- Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
- / ISBN・EAN: 9784305707567
作品紹介・あらすじ
古代歌謡を読むには方法が必要である。
琉球、万葉と周辺を抱え込み、新たな視角を模索し、表現論と作品論を、連続し関連する課題として究明する21編。
古代歌謡を中心とした文学の戦後研究史、「歌謡と和歌」「民謡」「童謡」「時人」の各研究史をまとめ、歌謡研究を概観している用語解説も収録。
研究史を振り返り自分たちの位置を確かめることが新たな方法を導く。
執筆は、編者、古橋信孝、居駒永幸 のほか、石川久美子、遠藤集子、倉住薫、近藤信義、坂根誠、島村幸一、鈴木崇大、関口一十三、高桑枝実子、田中美幸、綱川恵美、森朝男、山口直美、山崎健太、横倉長恒。
【ここ二十年近く、今は方法の時代ではないという言い方がされ、作品そのものの精緻な読みに向かう傾向が強い。一九七〇年代後半辺から、欧米の見方が次々移入され、方法が軽くなったことがある。見方を変えれば別のものが見える程度のことが方法を軽くしたのだと思う。……私は若い頃、われわれの時代の感じ方や考え方で読むのは誤りで、その時代の考え方感じ方で読むことを主張してきた。そのために方法が必要だったのである。……
最近求められている精緻な読みとはどういうものだろうか。作品内に限定して普遍性の側に立って読むことらしい。それでは作品はある社会に生きた人間の営為であることが忘れられ、ただ分析するためのものになっていくだろう。そしてこれは周辺の作品や前代、後代との繫りを遮断していくことになっていき、研究を痩せ細らせていく。
というわけで、研究論文はつまらなくなった。たぶんそういう論文を書いている本人もつまらないのではないかと思う。作品内部に閉じて読むのも方法である。ならばやはりもう一度方法を考えたほうがいいのではないか。】……本書「Ⅴ 研究史」(古橋信孝執筆)より