- Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
- / ISBN・EAN: 9784306052581
作品紹介・あらすじ
街に生き生きとしたふれあいを育てる屋外空間の条件とは。人々の日常の活動に焦点を当て、都市のスケールから街角のディテールまで、きめ細かく論じる。
感想・レビュー・書評
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公共空間で行われる屋外活動は3タイプ:必要活動、任意活動、社会活動
屋外空間の質が良好であれば、任意活動の発生率が上昇する。任意活動の水準が高まれば社会活動の量もそれに応じて増加する
社会活動は、人びとが動きまわり、同じ場所にいる事の直接の結果として自然に生まれてくる
最初の前提条件は、同じ場所にいること、出会い
活動は人をひきつける:スカンジナビアの格言「人は人のいるところに集まる」
子どもは特別に計画された遊び場よりも、街路、駐車場、玄関のそばなどで遊ぶことが多い
建物の中・間のアクティビティは、空間や建築そのものよりも本質的で貴重。出来事の数 x 持続時間 で計算される→交通の速度が低ければアクティビティが生まれる
社会構造と物的構造の両方を考える事が重要
目線の高さと同じ高さで出来事を行う:見えない空間は使われない
迷ったときには少し空間を削れ
すべての交通が徒歩で行われれば、交通と都市活動を分離する必要は生じない
居間が手本:居間は家族全員が集まり、各自が好きな事をしていても、それぞれの活動と人間の間に結びつきが保たれている
人は短く楽な経路を選択する:物的距離より体感距離が許容歩行距離を決める。快適に歩けて、適度な刺激がある事が重要。
遊び場=出会いの場所:一人遊びもできるし、他の子どもが来たらもっと有意義な活動ができる
公共コミュニティの私物化は街にとって有害(地下街、ショッピングモールの広場etc)
人びとが出入りできる空間を作るだけでは不十分。ぶらつくのに都合のよい条件、幅広い社会活動とレクリエーション活動に参加するのに都合のよい条件、が必要
オープンスペースの横に歩行経路を作る:歩行者は2つの世界を楽しめる
壁のくぼみ:立ち止まるのに好んで使われる場所。半公的かつ半私的、という魅力がある。半分だけ街に参加しながら、プライバシが必要になれば少し影に身を引くだけでよい
よい街には座る機会がたくさんある:住まいのすぐ前に時を過ごす場所を作る詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
アクティビティーを切り口とした設計の重要性について。
「ハード」に出来ること
地:空間構造と社会構造の整合
図:大中小規模における適切なデザインの必要性
具体的なデザインの打ち手
文化、風土を踏まえる -
街の中に賑わい(アクティビティ)を生み出すためには、人々の視線や行動をする時の心理的な要因の基本パターンをよく理解したうえで、建物のアクセスや広場、通りなどを注意深く計画していくことが大切ということが分かる本。
この本に書かれていること1つ1つは読めば自分の感覚的にも簡単に納得できるシンプルなルールだ。しかし、実際に都市や建物の計画にそれが活かされていることはあまりない。
逆に、賑わいの形成のためにイベントやブランド店、大型ディスプレーなどの大掛かりな仕掛けが用いられることが多いように思う。それらはある程度賑わいを作り出せるものの、持続させるためには常に更新し、費用を投じ続けていかなければいけない。
また、都心の繁華街であればそのような仕掛けも導入できるのだろうが、住宅地で人の目が行き届いて安全かつ安心な場をつくるといった場面では、そのような費用のかかる取り組みはほとんど不可能だろう。
そのようなことをする前に、この本に書かれている空間、建物の用途とアクティビティの基本的な関係をしっかり理解しておくことが非常に大切なのだと思う。
シンプルな表現と具体的な事例(写真や図面を含む)で、丁寧に教えてくれる非常に良い本だと感じた。