- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784296113040
作品紹介・あらすじ
「ゲームチェンジ」とは、
従来の枠組・常識・ルールが
まったく通用しなくなること。
繰り返される、泰平の世と激動の時代。
人類は数々の「ゲームチェンジ」を経験し
ある者は繁栄し、ある者は没落していった。
休戦期を終わらせた[鉄器]、
国の在り方を変えた[騎馬]、
消費社会を生んだ[産業革命]、
現代社会を築いた[フランス革命]……
世界史的観点から俯瞰することで、
現代世界の「あたりまえ」が「あたりまえ」となった背景、
そして「ゲームチェンジ」の只中に置かれている
現在の我々が取るべき道を解説する。
感想・レビュー・書評
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ここで言う「ゲーム」とは生活の事で、技術面に限らず、生活様式や価値観の変化度合いが大きいイベントをゲームチェンジとしている。大区分で言えば、ユヴァルの言う認知革命や、産業革命、または文字や紙の発明、大航海時代、電気の発明など、人間社会が大きく変わる出来事の事。そうすると、何をもって区切るかは、若干恣意的だ。それはそれで良いと思うが、こうした地球規模のイベントについて幅広く紹介するのが本著。
ゲームチェンジで大切なのは発明ではなくて普及だと言う。鉄器の場合、普及のきっかけはヒッタイトの解体。騎馬もまた普及のきっかけはスキタイの解体。独占していた優位性がなくなる事で周囲もその恩恵を享受できるようになり、普及する。ビジネスでも何でも、囲い込むと大衆化し難いから普及せずにスタンダードになり難い。
そんな感じで、一つ一つのテーマに雑学を付与して本著は進む。古代、戦争は農閑期に行われた。紙が発明された後も長らく中国では竹簡が使われ続けた。中国の文字は縦書きだから巻物。横書きのヨーロッパで冊子が発明された。幕末でも収録語数5万語程度の蘭和辞書が60両=700〜800万円。読書は富裕者の独占だった、とか。
これが同列で扱われるのは良いか分からないが、アメリカの戦争におけるザ・リメンバーシリーズ。敢えて戦争を仕掛けて覇権を取るゲームチェンジャーとしては、本著で扱われるのもおかしくはないのかも知れない。面白かったので、下記に記載する。並べると、彼らがリメンバーで奮い立ち易い国民性だという事が分かる。また、よくよく考えると、別にゲームは変わらず、同じゲームを違う対象に進めているだけという気もしてくる。
1898年米西戦争、リメンバーメイン
1846年メキシコ戦争、リメンバーアラモ
2003年イラク戦争、リメンバー911
第一次世界大戦、リメンバールシタニア
第二次世界大戦、リメンバーパールハーバー
ベトナム戦争のリメンバートンキンは、捏造であることがばれて失敗詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
①ゲームチェンジが起これば、二度と後戻りはできない
②流れに逆らうものは例外なく滅ぼされる
③覇権国家はゲームチェンジの間の安定期に現れる
④非常識はゲームチェンジ後の常識になる
ヒッタイト 鉄の融解温度以下でも炭を混ぜると硬度が出せることを発見
鉄製農具で農業の効率化
⑤ゲームチェンジに必要なものは発明ではなく 実用化と普及
効率化による余剰から産業、貨幣経済へ
権力=政治・宗教・軍事
一神教で統治 ヘブライ人のユダヤ教で普及 敵を憎む
騎馬=戦争手段 軍事力による広域統一へ
日本の**道=精神修養 競技やスポーツではない
仏教=悟りに至るための勉強 →大乗仏教=宗教化 仏像崇拝
⑥偉業が達せられると、それが前例になって、ゲームチェンジが起こる
⑦知の解放はゲームチェンジを誘発する
活版印刷 聖書の普及と教会の腐敗からの宗教改革へ
さらに王国による主権国家が成立、その後、国民国家へ
⑧ゲームチェンジのきっかけとなる新しい時代の波は辺境から起こる
ヨーロッパ民族移動 辺境の森を切り開く 技術を磨くより道具に工夫を凝らす
繊維革命:織機→紡績機→綿繰機→ 産業革命:蒸気機関 車/船→帝国主義
戦争が国王の営利目的の投資から、大義名分の理想のための聖戦、総力戦へ
⑨ゲームチェンジが起こると、理解できない者が一定数現れ、流れを戻そうとする
冷戦の次段階がテロ ナポレオンが負け始めたのはスペイン農民軍のゲリラから
通信社の知の独占をインターネットが破る
⑩ゲームチェンジが起こる要因は大事件ではなく、前例のないことが起きること
中国の堤防(インターネット統制)が決壊したときが滅亡のとき
アメリカの帝国主義戦争 国民をだますプロパガンダ 情報統制
輿論を制したものが勝つ 21世紀は「文化力」 日本のアニメ
覇道=武をもって相手をねじ伏せ屈服させる支配
王道=徳をもって相手を心服させ、帰服させる政道 (孫文) -
良くも悪くもオーソドックスな内容。
求めていたもの(ゲームチェンジャーという切り口で歴史をゆるく概観する)には合致していた。
歴史を一通り学んだ学生などが、より理解を深めるために斜め読みするにはよさそう。
歴史の転換点についてのリアリスティックな考察は好感が持てる。
一方、以下の2点から著者との合う合わないはありそう。
・言葉遣いのクセが強い(もっと平易な言い方が出来るのに、普通使わないような単語、漢字をあえて使っているように感じられる)
例:「温故知新」で済むところを「覧古考新、彰往察来」と表現、など
・「教科書の歴史は間違っている」「世の中の定説はこうだが、実は違う」的な記載が時折見られるが、内容によっては「本当?」と感じる部分がある。
例:鉄器の普及により春秋時代が終わり、戦国時代が到来した、など
著者は予備校講師とのことで、変に納得してしまった。笑 -
ゲームのシヴィライゼーションを思い出し、興味深く読めた。
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「読後の方が重要です」とのこと、まさにその通り。何が新で、何が旧か、を考えること。我々はプーチンになってはいけない。
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世界史を断片だけ知っている自分にとっては面白い読み物だった。ストーリーとしての歴史であった。衒学的な言葉使いが見られたが、自分は嫌いではなかった。著者の右翼思想的な一面が見られた。
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テーマをもとに地域や時代を横断的に整理、解釈する「横串系」の歴史本。
タイトル通り、ゲームチェンジがテーマ。
古代から現代まで幅広く扱う。多くの歴史的事象を知っている前提で語られるため、一定の知識は求められる。
筆者の主張は強いが、個人的には「そんなに言うほどかな?」という点もいくらかある。妄信はせず、一意見として受け取ることが肝要。 -
序盤はすごく楽しく読み進められたが、中盤〜終盤辺りから「中国は前時代的なので世界のトップには絶対になれない」「アニメが日本の文化力の高さを示し世界からの支持を受けることで、日本が王道として世界を牽引しうる」などの持論で首を傾げてしまうところがあった。「専門家の指摘が外れるのは枝葉末節に囚われすぎて本質を見失うからだ」との指摘があるが、著者自身がそうではないのか?と感じた。
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誕生→安定→不安定→崩壊というサイクルを仏教では成住壊空(じょうじゅうえくう/四劫)、あるいは生老病死と説く。エントロピー増大則と考えてよい。
https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2023/02/28/010717