「森の長城」が日本を救う ---列島の海岸線を「いのちの森」でつなごう!
- 河出書房新社 (2012年3月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (198ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309020976
感想・レビュー・書評
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津波による被害は海岸沿いに森の長城を作ることで防ぐことができる。
森の長城は単なる植林でなく、下草や低木を含めた自然に近い形の森を形成することで効果を発揮する。
また、東日本大地震大震災の際の津波被害による瓦礫を再利用することで森の長城はさらに磐石となる。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
宮脇氏が植生学の研究を踏まえてこれまで提唱してこられた森づくりの考え方を、津波による甚大な被害を受けた東北地方沿岸の地域の再生のきっかけとしようという提言。
震災によるガレキを、中の毒物は取り除き、木材などの有機性のもの、コンクリートなどの無機性のもの、ヘドロなども含めてマウンドを作り、その上に地域の自然植生に合った植物の層を作ろうという提言である。
これを300kmにわたって「緑の長城」として東北地方の沿岸に築いていく。
高台移転や長大な堤防だけでは、けっしてすべての地域の再生はできないのではないかと感じていたが、その中にこのような提案が新たな選択肢として提示されたことは非常に意味が大きいと思う。
宮脇氏の書物は、個々の植物だけでなく潜在自然植生という形でひとつの植物の系としてとらえる考え方が自分にとって目新しかったし、さらに、自然だけでなく自然と人間のかかわりの中で「鎮守の森」といったひとつのシステムが出来上がっているということを説得力を持って述べられており、目を開かされることが多かった。
今回改めて、現実の社会の中でできることを、具体的に提言される宮脇氏の姿勢に感銘を受けた。 -
「科学や技術を絶対的なものとして信じるのではなく、遠慮しながら、びくびくしながら」リスクに対応するための、ハード整備とともに、いのちを守るをつくる、という森の長城。
人々の忘れっぽさ、モノカルチャー林の脆弱さ、(その時の人間にとって)必要ないものを蔑ろにしてきたことの反省と、宮脇方式による森づくりを瓦礫の処理と防潮堤に活かそうという提案です。優しい言葉ながら、どういうライフスライルを選ぶのかとつきつけられた感じ。
植物と人間、科学の関係をつかむのにもとてもよい本。