あられもない祈り

著者 :
  • 河出書房新社
2.81
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本棚登録 : 1723
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309019819

感想・レビュー・書評

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  • 初・島本理生。さらさらと流れるような、でも行間から濃厚な気配が立ち昇るような、そんな文章。相反する二つが同時に存在する不思議な雰囲気に、読み始めてすぐに引き込まれました。こう言っちゃなんだけど、話の展開や結末はどうでも良いというか、登場人物に感情移入することも無く、ただただ文章を味わいたいという気持ちで一気読み。そして私には珍しく、続けて二回読んだ。

  • 久しぶりにこの人読んだけど、やっぱりさらっとしてて読みやすい。はじめて読んだのがナラタージュで、全体的にそれに雰囲気が似ていた。とにかく切ない。不倫ってドロドロしてて自分本位でいやなもの、ってイメージで、それは間違っているわけじゃないんだろうけど、これを読む限り、痛々しさを感じるほどの愛情と不安定さが印象に残って、とても繊細なものなのかもしれないと思った。というか、そういう風に描写できるのが島本理生さんなんだと思う。私はこの危なっかしさとか重さとかすごく好きだし、腑に落ちないようなぐちゃっとしたエンディングもいいなぁと思ったけど、ブクログで見る限りあまり評判がよくないみたいでちょっとびっくり。入りが性描写だったこと以外は満足でした。

  • どんなに背徳的でも、他人に理解される必要のない関係ってある。それに酔うことなく、罪悪を引き受ける恋愛をするとしないのとじゃ人生違うだろう。
    中盤で男が主人公への熱意を緩やかになくしている箇所の描写がリアルで恐ろしかった。暗くドロドロしたものを抱えながら依存する恋愛は劇薬だ。命が短い。


    それにしても、金原作品の「破天荒な生活をしつつモテまくりの美女作家」と同じく、
    島本作品の「地味だけどそこそこモテるトラウマ女」という設定はそろそろ何とかならないかな。筆力があるから、ぐんぐん引き込んでくる面白さはあるんだけど、設定を見た途端正直「またかい」と思う。

  • くるしい、このひとの書く話は、あきらめのよさとか思いきりだとかそういうものがなくて、忘れたものやおいてきたものたちを引きずって、でも思い出さないようにして歩いているようなくるしさがある。

    そのひとをやさしく知らないあいだに傷つけていくように愛することだとか、できたところで結局はじぶんを守りたいだけなんじゃないかなんて思ってしまう。

    もうれつに人をたいせつに愛せるようになりたいと思ったときに読むような本。

  • タイトルがすごく好き!そして表紙の透明感に惚れ惚れ!

    いつものごとく年上の男性との少し風変わりな恋愛。
    父の歳に近い年上な<あなた>とまだ20歳過ぎの<私>。
    <あなた>と<私>だけでこんなに難しい恋愛が表現できるんだね~!
    書評では登場人物に感情移入できない、との声が多いみたいけど
    この歳になるとこういう恋愛いや人生観か、分かるようになるんだな。
    親に愛されているという実感を持たずに育つと大抵こんな風な大人になるということも。読みながら私はもう許してる。

    こんなに長い間想いあえるってこと自体がもう奇跡だよ。

    ふたりに未来があると良いな。

  • 島本理生、1時間ちょっとで初読。
    文章力、あるっていう定評に期待したけど。
    状況が変わるのはいいけどわかりにくすぎ。自分の頭のなかでは情景描写できてるんだろうけど、文章が追いついてなくて結果的に読者をおいて行きぼりにしてる。
    なんだかなあ。表現力と履き違えたのかな?

