仕事をつくる 私の履歴書【改訂新版】

著者 :
  • 日経BP 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784296114634

作品紹介・あらすじ

学歴も社会的基盤もない。仕事は自分でつくらなければならない。気力、集中力、目的意識、強い思いが、自らに課したハードルを越えさせる――

フランス、イタリア、ドイツ、アメリカなど欧米、そして中国、韓国、台湾などアジアでのビッグプロジェクトも注目を集める世界的な建築家が「明日を担う子どもたちが夢を見いだしてほしい」と、自ら建築費を負担して日本全国に図書館「本の森」をオープンさせている。80歳を迎え、ますます精力的に仕事をし続けるANDOを突き動かす、そのエネルギーの源泉はどこにあるのか。

本書には、出世作「住吉の長屋」から2021年オープンのパリの現代美術館「ブルス・ドゥ・コメルス」までの代表作品がカラー写真で一同に並ぶ豪華なミニ写真集を挟み、目で見るANDOの軌跡にも読者は打ちのめされるだろう。

プロボクサーとして闘った高校時代から、先鋭的な芸術家との切磋琢磨、国内外の名建築を身体で吸収した建築行脚を経て、大学進学を諦めざるを得ない環境のなか独学で1級建築士となる。住宅から始まった建築家の道は、誰も見たことのなかった、誰にもまねできない建築によって、日本を飛び出し世界につながっていく。「仕事をしながら建築を学んできた。私の歩んできた道は、模範というには程遠い。が、この一風変わった歩みが、若い人を少しでも勇気づける材料になれば幸いだ」

本書は2011年の東日本大震災のさなかに日経新聞に連載していた「私の履歴書」が元になっている。震災からの復興に日本の未来がかかっていると、縮む日本人を叱咤する異色の半生記だったが、それから10年。コロナ禍、ロシアのウクライナ侵攻、温暖化、と日本を越え地球をめぐる危機的状況はエスカレートしている。自身もこの10年の間にガンとの闘病で5つの臓器を摘出した。それでも今を全力で生きる姿は、日本人に生きる目標を取り戻させ、子どもたちには自立を促す強いメッセージに富んでいる。

感想・レビュー・書評

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  • 安藤忠雄さん、イメージと真逆の方でした。
    大阪生まれで、独学で建築を学び、世界的な建築家にまでなった。大変な苦労人だったのですね。
    数々の名建築が、気の遠くなるような対話を重ね、多くの困難を乗り越えたものであることが、数々のエピソードからひしひしと伝わってきます。
    次世代を育てる思いも強く、野性を呼び起こすような経験の必要を説かれる熱い方でもあります。
    「人間の心の成長にとって、最高の栄養は本である」との一節に、意を強くした一冊でした。

  • 安藤忠雄さんのことは、何やらかっこいいデザインの建物を設計している方ということしか知らなかったのだが、この本に書かれたエピソードは読み応えがあった。学歴もなく、独学で建築を学び、バブル期から現代までの日本の建築の第一線を駆け抜けてこられた熱意。そして街づくりや子どもたちへの支援活動など、長期的な目線で日本の再生を考える姿勢に感銘を受けた。
    「今時の若者は軟弱だ」と切り捨てる物言いにはドキッとするが、安藤さんの人生を見ていくと、そう思われるのもごもっともという気がする。
    マネジメントという観点からも勉強になるお話が多々あった。

  • 2022年作品。改訂される前の作品も読みました。7月29日の講演会でお話を聴けました。10年ほど前にも講演を聴きましたが、癌でかなりの臓器を摘出したと言うことを知っていましたので、気になったのですが、全くの杞憂でした。相変わらず歯にきぬ着せぬ痛快な話ぶりに笑ったり、考えさせられたり楽しい時間を過ごせました。本の内容は、知っていることが大半ですがボクシング4回戦ボーイから独学で世界で活躍する建築家になった安藤忠雄さんの考え方を知ることができて面白かった。私が安藤忠雄さんに関心を持ったのは阪急神戸線から見えた「六甲の集合住宅」でした。衝撃でした。これからも精力的なご活躍を祈っています。

