母の四万十川 第2部

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309011905

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  • 四国の自然の恵みを受けながら、
    つつましくも落ち着いた生活を成し遂げている民蔵とチエ。
    チエが始めた小売の行商は、そこそこ軌道にのり、
    自宅を店に改築して、小売店を始めるまでになっていました。


    仕入れは怪我がよくなった民蔵がバイクを使って行っています。民蔵は、手先が器用なだけでなく、商売の才能もあったようで、お店はだんだんと繁盛していきます。
    また、大阪へ蟹や鮎を売りに行けば、地元の何倍もの高値で売れるなどの情報を得るのも早かったのです。おかげで台風被害などで家屋の損失が出ても、生活は大丈夫で貯蓄までできるほどでした。


    時代は昭和初期を過ぎようとしていました。
    一家に一台、洗濯機やテレビが普及しようという頃です。
    店にもアイスクリームを売るための冷凍庫を用意でき、
    贅沢品といわれたこれらの電化製品に手が届く暮らしになったことを、
    チエは嬉しく思います。


    チエたちの住む村は貧しい村です。男は出稼ぎに行き、
    若者は集団就職で村を出て行き、女たちだけで、
    工場の下請け作業をしている有様でした。
    自給自足の生活が崩れ出していたのです。
    働きたいけれど職がない、
    そんな暗い状況でも何かしなければなりません。
    チエと民蔵は先見の目があり、運もよかったのでしょう。


    もうすぐ東京オリンピックが始まろうとするころ、
    日本の復興をしみじみと感じるこの一大イベントを
    四国の地で、明るい気持ちでチエも心待ちし、第2部は終わりでした。


    実直で人の恨みなど買わずに、ここまで商売が成功できたのは、
    主人公チエの人柄も大きいと思います。
    温かくて思慮深い母に育てられた3人の子供たち。
    第3部はこの子たちの生きざまも書かれているのでしょうか。
    こんな母に育てられた子供がどんな人生をおくるのか、気になります。

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著者プロフィール

1950年高知県生まれ。'87年『四万十川|?あつよしの夏』で文藝賞、'89年坪田賞受賞。'96年『四万十川、第六部』をもってシリーズを完結させる。他に『ゆたかは鳥になりたかった』『母の四万十川』など。

「2013年 『四万十川のひかり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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