    ストーリー的には、直樹との恋愛みたいなのは経験があるので共感できる。というより恋愛観はまだ共感できるのかも。
    最後もわからないなりにキュッとしたので★2。

  • タイトルがとにかく好み。
    あられもない、綺麗で儚くてちょっと切ない感が出てる。「あられもない」の意味は、「あることのできない」、それが発展して「ありえない」「ふさわしくない」という意味。
    わたしとあなたのありえない、ふさわしくない、そう、あられもない祈りが詰まっている一冊です。
    名前すら必要としないわたしとあなたの息がつまるほどの密室のような恋。
    暴力的な直樹と同棲しているわたし。わたしのことが好きだけど他に婚約者、のちに妻となる人がいるあなた。そんなふたりの行き場のない恋の話。

    嫌いな人は嫌いだと思う。
    わたしはそんなに好きではないけれど、嫌いじゃないし、むしろ好きなのかもしれないっていう感じです。真綿荘~よりは全然好き。
    島本さんは今一番わたしが好きな若手作家と言ってもいいくらい好き。だけど年々変化する彼女の作風にちょっとだけついていけなかったりします。
    今回は何も心に残らないんです。なんでかな、すーっと抜けてくの。島本さんの流れるような美しい言葉がそのまま流れ去っていく。いつもはああ、とため息や唸りが思わず出てしまうのに。だから嫌いじゃないけどっていう感想に至りました。
    昔みたいに読んでてきもちがいいもの。DVとかそういう濃いやつじゃなくって、なんかよわっちいけど頑張って、しあわせなのかそうでないのかっていう微妙なラインの彼女のはなしが好きなので。また爽やかなのが読みたいです。

  • ブクログでゲラ本プレゼント企画があったので読んでみたのですが
    普段何もなければたぶん手に取ることはないジャンルの本で
    いろいろと新鮮だったけど、するっと読めて面白かった。

    本を読むときや映画を見るときに
    あまり誰かに感情移入することはないんだけど
    この本の出演者の中で自分が誰かっていうと
    それは確実に「あなた」の立場であるので
    常に語られる立場、として読んでみたところ
    なかなかに興味深い経験になった。

    それにしても前半は特に
    ほとんど情景が頭に入ってこず
    半径2mぐらいで常に話が進んでる感じで
    直樹にしろ母親にしろ、物理的な距離ではなくて
    靄のかかった存在のように思えることも多く
    不思議な感覚だった。
    終わり方も印象的。

  • ブクログ様からゲラ本を頂きました。
    どちらかといえばシンプルな印象の作品だけど、言葉のあいだから感じられるそれぞれの感情は熱く、それに押されて一気に読みました。
    また、「あなた」「私」という表現が物語の出来事を身近な存在にし、隣で静かに話を聞いているような感覚がしました。
    それゆえに、「私」が幸せになれる道があることを願わずにはいられませんでした。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「隣で静かに話を聞いているような」
      タイトルが素晴しいと思っているのでっすが、心にジンワリきそうな内容みたいですね。。。
      島本理生は文庫にな...
      「隣で静かに話を聞いているような」
      タイトルが素晴しいと思っているのでっすが、心にジンワリきそうな内容みたいですね。。。
      島本理生は文庫になった、「一千一秒の日々」「ナラタージュ」を積読中なのですが、最新刊?「B級恋愛グルメのすすめ」と言うエッセイが気になっている(文庫になるまで読みませんが)。ガッツリ重そうなのにエッセイのタイトルは変←褒め言葉です、、、
      2013/04/08
  • 息の詰まる。『もしかしてあなた、えらい人の愛人とかやってます見た目そんなふうじゃないけどなんとなく、雰囲気がね』といわれる恋愛

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著者プロフィール

1983年東京都生まれ。2001年「シルエット」で第44回群像新人文学賞優秀作を受賞。03年『リトル・バイ・リトル』で第25回野間文芸新人賞を受賞。15年『Red』で第21回島清恋愛文学賞を受賞。18年『ファーストラヴ』で第159回直木賞を受賞。その他の著書に『ナラタージュ』『アンダスタンド・メイビー』『七緒のために』『よだかの片想い』『2020年の恋人たち』『星のように離れて雨のように散った』など多数。

「2022年 『夜はおしまい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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