第三のチンパンジー 完全版(下) 人類進化の栄光と翳り (日経ビジネス人文庫)

  • 日経BP 日本経済新聞出版
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296113019

作品紹介・あらすじ

なぜ他民族の大量殺戮を企て、
実行してしまうのか。
ダイアモンド博士の名著、完全版!
王立協会科学図書賞受賞作

およそ1万年前から発展の速度を上げた人間は、農業を覚え、人口を増やし、文明を栄えさせた。人間の技術は他の星に信号や人工衛星を送るまでに発展した一方で、一夜にして地球を吹き飛ばす兵器をも開発した。なぜ人間は他民族の大量殺戮を企て、たびたび実行に移すのか。なぜ人間は動物以上に環境を破壊してしまうのか。資源涸渇から滅亡した文明から、何を学ぶべきか。人類の未来への警鐘と希望を記したダイアモンド博士の記念すべき第一作の完全版。

「私たちの過去の記録と現在の窮地を見て絶望した読者の皆さんが、希望の兆しは見えるのであり、私たちが過去から学ぶ道はあるのだ、というメッセージを見落とさないでいて下さることを願ってやみません」(本書より)

感想・レビュー・書評

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  • たくさん学べるすごい本でした。
    人間には虐殺を好む性質が
    もともと仕込まれていると語る
    部分では、事例が次々と挙げられていて、
    イヤになります。受け入れ難いが、
    そうかもしれないという気になります。

    それでもなお、人間は言語があるから
    過去の成功及び失敗から
    未来の選択を学べるのだとする
    著者の訴えは、希望を与えてくれました。

  • 人類皆兄弟。環境次第。

  • ジャレドダイヤモンドの一般向けのデビュー作の本らしい。先に「銃・病原菌・鉄」と「人間の性はなぜ奇妙に進化したのか」を読んでいたのでデ・ジャブ感満載であったが、これらの本が本作の各章を切り出し一つのテーマに焦点を当てて書いた本であるので当たり前ではある。本作は、あくまで人間というもの全体にフォーカスを当てて、なぜ人間がチンパンジーと98%くらいの遺伝子を共有しているにも関わらずこのように特別な存在となっているのかを洞察している。博士の結論としては人間はある意味で特殊ではあるが、人間の特徴である言語、性生活、同種殺し(戦争)、薬物中毒、芸術などをテーマに実はこれらの特徴も類人猿はもとより他の生物にもみられるということを考察している。ただし、人間ほどにそれらの特徴を進化させたものは存在しないのでその意味ではやはり人間は特別ということ。最近のユヴァルノアハラリの人間考察の基底となるような本。こんな思想が30年も前に存在していたとは教学である。

  • 上下巻通読。30年前の著作だけに、ネアンデルタール人との混血の否定など、今日明らかになっている事実との齟齬には科学の進歩を感じるし、一方環境破壊への警鐘は今日にも完全に通じる内容で、時代を感じさせない新しさもある。訳注で30年間のギャップを適宜注釈している点は、当文庫版ならではの長所で、当時と比べて、人類または地球が抱える課題に対し、改善の努力や効果の兆しがある点、第三のチンパンジーの"学び"を見て取れる。文中、チンパンジーが「敵」を惨殺する描写の酷たらしさに、彼らが動物であるのをつい忘れたのは、我らが多くの遺伝的共通を持つ以上、ごく自然なことだったのだろう。

  • 非常に面白かった。
    上巻は正行為に関わる論点が多く筆者の嗜好性が出てたり、古さを感じさせたり、冗長な印象だったが、下巻は面白い。
    人類史みたいな部分が筆者の強みだと思う。

    ヨーロッパの起源がステップ地域の遊牧民族にある話、ポリネシア人、ネイティブアメリカンのジェノサイドの話など。
    非常に面白いし古さを感じない。

    また巻末にある、人間の自然破壊に対する一般的な意見への反論が示唆深い。
    人間による環境破壊は、長期目線で見たときに、隕石衝突などと比べて大したことはなく、地球温暖化も過去に何回もあったため、大したことない、と言う論に対する反論として、自然消滅のスピードが過去と比べて明らかに早いこと、隕石衝突で哺乳類は死ななかったことで反論している点。
    また、人間の生活に貢献しない生物はいらないと言う論へは、複雑なエコシステムをとっている自然環境において、貢献しない種だけを選り分けることが構造的に不可能だと言っている点。

    上記の論についてファクトを並べて説明するのではなく、一定ロジックベースで展開する点も非常に読みやすい。

    ファクトはたくさん持っているのだろうがそこの開示だけにこだわらず、さまざまな領域の知見フル動員しながら(筆者は非常に幅広い分野に深い造詣がある)、論を組み立てており、知的好奇心が刺激され異常に面白い。

    筆者の強みである人類史について書かれた「銃病原菌鉄」は必読だと思ったのでこれから読む。

  • 30年も前に書かれた本なのに、全く古びてなくて、(私がいろんなこと知らなさすぎて?)知的刺激がいっぱい。

    私がここ半年くらいで出会った、「人新生の資本論」とか、「チェンジング・ブルー」「歴史を進めた植物の姿」「生命はなぜ死ぬのか」といった本を読んで、初めて知って興味深く思った内容が、こういう人間観、世界観、歴史観、未来観、と繋がり、重なってくるなーと思いながら読みました。

    学者って、実際は地味な作業なんだろうと思うけど、こうしてまとめてもらうとすごい(@_@)

    目の前のことに忙殺される毎日ながら、、、
    こうして日常とは違う視点から俯瞰してみると、人間って大きな可能性を秘めた生き物だなーと感じます。

  • 大陸の東西の伸び 世界征服 印欧語族 農業の開始=栄養鈍化 農耕 都市 砂漠化

  • ヒトはなぜ同種の個体を大量虐殺するのか、コモンチンパンジーの例なども踏まえ、生得的のものに環境や技術がそれを実現できたものなのか、大量絶滅は産業革命以前にも大きく行われていたのか、など、なんとなく近代特有で、かつ、現代では理性によって克服されたと思い込んでいる人類の業について、深く考察され視野を広げることができた

  • 第3部 特別の人間らしさ(承前)
    第10章 農業がもたらした明と暗
    農業革命
    農業のツケ
    階級差別の出現
    第11章 なぜタバコを喫い、酒を飲み、危険な薬物を使うのか?
    薬物濫用のパラドクス
    ハンディキャップ理論
    非生産的信号の進化
    第12章 星は幾千あれど我らは独りぼっち
    ET
    緑の岸辺方程式

    第4部 世界の征服者
    第13章 最後の初対面
    大峡谷の5万人
    文化的多様性
    第14章 たまたま征服者になった人々
    文明の発達段階
    地理学の復権
    第15章 ホース(馬)、ヒッタイト語、そしてヒストリー
    印欧語族の繁栄
    言語の各段と置換
    馬が世界を変えた
    第16章 「クロ」と「シロ」とで……
    ジェノサイド
    殺害の動機
    殺人の合理化
    第5部 一夜にしてふいなる進歩
    第17章 黄金時代の幻想
    黄金時代伝説
    生物学的大虐殺
    第18章 新世界での電撃作戦と感謝の祈り
    電撃作戦説の検証
    第19章 第二の雲
    核と環境
    将来の絶滅の予測
    エピローグ 何も学ばれることなく、すべては忘れられるのか?

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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