ひとりの妄想で未来は変わる VISION DRIVEN INNOVATION

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296103843

作品紹介・あらすじ

■ベストセラー『直感と論理をつなぐ思考法 VISION DRIVEN』著者の最新作

■地図なき時代を仲間と切り拓くイノベーション実践36の智慧

■イノベーターは出世コースではなく、組織の辺境にいる!

「いままでのやり方を踏襲していても、未来はないような気がする。経営層や上司は答えをもっていないまま変革やイノベーションの号令を出しているが、実際に現場で行っている施策は小手先の変化としか思えない。本当は、根本的に新たなモデルをつくらないといけないのではないか」

いま、日本の企業においても社会においても、旧来のインフラやシステムの限界が露呈し、イノベーションが求められている。だが、そのイノベーション活動のなかには、ゾンビのような生きていない活動も多い。世の中を変える取り組みは、妄想をもったひとりの人が仲間を集め、新たな文化をつくる場と、そこで生まれてきた意志によって創造を繰り返していく創造の生態系をつくることで持続可能になる。つまり、人、場、意志、創造という“創造のエッセンス”が不可欠だ。

また、イノベーション活動は破壊的創造だけではなく、新たなモデルを既存の組織や仕組みに接木(つぎき)していくことが必要になってくる。ここで壁になるのが、既存の仕組みを回す管理と、新規の仕組みをつくる創造のOSの違いだ。既存の組織の本質は「生産性の最大化を目指す」ものであるのに対し、これから求められる組織とは、「知識創造の最大化を目指す」ものである。

この違いを理解し、ふたつの世界の橋渡しをする“革新の智慧”をイノベーション活動のなかに埋め込むことが重要になる。一人ひとりが発信したビジョンがやがてヒト・モノ・カネ・智慧を呼び込み、生態系のような環境から新しいアイデアが次々と生まれる──そんな「創造する組織」の経営モデルへ、どのように変わっていけばいいのだろうか。

イノベーターの旅は、最初はひとりの妄想から始まり、新たな事業や会社のモデルをつくり、最終的には新たなモデルを社会実装するための経営モデルに進化させていくことになる。著者は共創型戦略デザインファーム「BIOTOPE」を創業し、さまざまな分野のイノベーション活動を支援してきた。その経験から得た、ひとりの妄想から始めて未来を変えていく“VISION DRIVEN INNOVATION”についての現場での実践知を、「36の智慧」としてまとめたのが本書だ。


【推薦の言葉】

「この本は、日本的な組織でビジョンを
 アクションにつなげるための現場の実践知だ。」
──野中郁次郎氏 一橋大学名誉教授

「いま日本中の大企業で変革を本当に起こしている
 張本人による、これは最高のイノベーションの手引書だ!」
──入山章栄氏 早稲田大学ビジネススクール教授

感想・レビュー・書評

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  • 「直感と論理をつなぐ思考法」に続き、
    佐宗さんは骨太な本をブッ込んでできます。
    自分がちゃんと理解できているのかどうかちょっと怪しいですが、
    組織にイノベーションを起こす方法論について書いた本。

    ※直感と論理をつなぐ思考法
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4478102856#comment

    イノベーションを起こすためには、最終的には、
    「自分のデザインファームに仕事を依頼してね」ということなのかもしれませんが、、、
    それでも自社の(自分の)ノウハウを出来るだけ具体的に公開してくれている。

    (特に)大企業にいる人にとっては、
    「それでも、そう簡単には…」という身も蓋もない内容かもしれないが、
    逆言うとドラスティックに変革を起こしていかないと、
    もう待ったなしの状態なのかもしれない。
    自社に(自分に)適応できるかどうかは別にして、
    もうこういう考え方が自然にできるような体制・リソースを
    どんな組織も構築していかないといけないのかもしれない、という意味において、
    未来的な書籍とも言えそうだ。

  • 「ひとりの妄想」を出発点としながらも、未来を変化させていくためには周囲を巻き込み、動かしていくことが必要であるとわかる。

    基本的にはデザイン思考を肯定的に捉えつつ、適していない局面についても触れられている。

    比較的大きい企業において、いかにイノベーションの種を撒き枯らさずに育てるか詳細に解説されている。そのため、スタートアップにいるような人材にはピンとこない部分があるかもしれない。

    クックパッドのような比較的新しい企業であっても現状維持の慣性が働き、イノベーションへと向かうには相応のエネルギーが要るということがケーススタディよりわかる。
    ただ「妄想から始めよう」というドリーミングな本ではなく、その妄想を形にするために泥をかぶる覚悟を後押しする現場感にあふれた一冊。

