狼煙を見よ: 東アジア反日武装戦線狼部隊

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309004587

作品紹介・あらすじ

の実践へ向けて、思想と情念を極限まで突きつめた"狼"たちのに対する内省を感受しつつ、かれらの軌跡を克明に描く長篇ノンフィクション!

感想・レビュー・書評

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  • 「模範青年」と「爆弾魔」はいかに出会ったか………

    「狼煙を見よ」は、副題にもあるように、東アジア反日武装線戦JF部隊を扱ったノンフィクションである。
    JF部隊といえば連続企業爆破事件で「爆弾魔」「テロリスト」と指弾されたグループ。その彼らと作者松下竜一がなぜ出会い、彼らのことを一冊の本にまとめずにおれなかったかを解き明かすことから物語は始まる。

    8人の死者にこだわりつつもなぜ企業爆破が行なわれたかを問う時新たな思考が生まれてくる

     日米安保条約が自動延長された70年6月23日を最後に、全共闘運動は消滅していくが、将司たちは「やるだけはやった」と思うことはできなかった。万口万遍、ベトナム戦争反対を叫んでも、現実にそれを許している以上何の意昧もない。実力で闘うしかないと考え、武装闘争を志向しはしめた者は、彼らの他、「よど号」ハイジヤックの赤軍派をはじめ、少なくなかった。
     学校を卒業した将司とあや子は渋谷区のアパートで暮らし始めた。夜も昼も働く彼らははた目には勤勉な新婚夫婦に見えたが、実は実践-爆弾闘争への資金をコツコツと貯めていたのである。
     戦争中の中国や朝鮮への侵略と強制連行、そして今も、「発展途上国」の人々の汗と苦しみによってGNP大国と化している日本。そんな日本を造り変えることで、アジアの人々と連帯しようと彼らが選んだ方法は、経済侵略を行なっている企業への爆破攻撃であった。
     彼らの心に、実践へのためらいがなかったわけではない。キリスト者である片岡利明はのちにその深刻な葛藤を次のように述べている。それは、テレビに映されたベトナム難民の赤ん坊を兄だ時だった。小さく無力な生命さえ奪ってしまうベトナム戦争と、それを支えるためアメリカに飛んだ佐藤首相におさえ切れない怒りが湧いた。そして訪米を阻止できなかった無念さ。
      〈私はこのとき、自分の心をずっと縛りつづけていた「人を殺してはならぬ」という抑制を解いたのです。人を殺すことは悪です。しかし殺さなければ不正義となるときもある。そういう時代に自分は生まれついたのです〉
    八人の死者にこだわりつつもなぜ企業爆破が行なわれたかを問う時新たな思考が生まれてくる

     日米安保条約が自動延長された70年6月23日を最後に、全共闘運動は消滅していくが、将司たちは「やるだけはやった」と思うことはできなかった。万口万遍、ベトナム戦争反対を叫んでも、現実にそれを許している以上何の意昧もない。実力で闘うしかないと考え、武装闘争を志向しはしめた者は、彼らの他、「よど号」ハイジヤックの赤軍派をはじめ、少なくなかった。
     

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著者プロフィール

歌文集『豆腐屋の四季』でデビュー。豆腐屋を14年間続けた後、1970年、"模範青年"を脱皮して、作家宣言。生活(いのちき)の中の小さな詩を書き綴ったエッセイと、重厚な記録文学を書き続ける。「暗闇の思想」を提唱して豊前火力反対運動・環境権裁判を闘い、『草の根通信』を31年間発行、反戦・反核・反原発の闘いに邁進する。その闘いの原点は『豆腐屋の四季』にある。弱い人間の闘い方とは、局面負けたとしても、自分を信じ、仲間を信じ、未来を信じることである。3.11福島原発事故以後、若い世代にも「暗闇の思想」が読み直されている。「だれかの健康を害してしか成り立たぬような文化生活であるのならば、その文化生活をこそ問い直さねばならぬ」

「2012年 『暗闇に耐える思想 松下竜一講演録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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