国境 完全版

著者 :
  • 河出書房新社
3.50
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本棚登録 : 33
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309022178

作品紹介・あらすじ

文学の歴史の「失われた環(ミッシングリンク)」が、そこに残っている漱石が、植民地「満州」で果たしていた、知られざる使命鴎外が、「うた」に隠した戦場での真実と良心の疼き異国語としての「日本語」を生き、抗った、数多くの作家たちあくなき資料検証と、深い思索がひらいた、未踏の日本語文学史1998年初めに旧版『国境』を上梓したとき、自分にとって、このテーマはきりのない仕事になるのだろうな、と実感した。日本の旧植民地を背景として書かれた、たくさんの(そして、いまは大半が忘れられている)「日本語文学」と、そこに流れた精神史のかかわりを明らかにしたいと考え、手探りでこの作業に取り組みはじめたのは、まだ、1990年代の前半だった。(中略)『国境』の仕事を今度こそ本当に完結させるためには、さらに自分はここから何を書くべきか。足かけ20年ごしで、やっと、それが見えてきた。これを実行したのが本書『国境[完全版]』である。(本書あとがきより)

感想・レビュー・書評

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  • 国境についてのあれこれエッセイ
    いわれてみれば漱石も国境に携わった作家だったな・・・

  • ことば
    社会

  • 戦前戦中の満州/台湾文学にかかわった人の解説書のようだった。

  • 国境に関係する作品に関しての文学評論集といえばいいのかな。内容に関連性があまりなく個々の話として、どこからでも読める印象。再読しないと良さはわからないかも。

  • 戦前の外地の日本「語」文学の系譜の中からぼんやりと姿を顕にする「国境」を巡り、著者90年代の論考から、その旧著を包み込むよう配列された新章で2013年の新たな収穫を語る本書は、今年で最後となった第25回伊藤整文学賞受賞作となりました。

    漱石の今まで発見されていなかった(あれだけ漱石論が量産されていながら!)朝鮮満州に関する随筆一作の再発見によって、新たに見出された漱石と満洲日日新聞の「星座」を契機として、旧植民地の「日本語」を丹念に踏査していく様は、歴史ミステリーであり、未開地の開拓史であり、冒険譚であり、また漂流記でもあり、その身体を国境としてその線上に言葉紡いだ人たちの列伝とも読めます。

    漱石鴎外中島敦井伏鱒二谷譲次ら文学史上の巨人から、僕が寡聞にして知らないささやかながらも確かに存在した外地の日本語作家らの足跡を丹念に追い、著者自らが同じ日本語文学の書き手だからこそ、現場に立ち合っているかのような制作地点からの再現のために、おそらくは著者自らが納得行くまで資料を掘り返す。

    まるで巨大な法廷の中で、かつて存在した「国境」たちを、時効=忘却寸前で証明してみせようと一人淡々と陳述している声が響いてくるかのようであり、唐突に飛躍したかに見える先の登場人物の意想外な事件や逸話を散りばめながら、この点とあの点が繋がって線になり、この線とあの線が結ばれて面になり、この面とあの面が寄り添って立体となる。その証明の手際が非常に美しい。

    なお本作で紹介される諸作品諸作家は国立国会図書館デジタルコレクション(http://dl.ndl.go.jp/)でも読めるものが多数あります。是非探されてみては!

  • 祝復刊!

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    「国と国のあいだに生きる人びとの息づかいの中からだけ見える世界の真実。名作「暗殺者たち」の原型となった歴史的名著を画期的な漱石論の書き下ろしなどを加えて復活させた決定版。」
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    「旧植民地という領域を越えて、日本語文学の想像力のゆくえをたどる思考の軌跡。作家と作品に秘められたミステリーに迫る最新評論集。 」

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著者プロフィール

作家。1961年京都市生まれ。同志社大学文学部卒業。1999年、初の小説『若冲の目』刊行。2008年『かもめの日』で読売文学賞、13年刊『国境[完全版]』で伊藤整文学賞(評論部門)、14年刊『京都』で毎日出版文化賞、18年刊『鶴見俊輔伝』で大佛次郎賞を受賞。主な作品に『もどろき』、『イカロスの森』、『暗殺者たち』、『岩場の上から』、『暗い林を抜けて』、『ウィーン近郊』、『彼女のことを知っている』、『旅する少年』、評論に『きれいな風貌 西村伊作伝』、『鴎外と漱石のあいだで 日本語の文学が生まれる場所』『世界を文学でどう描けるか』、編著書に『〈外地〉の日本語文学選』(全3巻)、『鶴見俊輔コレクション』(全4巻)などがある。

「2023年 『「日本語」の文学が生まれた場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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