  • 【案創無物】
    本書はすばらしい!
    わたしがモヤモヤと感じていたことが、ことごとく言語化されています。

    ― モノの生産 ―
    製品(モノ)を中心に考えれば、いかに効率よく、ムダを省き作り出すかが課題になります。
    トップ(指揮者)以外はトップに従う歯車という状態が最もムダがなく効率的です。あとは指示通りに動いているか管理することが正解になります。そのため、ピラミッド型でトップダウン方式が理にかなっています。
    ただ、人は人であり機械の部品なんかではないという感情があります。ピラミッド型組織は人に単なる歯車であることを意識させないために、役職やボーナスという金銭的報酬で「人」である感情を与えています。モノ中心の考えであれば、必要のないムダなことになるかもしれませんが、人を歯車として動かすための潤滑剤となっています。しかし、あまりにもたくさん感情を与えてしまうと、モノ中心のシステムでなくなり、人が中心で個々人の感情にまかせて動く非効率的なシステムになってしまいます。

    本来であれば、奴隷のような完全に感情を排除できる歯車がベストですが、今の世の中、公に奴隷制度を掲げることはできません。AIが人のようにある程度融通の利く高性能な歯車になれば、わざわざ感情を持ち合わせた厄介な「人」を使う必要はなくなります。現状、AIがそこまでに至っていないので、安くてそこそこ融通の利く「人」を歯車として使っているだけです。

    ムダを省き効率的にシステムを動かすためには改善も重要です。PDCAを回し、どんどんムダを省いていくことが必要になります。モノが中心のシステムであればこれは大きな武器になりますが、新しい発想は生まれてきません。

    ― 変動費ゼロ ―
    デジタルが発生した時点で、モノを作ることに力点を置く必要はなくなりました。正確に複製することにコストがかからなくなったのです。いままで、ムダなく効率的に複製を作ることに一生懸命になってきましたが、ムダなく効率的に、しかも一瞬にしてモノが作れるようになったのです。(すべてのモノがこうではありませんが。。。)
    このようになるとモノ作りが主目的であった組織は意味がなくなります。複製品を作ることにコストと時間がかからないため、重要な項目でなくなり、初品を生み出すことが重要な項目になってきます。これは以前から言われている「0→1」思考です。初品を生み出す組織(システム)にピラミッド型は当てはまらないのです。
    「モノを作る組織」→「創造する組織」への変化です。

    ― 組織概念の変化 ―
    長い間、モノが中心の世界が続いたため、組織とはピラミッド型だとほとんどの人が認識しています。また、組織そのものの研究も進んで組織論もできあがっており、われわれは長い間そう洗脳されてきています。上の指示により動くものだと思い込んでいます。
    しかし、現在「その組織」というものが変化してきています。世の中にモノが溢れかえり必要以上にモノが存在し、大量にごみとして排出されています。
    これ以上モノ(複製品)を作り出す必要性はなくなっています。いかに効率よく大量に生産するための組織は不要となってきているのです。

    「その組織」の中で育ってきた人は上の指示で動こうとします。「だって、上の指示で動くこと、それが組織だろ?そうでないと組織が成り立たない」と思い込んでいますが、「その組織」が変わってきているのです。ブロックチェーンのような形が組織として成り立ってきているのです。ヒエラルキーが無くなってきています。

    ― ヒットの短命化 ―
    現在は何が成功するか先が読めない世の中です。とりあえずやってみたら、何かよくわからないけどうまくいったという世界です。トップだけでなく世の中のだれも、未来に何がヒットするかはわからないのです。
    今は時代の変化が速く、昔のように生涯で一つヒットさせれば一生涯食べていける時代ではないです。一つのヒットの賞味期限が短いのです。たとえヒットを生んだとしても、そのヒットを生んだトップが一人で次から次へとヒットを連発することは不可能です。

    物が溢れ、ヒットするものが読めない、この状況でトップダウンによりトップの指示に従うことは何も考えずトップと心中するのと同じです。

    今は世の中に何かを発信するためのハードルがない状況です。
    雑談からノリでやってみたらうまくいった。そんな時代です。

    アイデアを生み出すには結局一人で考えるしかないです。人の意見を参考にするのもよいですが、自分一人で考えることが重要です。人の意見だけを集めただけでは、最大公約数を生み出しているに過ぎず、過去の枠から外に出ることはできません。
    壁の外に出るためには自分で考えるしかないのです。

    ― 稲妻が走り雷鳴轟くとき ―
    この変化はいいことで、自分一人で考えたことが世の中でヒットするかもしれないのです。
    こんなにすばらしいことはないです!

