Exit イグジット

著者 :
  • 日経BP
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  • Amazon.co.jp ・本 (436ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296108619

作品紹介・あらすじ

「世界中に火種はあるが、一番ヤバいのは日本だ」!

月刊誌「言論構想」で経済分野を担当することになった元営業マン・池内貴弘は、地方銀行に勤める元・恋人が東京に営業に来ている事情を調べるうち、地方銀行の苦境、さらにこの国が、もはや「ノー・イグジット(出口なし)」とされる未曾有の危機にあることを知る。

金融業界の裏と表を知りつくした金融コンサルタント、古賀遼。バブル崩壊後、不良債権を抱える企業や金融機関の延命に暗躍した男は、今なお、政権の中枢から頼られる存在だった。そして池内の元・恋人もまた、特殊な事情を抱えて古賀の元を訪ねていた。

やがて出会う古賀と池内。日本経済が抱える闇について、池内に明かす古賀。一方で、古賀が伝説のフィクサーだと知った池内は、古賀の取材に動く。そんな中、日銀内の不倫スキャンダルが報道される。その報道はやがて、金融業界はもとより政界をも巻き込んでいく。

テレビ・新聞を見ているだけでは分からない、あまりにも深刻な日本の財政危機。エンタテインメントでありながら、日本の危機がリアルに伝わる、まさに金融業界を取材した著者の本領が存分に発揮された小説。

日経ビジネス連載時から話題となった作品、待望の書籍化。

果たして日本の財政に出口(イグジット)はあるのか!

編集者からのおすすめ:著者の代表作の一つである『不発弾』に登場したダークヒーロー、古賀遼が再び登場。過酷な運命を背負った男の生きざまに、ぜひ、触れてください。

感想・レビュー・書評

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  •  この国には出口戦略がない。
     なにか事を始めたら、終わりがないまま突き進み、いつかくる強制退場というExitにぶち当たるまでは止まらない。

     不発弾に続くシリーズの位置づけの本作で主軸となるのが、営業から経済記者への急遽の転属となった新米記者の池内と、前作不発弾で金融会のフィクサーの古賀。
     地方銀行の銀行員の自殺を端に発し、リフレ派に舵を切った日銀の国債発行の弊害について、池内が古賀に迫っていく。

     高校時代の彼女が訪問し、今は駐車場の土地にマンションを建てないかという営業に来たと、叔母から池内に連絡があった。
     仙台の地銀に務め、今は殆ど連絡をとっていないのに、なぜ吉祥寺の叔母のところへ。
     メガバンクに務める友人に事の顛末を話すと、地銀によるなりふり構わない営業実態を聞くことになる。
     そして彼女の話を断るよう叔母に伝えた数日後、その彼女が自殺した。

     出版業の営業から経済記者に配置換えされて早々、この地銀の営業について取材を続けるうちに、金融史の節目で暗躍するフィクサーの存在にたどり着く。

     小説であるが、背景はすべてこの2,3年に起こったことを元にしている。
     
    「この国には考えることを放棄した人が多すぎる。言い換えれば、馬鹿ばかりです。もはや修正不可能です」

     相場英雄はこういう重厚な経済小説のが読み応えがある。

  • リアルタイムの物語。日本の先行き日々見つめて考えないといけないと思う。

  • ・表紙が常盤橋の交差点から日銀の風景。
     掃除屋と新米記者の二軸で物語が展開。
     時事ネタと合わせた展開に、現実にも裏があるのかもと妄想するのが楽しい。
    ・前作「不発弾」を読んだ後の方が、人物の背景をより理解でき、楽しめる。
    ・「日本にとって、新型ウイルスは意図せざる形で援軍になった」今は日本にとってチャンスタイムかもしれない。

  • 現在の日本経済の危うさを描いた作品。
    そこまで関連性はないが、東芝事件を描いた「不発弾」に登場した金融コンサルタント・古賀が再度登場する。
    2014年の金融緩和の決断の時に不正があったことをうかがわせる場面から始まり、時は「20XX年」に移行する。
    月刊誌の営業マンだった池内は、突然現場の記者へ異動となる。
    時を同じくして、池内の学生時代の元恋人が地方銀行の営業として、都内の池内の実家の所有する土地の取引を持ち掛けていた。
    このシーンは何年か前にあった駿河銀行のシェアハウス問題だと思われる。詐欺として、立件されたのは駿河銀行だったが、実際には他の地方銀行も立ち行かなくなり、同じような実態を抱えていたのか?経済に詳しくない自分でも、地方銀行の苦行が伝わる。
    そんな時に起きた日銀内でのスキャンダル。
    そのスキャンダルは日銀だけでなく、政府も巻き込むことになり、やがて池内と古賀は接触することとなる…
    「不発弾」の時も感じたが、全体を通して、難しい。
    現政権や、実際にあった事件と繋げることは容易だが、そもそものからくりが難しくて、途中で離脱したくなる。
    しかし、後半は新型コロナの問題も関わって来て、さらに身近な金融危機に、何とか最後まで読み通すことが出来たが、結局「ノー・イグジット」のまま。
    物語の中も、現実も出口が見えないまま、コロナが落ち着いた時にいろいろばらまかれた保証金などは、国民にどんな爆弾として落ちて来るのか?
    そんな不安だけが残る内容だった。

  • いつもながらにリアリティがある経済描写。でもリアリティがありすぎて今回はフィクションとして純粋に没入できなかった。善悪つけきれずにグレーというのも現実世界そのものだった。

