日比谷公園: 一〇〇年の矜持に学ぶ

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  • 鹿島出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784306072916

作品紹介・あらすじ

日本初の洋風公園として明治三六年に開園した"日比谷公園"。百有余年の足跡に東京の生活文化の変遷を見る。文明開化の象徴となった三つの"洋"、戦時下の極限的公園利用、"アベック公園"時代。市民生活の大舞台でありつづけた百年公園の歴史はこれからの公共空間利用のあり方を考えるための示唆に満ちている。

感想・レビュー・書評

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  • 都会の真ん中にありながら、豊かな自然と憩いのある日比谷公園が好きで、また 羨ましいです。(関西の都会にはあんまり緑豊かな公園が少ない)
    この素敵な緑を育てていって欲しいと 切に願います。

  • 東京農大前学長による、日比谷公園108年の歴史を述べたもの。大学時代に日比谷公園を研究し、以後造園の専門家として常に日比谷公園とともに生きてきた著者だけあって、内容がとても深い。公園に対する考え方が変わる一冊。戦前の政府に関する記述が、批判的(極端に一方的)であり、やや気になった。印象的な記述を記す。
    「(日比谷公園の設計に関し)どうも私たち日本人は機能論でキチンと組み立てられた合理的かつ完璧な計画的環境はニガ手なのではないか。もちろん不合理きわまりない自然発生的環境を理想とは思っていないのだが、完璧なものも好まない」
    「本多静六の日比谷公園設計案は、10年間に及ぶ明治期日本人たちの世論と知恵と好みの集大成であったと言える。「和魂洋才」の本多静六の総合的判断力とでもいう「気配り設計」の成果でもあった」
    「(明治の末の庶民に対して)花菖蒲、朝顔、菊しか見ていない人々にチューリップやバンジーを、しかも西洋花壇の形式で鑑賞させたのである」
    「その場所、その空間に行かないと公園の魅力はわからない。公園に行って、歩きまわり、その場所の思い出、記憶、歴史を眺め、深く関わることで「公園のよさ」を味わうことができる」
    「全景が見通されるようなバロック的構成よりも、曲線と見え隠れする変化と多様性に富んだ本多の「幕の内弁当」型を、日本人の感性は歓迎したのである」
    「(浮浪者が)公園の治安にとって害であるどころか、安心のために寄与しているのは、公園で犯罪が起これば、自分たちの居場所がなくなることを知っているからだ」
    「いまの都心地域では、エリアマネジメントがすすめられている。だからそのなかではことさら、「公園」という場所の異質性が際立つはずである。エリアの多様性という魅力を醸成するのに公園はきわめて有効なのである」

  • 資料ID:21102747
    請求記号:

  •  本多静六先生が設計した日比谷公園。緑おいしげる霞が関のオアシス。といっても時々、食事にいくだけだが。

     勉強になった点。

    (1)東京都では戦時中の罹災死体処理を公園緑地課が担い、公園が仮埋葬地になった。ちょっと文脈上はっきりしないが、今も日比谷公園に死体が埋葬されているように読める。(p93)

    (2)建築で景観の大家の芦原先生が、日比谷公園の石敷きの大広場にすることを、街並みの美学で提案していること。(p156)

     同じ、景観、美を扱うのに、この違いは何なのか。素人の自分には是非日比谷公園の緑は残してもらいたいと思うが、そういう常識感も大事だと思う。

    (3)民間活力の活用によるパークマネジメントの推奨。(p211)

     進士先生は、米国のBIDを参考にというが、独自の課税団体をつくれない日本の地方自治法制度のもとでは周辺に課税、負担金を強制的にとって公園を維持管理するのは難しい。

     自分は、公園への植栽に影響のない範囲で、公園地下を発電、熱供給施設に利用して、平常時は売電、売熱の収益を折半して公園の維持管理にあてる、首都直下などの非常時には、発電、熱供給を霞が関の中枢機能に供給するという妄想をいだいているのだがどうだろうか。

     霞が関の中枢機能が今のままで非常用の自家発電で維持するというのは、首都直下が迫っているのにあまりにもおそまつと思うため。

    付箋p34,68,92,131,161,169,211。

  • 表紙の日比谷公園の設計図が、模様のように美しい。
    動物がいたり、はねつき大会があったり、国葬があったり、安保闘争の集会があったりといろいろな歴史がある。
    今までは公園の周りの歩道を歩くだけだったので、今度、近くに行く機会があれば中に入ってみよう。

  • 公園は何気なく通り過ぎる場所であったが、その歴史とソフトとしてのあり方の深さに気付かされた。行政の中でもっと注目され大切にされるべき仕事であると感じた。

  • 日比谷公園を訪れる度に、普通の公園とは違う「深さ」を感じていたが、鹿鳴館前のだだっ広い練兵場だった場所を日本最初の近代的公園に生まれ変わらすために先人の大きなドラマがあったこと、また現在に到るまで関係者の大変な努力があったことの積み重ねがあったこと、本書ではじめて知った。自然と歴史・伝統が一体となった公園は文化財で有り、まさに「パークマネジメント」が必要であろう。
    しかし関東大震災のあと、小学校と公園を一体とした「緑と青空のコミュニティーセンター」と言うべき先進的な施設が都内に52カ所も作られていたとは驚き。しかし現存しているのは文京区、水道橋からお茶の水に向かってお堀端を進んだ、順天堂の手前にある元町公園ただひとつというのも残念なことである。早速訪問してみたが、落ち着いた大正ロマンの香りあふれるもすばらしい小公園であった。

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著者プロフィール

福井県立大学長、東京農業大学名誉教授・元学長、ランドスケープ・アーキテクト(造園家)

「2023年 『明治神宮100年の森で未来を語る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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