  • 文句なし僕にとっては★5つの本です。 20年近くのビジネス人生において尊敬するに至った野中先生と入山先生が帯を書いている本なので当然期待を高く読み始めるわけでありますが、やっぱり読んでよかったと思えた本で、多くの方に読んでもらいたいなぁと思う本です。

    『△から〇へ変わる組織の形』として表現されている内容や、本書の前半の見開きで『創造と変革の36の智慧』として整理されている体系がそもそも素晴らしいのも事実であるが、そのアプローチを入山先生の帯の言葉を借りれば「いま日本中の大企業で変革を本当に起こしている張本人による、これは最高のイノベーションの手引書だ!」という、事実としてやってきた事例が満載なので、すごく手触り感がある。

    自分の立場や感想や見解などというものを述べるより、今回も抜粋多めにしたほうがいいと思うので、多めで行きたいと思います。 さすがに図までは引用してなくてすみませんが、下記、ご確認ください。(都合により自分の所属するカイシャが関わった部分は長めです)

    ==========
    P28 △から〇へ変わる組織のかたち
    一方、創造する組織は、グーグルをはじめとしたIT企業のような分散型の組織モデルだ。クリエイティブな活動は、長期的に新たなアイデアや事業などを通じて、新たな価値を生み出し続けることを目的とする。生産のための設備は人であり、人の内発的エネルギーによって駆動するため、突如としてすごいアウトプットが現れることもあれば、気分が乗らないとアウトプットがゼロのこともある。(中略)野心的なビジョンや、腹に落ちたミッションなどの意思の向かう方向性が明確になったとき、よくいえば自律的、悪く言えばバラバラのベクトルが一気にまとまっていく。アイデアとアイデアの偶然の出会いにより突然変異を生む創造が、その営みの中心だ。

    P103
    BIOTOPEでは、NTTコミュニケーションズでボトムアップ型の会社の理念浸透活動を支援する機会があったが、大きな組織にミッション/ビジョンを広めていくためにまず重要なのは、一気に全体を変えようとせず、共感度の高いコアな社員から自分事化を進めていくことだ。巨象はいきなり動かない。役職・部門を超えて、共感度・活性度の高い人たちによるコミュニティを形成し、彼らの周りから変革の日が広がっていく仕掛けをつくるほうが有効だ。
     たとえば、策定プロセスにおいても経営幹部だけでなっく、会社の部署をカバーできるように広く呼びかけ、ワークショップやインタビューなどで組織や未来への想いの強い社員を巻き込んでおくのもいい。そのうえで、策定したミッション/ビジョンを個人の想いやビジョン、日々の仕事と結びつけ、自分の言葉で語っていくストーリーテーリングの場を設ける。役職や部門を超えて、共感度・活性度の高い人たちによるコミュニティを形成し、彼らの周りから変革の火が広がっていく仕掛けをつくっていくのだ。
     (中略)言葉に込めた思想や世界観をきちんと伝えたうえで、どうしたら自分の仕事に生かすことができるかを、それぞれの社員にとっての物語として語ってもらうのも効果が高い。(中略)自分事化したストーリーを手に入れた共感者たちは、ミッション/ビジョンの伝道師となり、浸透・伝播のための強力な協力者となってくれる。

    P208
     天の時というのは、自社の変革期だ。言い換えるなら、乱世の時代と呼べるかもしれない。新たな取り組みは、平時においては辺境や道楽で行われることが多い。しかし、事業環境が大きく変化し、自社が存続の危機に見舞われたとき、いままでのルールが180度変わる。その際、既存の仕組みでうまくやっていた人の足が止まり、逆にゼロから道をつくってきた人が縦横無尽に動けるようになる。周囲が止まって見えるようなゲームができる瞬間があるのだ。
     (中略)現場レベルでは、大きな波に巡り合わない平時では、コストを減らして“死なずに待つ”ことをして当面をしのぐことも大切だ。新規の取り組みを続けていると、どこかのタイミングで必ず疲れが出て、当初のエネルギーが沸かなくなってくる。しかしここからが本当の勝負だ。実はそうした新たな活動は、スタート時と比べて時間が経てば経つほどスキルも期待も向上するため、体感的には成果実感が減ってくるものの、着実に成果は出ているものだ。待ちの時間は、外に何かしらの発信をしておき、勝負どころで動いてもらえる社内のネットワークを構築しておく。そして、いざ天の時が来たときに動ける準備を整えておくといいだろう。

