あなたの会社は原価計算で損をする 復刻版

著者 :
  • 日経BP
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296110018

作品紹介・あらすじ

「伝説のコンサルタント」の第一作

1963年、国が定めた会計の指針に反逆し、
管理会計の重要性を説いた話題書が復活!

原価を“経理の塔”から引っぱり出し、広く大衆のものにする方法論


今までの原価計算のやり方が、
いかにダメなものであるかを明らかにする――
生きている経営に、
死んでいる原価計算を使うわけにはいかない。
(本書より)

感想・レビュー・書評

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  • 本書のキモは、原価計算基準がもたらす企業会計の矛盾です。原価計算の基礎についての頭出しにはいいとおもいます。詳細は、現代の工業簿記、管理会計を参考にされてはいかがでしょうか。

    全部原価計算が企業の儲けの計算に役に立たないので、直接原価計算を使おうというのが市倉氏の怒りです。

    そうしないと、本当にどこで損をしてどこで儲かっているのかがわからない。
    (財務会計は、全部原価をベースとしているため、本質は変わっていない。直接原価は、管理会計の基礎になっていて、両者は決算時に調整されています。念のため)

    ただし、全部原価計算を利用すれば、在庫の評価で赤字経営でも黒字の帳簿にできるのである。
    企業としては、銀行や業績の手前、そうせざるを得ないが、そのために、資金ぐりが圧迫される。

    現在簿記1級で教えていることが、昭和38年当時現場で発生していたのである。

    他に、部門別管理、原価センター(ABC)、PDCAなどの管理が描かれている。

    各所には、ドラッガー氏の引用がみられ、氏の中核にあったことがうかがえる。

    目次は、以下です。

    復刻に寄せて
    まえがき

    1章 経営の悪夢 全部原価計算の話
    2章 経営の水先案内 直接原価計算の話
    3章 経営の原価と利益 前向き原価の話
    4章 経営の費用節減 実際活動の話
    5章 経営の人間管理 経営センター制度の話
    6章 経営の成果分配 ラッカー・プランの話

    おもな参考文献

  • 会計原則に固執していては事業の実態が見えてこない。本当は赤字なのに、会計上では黒字に見えてしまう事はままある。その最大の原因は「固定費の割掛け」である。伝説の経営者であり、多くのカリスマ経営者の師範でもあった一倉定氏。彼が出てくる前は、管理会計という概念すらなかったのであろう。固定費の配賦を間違えては実態とは異なる原価が計算され、赤字であるのに黒字であるといった誤った情報を元にした誤った意思決定をしかねない。本書では分かりやすく例をあげている。

    本書は昭和38年(1963年)に書かれたたものであるが、その当時にこのような視点で経営を見ていた著者の先進性に驚く。復刻版という事で、当時と現在では取り巻く状況は大きく異なるが、本質は分からないのである。会計屋の言う事をそのまま鵜呑みにせず、会社が利益を出しているのかどうかをしっかりと把握し必要な手を打つのが経営者の仕事という事だ。

    前半では固定費を製品の原価に入れる事によって、製品が売れない限りはそれが棚卸資産となり費用化されない事を問題視する。当たり前の話であるが、当時はまだ管理会計という概念すら無かったのであろう。書中では、固定費を製品原価と切り離して別の費用として計上するダイレクトコスティングとして提示されているが、海外企業がよく使うコントリビューションマージンと概念は同じである。

    財務会計上の処理をそのまま鵜呑みにする経営者であってはならない。特に製造業が日本を引っ張ってきた中で中小企業の経営者などはそうした問題点を気づかない人も多かったのではないかと思う。実際、現在でも管理会計をしっかりと使いこなせている企業は多くないはずである。書店に行けば、原価計算のノウハウ本が売っているが、本質を理解しない薄っぺらい知識しか身につかないものばかりである。本書はそうしたものとは一線を画する本質を語った名著である。

    書中、本田宗一郎氏の言葉が何度か引用されているが、当時はまだホンダも創業して10数年程度。まだ自動車には進出しておらず世界一のオートバイメーカーを作り上げた人として紹介されている。そこで語られているのが、人は自分のために働くという事。会社のために働くなどという人間は欺瞞であり、キライだと。自分のやりたい事をやる時が一番能率が上がると。この人間理解が後のF1制覇へと繋る原点を見た気がした。

  • 歪められた目標管理→マネジメントへの挑戦→本書の順で読了
    この3冊は、筆者の経験に裏付けされた経営の本質が盛り込まれてると思うが、それぞれに重複も多い。

    会計基準である全部原価計算の矛盾(固定費を割り当てることで起きる数字のマジック)と、直接原価計算の明瞭さを解説。
    簿記の勉強だけじゃ分からないことに触れられた。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB50268518

  • 1963年に管理会計の重要性について書かれた本の復刻版。日経電子版で引用が紹介されていたのに興味を持って読んでみた。60年以上経ってもエッセンスは色褪せていないことに驚き。これぞ普遍。

    ・利益率は「過去の優秀さ」しか示していない。生産性を高めること、すなわちより多くの生産価値(限界利益)を生み出すことこそ経営者の使命である。

    ・利益の絶対値の大小や比率の値は、極言すればどうでもよい。それらの値がどのような傾向をとっているかが問題なのだ。

    ・部門の成果を測定する際に、未来費用(将来に向けた投資的費用)を計上してはいけない。

    ・生産価値に対する賃金率を一定にする「ラッカー・プラン」は、従業員に対するインセンティブ・プランとしても利点が大きい。

  • 原価法の仕事に関連して。結果としては管理会計の基本的な考え方をおさらいできた。

  • 難しかった
    理解にはもう一度読む必要あり

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著者プロフィール

1918(大正7)年、群馬県生まれ。36年、旧制前橋中学校(現在の前橋高校)を卒業後、中島飛行機、日本能率協会などを経て、63年、経営コンサルタントとして独立。「社長の教祖」「日本のドラッカー」と呼ばれ、多くの経営者が支持した。指導した会社は大中小1万社近くに及ぶ。1999年逝去

「2020年 『ゆがめられた目標管理 復刻版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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