「正義」のバブルと日本経済 (日経プレミアシリーズ)
- 日経BP 日本経済新聞出版 (2023年11月10日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784296118731
作品紹介・あらすじ
財政金融政策や社会保障からヒルズ族まで、何が「正義」とされ、その結果どうなったか。日本経済長期停滞の要因を新たな視点から探る。「土地は高すぎる」「赤字国債はもってのほか」「銀行救済に税金投入はけしからん」「為替に金融政策を振り向けてはいけない」「IT起業家は不道徳」「金融政策は何でもできる」「中小企業を助けるべきだ」「高齢者を助けるべきだ」「官僚は常に悪いことをする」「子どもを持つのは個人の自由、産めよ増やせよに戻るな」――といった「正義」を取り上げる。
感想・レビュー・書評
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本書のテーマは、「はじめに」の部分に下記の通り書かれている。
【引用】
本書ではいくつかの「正義」のナラティブがどのように日本経済に影響し、時にゆがめてきたかをみていきたいと思います。特に私が注目したいのは、その時は多くの人が賛同あるいは反対できない「正義」のナラティブがいきすぎて、「正義」のバブルになり、経済政策に悪影響を及ぼしたと思われる例です。
(中略)
ただ「国民の安心が第一だ」「プライバシー保護の優先を」という正義の言葉を前にして、マイナ保険証に象徴される医療分野のデジタル改革を止めてしまうのは間違いだと思います。
【引用おわり】
すなわち、筆者は「いきすぎた"正義"が、政策をゆがめている」場合があるのではないか、と主張しており、その例として、上の「マイナ保険証」のほか、「バブル時代の地価を下げる政策」「不良債権解消に向けての金融機関への税金投入」「中小企業救済策」「高齢者優遇施策」などを挙げている。
そうかな?と思った。
筆者はキーワードとして、「正義」をあげているが、私は本当のキーワードは「既得権益」であり、「政府への信頼のなさ」ではないかと感じた。
日本の多くの企業は「中小企業」であり、中小企業を経営している人、中小企業で勤務している人は多く、それらの人たちは選挙で大きな影響力を持っている。高齢者も同じだ。彼らの「既得権益」に反する政策は、選挙を考えるととれない、従って、「中小企業救済策」「高齢者優遇施策」がとられるのである。それは、「正義」とは関係ない、あるいは、「中小企業関係者や高齢者にとっての正義」に従っているということなのだと思う。
「マイナ保険証」への反対は、既得権益とは関係はない。例えば個人情報が守られるかということについて、人々は行政機関を信頼していないと思う。これまでの実績から考えて、行政機関がIT関連技術に長けているとは思えないのだ。これも、「正義」とは関係のない話だと思う。
話としては面白い本だったけれども、ちょっとポイントがずれているようにも感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
浅すぎて、読み応えと得るものに乏しい(><)
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「銀行救済に税金投入はけしからん」「堕落した官僚は懲らしめろ」…。反対しづらい「正義」の言説が、日本経済をどう歪めてきたのか解説する。
「正義」のバブル1 「地価を下げることこそ正しい」
「正義」のバブル2 「銀行救済に税金投入はけしからん」
「正義」のバブル3 「日本はものづくり国家、額に汗して働け」
「正義」のバブル4 「弱い中小企業はみな救うべきだ」
「正義」のバブル5 「堕落した官僚は懲らしめろ」
「正義」のバブル6 「金融政策はあらゆる手段を」
「正義」のバブル7 「高齢者は弱者、皆で助けよう」
「正義」のバブル8 「人口減少は国家的危機」
「正義」のバブル9 「拙速な改革は避けよ」 -
東2法経図・6F開架:B1/9/504/K