- Amazon.co.jp ・本 (157ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309009773
感想・レビュー・書評
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昭和16年に女学生だった珠貴の、あの日までの話。
どこにでもいそうな、ちょっと気の強い少女珠貴。
戦時下の暮らしが、珠貴目線で語られることで、身近なものに思えてしまう。
出征のため、たった一週間しか一緒にいられなかった夫市岡、4つ年下の従兄弟史郎、彼らと紡ぐささやかな幸せが、この時代ならではと、身につまされた。
市岡、史郎の死、原爆投下、その言葉を出さずに表現することで、この物語の美しさが極まったと思う。
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最後が切ないです
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めずらしく女性が主人公の作品。従兄の史郎と珠紀の関係がいいなぁと思う。きっとほとんどの読み手が物語の最後に直接的な言葉で語られるより悲しさを感じてしまうはず。
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従姉弟のそこはかとない思慕の漂う関係を本当に美しく描いている.史郎の4才年上の珠紀への憧れ想いが切なくて,広島の原爆の悲劇が背景から浮かび上げってくる.心に染み入る物語りである
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読み直してみた。
1995年に初版。
作品名もだけど、表紙の絵がモロすぎる。
陸の上は在りし日の原爆ドーム。水面に映るのが原爆が受けた後の原爆ドーム。
なんとなく、絵も自分でかなと思ったらその通り。
あとがきに著者のお父さんがその日広島にいた話があって、そのエピソードが冥途ありの中に出てきたそのまま。
冥途ありの作中のお母さんの言葉は、そのまま著者のお母さんの言葉だったのかも。
広島に関わりがあるとなお書き残さなければみたいな気持ちで書いてるのかな。
最後はその場面で終わってるんだけど、
多分、史郎は直撃に近い。
爆心地から距離があるだろうから珠紀は無事。令海は鹿屋に赴くから厳しい。
でも夜半に戻ってすぐにたつもんかなぁ。
珠紀の幻覚とかで実は既に、とか。来れる距離ならもっと早くに姿を見せるもんじゃないかとか。
古い作品は特にそうだけど、意味のわからない単語が多い。当て字も多いし。それが良さでもあるけど、読みにくいのも事実。
今となっては調べるのもすぐだけど、以前はフィーリングで読んでたなぁ。。。 -
'94.8.10読了。
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太平洋戦争末期の女学生の話。
珠紀って、幽霊を見る体質なのか?なんとも不思議な話。
史郎って、ほんとに珠紀が好きだったんだな。
その後どうなったのか、気になる。 -
長野作品の魅力の一つに描写の上手さがあるとは常々思ってはいましたが、お得意の少年二人を中心としたものでも、何処とははっきりしない場所でなくとも、こんなにも読ませるとは…!
戦時下に生きる一人の少女の息吹が生き生きと感じられ、彼女に淡い思慕を寄せる従弟との触れ合い、更に夫とのやり取りなど抑えた筆致ながら時に艶かしさを感じる。
ラストシーンは静かなだけに「八月六日」であることが何とも切ない。 -
全体的にはさすが上手いなー、読ませるなーという感想。でもだんだん独特の言葉遣いがおなかいっぱいになってしまいました。内容よりも美しさとか繊細さとかを押し出されている気がして。。
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戦時下の庶民の生活を描いているにもかかわらず、爽やかさを覚えた。
従姉弟同士の仲睦まじいやり取りが、最後のシーンの物悲しさを引き立てているのもよかった。