がん消滅の罠 暗殺腫瘍の謎 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

著者 :
  • 宝島社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784299033703

作品紹介・あらすじ

日本がんセンターの夏目医師と羽島博士は、大手保険会社勤務の森川からまたも奇妙な事例を聞く。それは住宅ローンのがん団信を利用した保険金詐欺を疑うものだった。一方、埼玉県内では医師殺人事件が連続しており、夏目のもとに刑事が話を聞きにやって来る。さらには脅迫を受けているという政治家が、「人間を人工的にがんにさせることができるのか」と訪ねてきて……。背後に潜む代替医療の闇。人体という密室で起こす、前代未聞の犯罪計画の全貌とは? 生じるはずのないがん――人体で意図的に発生させられた、がん細胞の謎を追う! 
※本書は2021年7月刊行の同名単行本の文庫化です。

感想・レビュー・書評

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  • 「がん消滅の罠」の続編。
    日本がんセンター勤務の夏目と羽島、そして生命保険会社勤務の森川の3名が不可解な事件に挑むシリーズの2作目。
    埼玉県内の医師連続殺人事件とがん団信を利用した保険金詐欺の2つの物語が並行して描かれる。
    今回の軸はメラノーマと言うガンは人工的に移植できるか、と言うもの。
    通常黒色のメラノーマだが、犯罪に使われているのは無色。発見が難しいと思われるのに、森川が勤める保険会社では無色のメラノーマのガンによる住宅ローンの詐欺と思われる事例が相次いでいた。
    結局、森川の件は証拠不十分となってしまうが、もう一つの医師連続殺人事件は動機が複雑過ぎて、理解不能・・・
    がんの「代替治療法」がいろいろ物議を交わしていることは理解しているが、犯罪に用いたトリックが難しいし、動機も共感には程遠く・・・
    まだ続編が続きそうだが、これ以上難しいトリックはちょっとついていけないかもしれない。

  • 日本がんセンターの医師・夏目は、保険会社の友人・森川からまた奇妙な事例を聞く。それは住宅ローンのがん団信を利用した保険金詐欺を疑うものだった。さらに、がんにするという脅迫状の相談も舞い込んで──。

    保険金詐欺を疑う事件の発端は前回に近いものの、医師連続殺人事件に加えて、がんによる政治家への脅迫が並行。絡み合う事件の謎と規模の大きさ!犯人はわかっている。だが、謎を解かなくては罪を咎めることはできない。肉体という密室へいかにしてがんを送り込んだのか。まさに予告密室殺人。

    今回は代替医療や健康食品に光が当てられる。がんという絶望に向き合った患者の心。そこに残された希望を、すがった藁から搾り取るような医師や業者たち。彼らを野放しにして患者が死んでいくことを許せるのか?犯人は夏目へと正義を突き付ける。しかし、その正義も免疫ではなくがんなのだ。回り道でも今できることをするしかない。真摯に患者と向き合い、治療を施す。当たり前ではまだ救える命は限られている。それでも、その当たり前を貫くことが誠実さであり正義なのだ。最後は救いがあってよかった。

    今回は医学用語がさらにマニアックに。DNAにも切り込んでいく内容で密度がある。現代の技術にも言及されているけれど、もはやSFでは?と感じる。こんなに手の込んだことができるってさすがに都合良すぎるというか、警察も何やってんだよってなる。夏目たちも法的な調査をしていないから、正攻法で勝ちきれないのはスッキリしない。円丁(えんちょう)刑事の「たまたまってのは思考を放棄する言葉だ。たまたま、って言葉が思い浮かんだら、口に出す前に別の言葉に置き換えろ」はカッコよかった。

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著者プロフィール

1976年、埼玉県生まれ。神戸大学大学院自然科学研究科修了。国立がん研究センター、放射線医学総合研究所で研究に従事。現在、医療系出版社に勤務。第15回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞し、2017年に『がん消滅の罠 完全寛解の謎』でデビュー。他の著書に『時限感染』(以上、宝島社)、『テウトの創薬』(KADOKAWA)がある。

「2022年 『がん消滅の罠 暗殺腫瘍の謎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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