  • 専門用語が多く読みづらいところもあったけど面白かったです。
    現実にリンクしている何処もありリアリティを感じて不安になりますね。

  • ここ数年の政権の意向、経済の実態のリアルな部分にフィクションを組み合わせた小説。超低金利で商売が行き詰まった地銀、金融緩和を日銀にあの手この手で強制する政権。副総理兼財務大臣から裏の仕事を頼まれるフィクサー古賀と経済をネタにしようとする月刊誌記者池内を中心に物語は進む。

    既に知っていることが少なくなかったので「ガラパゴス」のような衝撃はなかったけれど、日銀や地銀の現実、フィクサーは本当にいるのかも知れないと思わせてくれた。小説としてはまあまあ。

    ただ、副総理は現実の人物に似ていて、もしかしてこの人はこんなに優秀なのかと、(誤解?させてくれた)

  • 紐解き始めると、頁を繰る手が停め悪くなる。「続き?」と気になり、夕刻、深夜、早朝とドンドンと読み進め、素早く読了に至った。同じ作者の作品を何作も読んでいるが、「こういう問題?如何なのか?」という事項を捉え、物語を通じて様々に考える材料を提供してくれる作品が多い。本作もそういう例に洩れない。
    題名の「イグジット」だが、これはアルファベットで「Exit」で、「出口」という意味に他ならない。何が、何処から抜け出る出口ということなのか?その辺りを考えるという物語のように思う。
    本作の主要視点人物は2人だと思う。雑誌記者の池内と、“金融コンサルタント”と称する古賀である。何方かと言えば前者、雑誌記者の池内が物語をリードする感だ。
    大手出版社に勤める池内は30歳代で、書籍の営業の担当から、看板雑誌となっている月刊誌の編集部に異動となる。記者として「経済」を担当するようにという話しになった。が、漠然としている話しで、何を如何しようかと思案していた。
    そんな中、池内は吉祥寺に住む叔母から連絡を受けた。仙台に在った高校時代に交際経過も在る女性が、叔母を訪ねて来たという。東京の大学に進んで卒業後に東京で出版社に勤める池内に対し、その女性、千葉は仙台で進学して仙台の地方銀行に勤めるようになっていた。
    仙台の銀行の営業をしている千葉は、叔母の家に現れた。月極駐車場として利用されている、叔母の家で持っている用地に、ローンを組んでマンションを建てないかと勧めたのだという。叔母の相談を受けた池内は、東京に来ているという千葉に会って話しを聴くのだが、何か納得し悪いモノを感じる。
    やがて池内は、メガバンクに勤めている学生時代の友人に会って叔母の件で意見を求めると、地方の銀行が東京に営業に来て、不動産関連でローンを組むように勧める営業をするのは「少し危ない」という話しを聴かされる。更に、経済のことに明るいという大ベテランのライターに教えを乞えば、地方の銀行が色々な問題を抱えていることを示唆する。
    そうしている間に、仙台の市外局番で始まる全く記憶が無い番号の発信者から電話連絡を受ける。相手は仙台の刑事であった。仙台で千葉が死んだという。池内は驚く。
    池内が大先輩のレクチャーを受けるような場面も交えながら、千葉の一件が契機で始まった、銀行業界の問題等を巡る様々な取材を重ねて行く。行き着く先は何処か?
    また、池内の活動とは別に古賀の動きも在るのだが、池内は取材を通じてこの人物と出遭うこととなる。
    本作は「小説」、言葉を換えると「フィクション」ではある。が、凄くリアルで説得力が在る。著名な人物をモデルとしているということが判り易いような作中人物も在る。当然ながら、何かを真摯に論じる場面での資料になるモノではない。が、個人的にモノを考える材料にはなる。
    概ね2012年以降の「長期政権」というようなモノが在った時期を背景とし、本作の物語そのものは2019年頃から2020年頃の様子という中で展開している。例の“感染症”に関連する混乱という様子も描かれる。
    ハッキリ言えば、多額の資金を動かすのでもないような、巷で多数派を占めているであろう人達―自身も含まれると思う―にとって、金融というようなこと、世の中の資金が動く仕組みというようなことは解り悪い、または然程深く考えていないことかもしれない。が、「本当にそれで構わないのか?」という内容が本書には込められる。
    雑誌記者の友人の事件の件が契機で、何やらキナ臭い状況が世の中で進展しているということが明かされようとする。
    何か凄く夢中になった作品だ。御薦めしたい。

  • 最初の感想は本が分厚い
    そして経済用語が難しかったです
    その所々出る経済用語の所は
    なんとなくで読んでしまいました
    小説と現実がリンクしてそうな感じを得ました

  • 44かなり専門的に債権や株の動きと経済を物語にして読み応えのある作品でした。赤字国債ってよく聞くけど、結局誰が返すの?ということに気がつかない。大国の言いなりの金融政策でいいのかな。疑問を持つことの重要性を再確認しました。

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著者プロフィール

1967年、新潟県生まれ。専門学校卒業後、時事通信社へ。経済部記者を務める。2005年『デフォルト 債務不履行』で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞しデビュー。『震える牛』がベストセラーに。『血の轍』『ガラパゴス(上・下)』『不発弾』『トップリーグ』他、映像化作品多数。主な著書に『ファンクション7』『偽金 フェイクマネー』『復讐の血』『共震』『アンダークラス』『Exit イグジット』『レッドネック』『マンモスの抜け殻』『覇王の轍』がある。

「2023年 『心眼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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