴリーマネージャーとして定番商品の「足なり直角靴下」の開発し、WEB事業部長として「MUJI passport」のプロデュースなどを担当。2015年10月オイシックス株式会社(当時)入社。2018年9月株式会社顧客時間を設立。共同CEO取締役に就任。Head of Marketingとして、顧客時間に参画する多様なスペシャリストと共に、数多くの業界・企業におけるDXプロジェクト・事業開発プロジェクトのサポートを行っている。2021年3月一橋大学大学院経営管理科博士後期課程単位取得満期退学。著書に『世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略』(共著、日経BP)、『オムニチャネルと顧客戦略の現在』(共著、千倉書房)がある。

「2022年 『マーケティングの新しい基本 顧客とつながる時代の4P×エンゲージメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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