- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309018607
感想・レビュー・書評
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“私は、たくさん行動しようと思う。それはたのしみだ。まず、駅頭にたちたい。群衆をみたい。そして電車にのって、景色をながめたい。喫茶店で、珈琲をのみたい。”(p.37)
“生きようとも死のうとも思わない。
ただ。
わたしに出来ることをやろう。”(p.204)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ポッドキャストでwisさんの「月の夜」の朗読を、小さな宝石のように何度も何度も味わっていたが、ようやく本の形で触れた。
高野悦子とは異なり、作家として活躍を始めた女性だった。
また時代も、戦前生まれ、戦後に死亡。
つまり作風も境遇もちと似ている太宰治と似た時代を生きていた。(没落する家。家庭内の仮面。自殺予告。恋愛体質。罪の意識。)
きっと作者自身の経験がモデルなんだろうなと思える恋愛を題材とした小品も素敵。詩も素敵。
絶筆となった「幾度目かの最期」、死への傾斜を実況するという青々しい作品だが、切実。
緑の島。鉄路のほとり。青白き大佐。
三人の男の間を揺れ動かざるを得なかったほどに、実は家庭の問題が大きかったのではないかと思われる。 -
解説で「ラヴ・ストーリー」の冒頭を引き合いに出しているけれども、いささかこじつけに感じられてしまって損。
21歳で一生が完結してしまったことは、その後の停滞や衰退などのいかなる苦みも醜態も味わわず、人にも見せずに済んだという意味では幸運で、繊細なきらめきを一層際立たせる。
今も存命ならば、久坂葉子さんはどんなおばあさんになったかなあ、と想像してみる。 -
ちくま文庫『短編礼賛』で久坂葉子の短編を読んで好きになった。昔の少女趣味というか、そんな感じがいい。美人なのもいい。
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18歳から活動を始め、19歳で芥川賞候補、21歳の昭和27年大晦日夜、列車に飛び込み自殺した作家久坂葉子の短編小説、エッセイ、詩、日記、メモ等を纏めた本。名家に生まれ、その事に苦悩し、恋愛体質、自殺未遂、「罪深い女」、「道化」と自分を思う自虐性と自尊心、何だか太宰の影がチラチラした。芥川賞候補作を含め、代表作がこの本には含まれていないので、いずれ読んでみたい。