    P236
     「この変革プロジェクトで、あなたのチームは、潜っていていい。これから組織が立ち行かなくなったときに生き残って、新たな方向性を指し示す集団が必要なんだ。」イノベーション活動は、短期的な成果として見るだけではなく、長い目で見てバランスをとるという視点が大切だ。変革チームは、常に必要とされるわけではない。ただ、新しい次世代のモデルを実践していた人は、突然、否応なしにリーダーになることがある。
     団塊の世代が退場し、社会の世代交代が起こったとき、これまで述べたあらゆる問題は深刻化し、大きな変革が迫られる時がくる。天の時が訪れるまでの猶予の時間は、おそらくあと5年だろう。いままでアウトローでしかなかったイノベーターたちは、世代や環境の持続可能性という既存のシステムでは解決のしようのない大義をもつことで、一気に次代の主流をつくるリーダーになる可能性を秘めていると思う。僕らは、そこまでに十分な準備をしておかなければならない。
    ==========

  •  本書は両利きの経営、既存事業の発展、新規事業の創出を行う際の処方箋を述べたものである。グラレコ等ビジュアル化の必要性について端的に示している。(本書はスルメ的なところがあり噛めば噛むほど味わい深いということも付け加えておく)
     クライエントである経営陣、新規事業担う人材の両者の立場をよく理解している。コンサルタントとしての視座が垣間見える。
     0→1と1→100の局面の違いは全く異なる。前者は生物の進化や生き残り。後者は過去や他者の成功体験の良い部分を抽出し自己改善しつづけること。モードが全く異なる。
     本書は主に前者、つまり新規事業を如何に会社経営に取り込んでいくかの内容になっている。前者と後者の相性の悪さはあるものの2つに共通しているものもある。それはコミュニケーションである。
     もともと、言葉というのは自分と他人を”分ける”ために発達してきたコミュニケーション手段であり、論理脳は言葉で考えれば考えるほど他人との相違に焦点を絞っていく性質がある。(中略)まずは体感やビジュアルなどの非言語で、多様な考えのなかから共通点を見つけ、その輪郭を描き出していく。その後、一人ひとりが物語に翻訳していくと、それぞれが考えた物語の背後にある共通の価値観やイメージが見えてくる。(「創造の智慧10 過去―現在―未来をつないだ新たな文脈をつくる」より一部抜粋)
     以前も読んで書評を書いていたようだ。今回読み直したが全く新しい本として新鮮な気持ちで読めた。成長(もしかして退化)しているということなのだろうか。

  • 日本社会でこれまで伝統的に行われていたいわゆるトップダウン・年功序列型のモデルではなく、一人一人が能動的に動くティール・ホラクラシー組織へ移行し、イノベーションを切り開くための智慧を紹介した佐宗邦威さんの著書。イノベーションに必要とされる仲間との出会いや、組織の土壌づくりへのヒントが散りばめられている。「丸紅」「NTTドコモ」「クックパッド」などの巨大会社が組織改革した事例(インタビュー)も紹介されており、非常に学びになった。

  • ヒントというか、モヤモヤしていたものがクリアになった印象。
    頭では理解していたが、勇気を貰ったと感じる。
    他部門含め、巻き込んでいく顔も浮かぶので、実践できるところから少しずつやってみようと思った。

  • 昨年『直感と論理をつなぐ思考法』に衝撃を受け、本作も購入。前著は個人の実践と効果に焦点が当てられていたが、今回はVISION DRIVENやデザイン思考を実践した組織づくりや、組織内でイントレプレナーとなるための考え方やエクササイズ、実践についてが主だった。

    自分が組織をつくる、引っ張るときに改めて読むべき著作と感じたが、いま実践できることは
    ・VISION DRIVENであれ
    ・社外のオープンなコミュニティへの参加
    ・言葉でまとめず、絵やストーリーで思考
    など。
    膨大なインプットの結果、リラックスした状態のときにふとしたひらめきが生じることは経験があるし、まずそのインプットのためにも、仕事に関係のない情報でも横断的にとっていくようにしないとなと思いました。