  • 同じ建築に携わる者として、改めて安藤さんの凄さ、偉大さ、自立心の強さに感動しました。
    私自身も独立を考えていますが、ちゃんと自分自身がどんな仕事をしたいかを考えていないと、自分で仕事を作ることはできないと考えさせられました。生きて行くために何でもやると言うよりも、いい仕事をするために学ぶべきところは貪欲に学ぶ。

    もっともっと建築を感じようと思えた、私にとっては力の源泉となる一冊。

  • 安藤建築が大好きでいろんなところを見て回ってる私ですが、安藤さん本人のことは知らない…
    という思いから、こども本の森神戸でこの本を購入。
    読みました。

    安藤建築は、自然、光、その土地の文化が建物と融合しているところが素晴らしいですが、そこに対する安藤さんの強い意志を、文字から改めて理解して、腹落ちすることが多かったです。

    こども達に対する画一的な教育や、圧倒的な経験の不足については、本当に耳が痛くて、考えさせられました。
    仕上がりつつある自分の子供に、もっとハングリー精神と物事への意欲を持ってもらうには、どうしたら良いのだろうと、考えさせられました。

    そして、パリに行こう!
    ブルス・ドゥ・コメルスを、見よう!と、心に誓いました。

  • すごく著名な建築物を作る建築家で
    建築に明るくない私でも知っている建築家・安藤忠雄が
    仕事について書いた本の一ページ目に
    建築は、クレームの多い仕事だと書いていたことがすごく印象的だった
    どんな著名な仕事も、実はやっていること 向き合っているものは一緒なのだと勇気をもらった
    私も目の前のことに情熱を注ぐことで、価値のある仕事へと昇華していけるのだと鼓舞された

    家族も社会を構築する最小単位のチーム

    サムエル・ウルマン「青春」
    青春とは人生のある期間のことを言うのではなく 心の持ち方のことをいう

    建築も社会も理屈だけで割り切れるほど単純ではない。強く熱い心が大切。

    コンペに受かることが全てではない
    コンペに挑戦するために熱意を込めたことに意味がある

    建築をつくることは人を育てることに似ている。
    人間と同じように、敷地にも性格がある。
    一つとして同じく条件はない。

  • 安藤忠雄の建築はとても洗練されたイメージだし、古さを全く感じさせないが、本人は独学の叩き上げで第一人者へと上り詰めた人物。特異な経歴や経験を語った「履歴書」は、ユニークな作品を創り得たかのヒントになる。才能やセンスといった先天的な要素より、信念や仕事に打ち込む姿勢、視野の広さや野生味が強調され、恐らくそれらが各界のリーダーにあったのが戦後の昭和興隆期だったと思しい。文中、国内外の大物の名が多く出るが、彼らは安藤忠雄という個人よりは、その仕事に惹かれて集まり、結果人脈や仕事の幅が広がった観があり、本書のテーマに通じる。立志伝(本人にその意図は無いかもだが)としても充分面白く、途中挟まれる作品群の写真は、著者の言葉に説得力を与える、素晴らしいものばかり。

  • エネルギーと情熱と信念。坂本龍馬を思い出した。

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著者プロフィール

建築家。1941年生まれ。独学で建築を学ぶ。1969年安藤忠雄建築研究所設立。1997年東京大学教授。2003年同名誉教授。2005年同特別栄誉教授。2010年文化勲章を受章。日本建築学会賞、アルヴァ・アアルト賞、日本芸術院賞、プリツカー賞、高松宮殿下記念世界文化賞、アメリカ建築家協会(AIA)ゴールドメダル、国際建築家連合(UIA)ゴールドメダル、イサム・ノグチ賞など受賞多数。

「2022年 『安藤忠雄の建築5』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安藤忠雄の作品

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