    いくつか、書き留め。
    ・妄想をうまく引き出すために、必要なスキルは“問う”ことと“表現する”ことである。
    ・「アプリシエイティブ・インクワイアリー」:その人が持つ関心や強み、将来の可能性に焦点を絞った質問をするのが特徴で、一人ひとりがもつ潜在的な想いを、問いかけに即興で答えてもらうことによって表出させる。
    ・イノベーション活動の初期段階では、できるだけ多様な人が混じり合う場を作ることから始めるのが、遠回りに見えて近道だ。
    ・彼ら(↑の場作りを主導するリーダー)が大事にしているのは、"ゆるいノリ”のリーダーシップだ。
    ・世の中の流行りは小さいうねりが海岸に近づくにつれて波になり、くずれていくようなものだということを知った。バズワードになって、経済誌や新聞に載るようなテーマは、サーフィンでいうと波がくずれているような場所で、もはや追っても遅いことが多く、どこで波をとらえるかという戦略が必要になる。
    →捉えておくべき波①:技術の「ハイプ・サイクル」(ごく初期の小さなうねり。業界内の小さなバズ)
    →捉えておくべき波②:「キャズム」超え。これは大波。
    ・多様なビジョンを引き出して統合が難しい理由のひとつは、いきなり言葉で合意形成を図ろうとすることで起こる。もともと、言葉というのは自分と他人を"分ける”ために発達してきたコミュニケーション手段であり、論理脳は言葉で考えれば考えるほど他人との相違尼焦点を絞っていく性質がある。
    →ビジョンや想いはまずは絵やストーリーでまとめよう。
    ・[リベラルアーツ]は"WHY”をつくるうえで強力な武器だ。しかし、注意が必要なのは、リベラルアーツは勉強して満足というかたちで終わってしまうケースがしばしば見られる点だ。自分のビジョンや次の時代観を一度つくってみたうえで、それをヒントに、自分なりの物語を紡いでいくのが実践的だ。
    ・「Emarged Strategy」“戦略は実践のもとに創発される”という考え方。事前に計画するのではなく、実践の智慧を戦略として結晶化させていくべきだという現場主導の戦略立案の考え方
    →イノベーションの現場と相性がいい。
    ・新たな営みを仕込んでいくうええ重要なことは、“天の時”“地の利”“人の和”。まずは、仲間や人脈を増やして人の和をつくる。次に、社会のトレンドや自社の組織を動かして、地の利をつくる。ここまでは、個人の力でコントロールできることだ。しかし、イノベーターにとって本当に重要なのは、天の時だと思う。天の時というのは、自社の変革期だ。

  • 再現可能性を証明してから意思決定を行っていては、新しい取り組みは始まらないと常々考えていて、ときには理念や信念をもとに非論理的な意思決定も必要なのではと考えることもあった。しかし、そもそも極めて論理性の要求される科学の世界では、仮説を立てながら実験で証明していくやり方、「仮説推論型」の思考が是とされている。つまり、変化の激しい時代にでは、なおさら小さな仮説に基づいて、実証とフィードバックを繰り返すやり方が正しいのだろうと感じた。
    未来を構想する際に、直接言葉にするのではなく、各自が未来新聞を書いてビジュアル化することで、メンバーの内側にあるイメージをアウトプットするというアプローチは試してみたいと思った。
    デザイン思考に限らず、多様化した価値観にどう応えるのか、顧客とともに価値を共創するプロセスが必要というのは、考え方の前提になっていくだろうと感じた。
    プロジェクトの中盤では物理的な成果が訪れず、あまり進んでいないと感じられる時期があるという。チーム内で過去のストーリーを振り返り、次のストーリーを紡ぎ出すことで、その変化を定期的にアップデートする。脳科学的にも、過去のマイナスもプラスもまとめて振り返ることで、マイナスな出来事をポジティブなレジリエンス(回復力)を高めることができるらしい。応用してみようと思った。

  • 読みにくい

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著者プロフィール

株式会社BIOTOPE代表/チーフ・ストラテジック・デザイナー/多摩美術大学 特任准教授
東京大学法学部卒業、イリノイ工科大学デザイン研究科修了。P&Gマーケティング部で「ファブリーズ」「レノア」などのヒット商品を担当後、「ジレット」のブランドマネージャーを務める。その後、ソニーに入社。同クリエイティブセンターにて全社の新規事業創出プログラム立ち上げなどに携わる。 ソニー退社後、戦略デザインファーム「BIOTOPE」を起業。BtoC消費財のブランドデザインやハイテクR&Dのコンセプトデザイン、サービスデザインが得意領域。山本山、ぺんてる、NHKエデュケーショナル、クックパッド、NTTドコモ、東急電鉄、日本サッカー協会、ALEなど、バラエティ豊かな企業・組織のイノベーション支援を行うほか、MVV策定・実装プロジェクトについても実績多数。2021年に生活の拠点を軽井沢に移し、東京オフィスとの二拠点を往復する働き方を実践する。教育分野、地域創生分野など活動の幅を広げる。著書に『理念経営2.0 』『直感と論理をつなぐ思考法』ほか。

「2023年 『じぶん時間を生きる TRANSITION』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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