俺たちのBL論

  • 河出書房新社
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感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309024417

感想・レビュー・書評

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  • BLとは、腐女子とはなんなのか.....Bl作品そのももの解説書であり、著者サンキュータツオのオタク遍歴書でもあり、腐女子の眼鏡を通して世の中の「読み方」を変える指南書。今まで知らなかった世界が一気に広がった気がする。
    自分自身は普段はBLを読むこともないし、男に対して恋愛感情を持つようなこともない。オタク文化にはそれなりに浸かっているがBLレーベルに手を出したことはなかった。まず大半の男性が思うのは「男同士の絡みを見て何が楽しいんじゃ!」という感情だと思う。僕自身もそうだったし、作中での春日さんもそうだったらしい。

    でもこの本を読んでそれら全ての疑問が一気に氷解した。行間を読み取り、自分なりに吟味して、補完する.....めっっちゃ楽しそうじゃないか。
    普段から、無意識的にそういった作業をしているんだとしたら、そりゃ腐女子は鍛えてる筋肉は男オタの比じゃないだろう。男オタの作品に対する妄想っていうのはコミケ会場をみてわかる通りどうしても「エロ」に着地してしまう傾向があって(もちろん全てではないが)多様性に欠ける。「セックス」がゴールではないという感覚。だからこそ妄想は無限に広がっていく。「二次元の性別は記号でしかない」「男なら傷付けてもいい」「母乳が出た」などなど名言(迷言)の嵐。腐女子目線というとなんとなく下世話な妄想というイメージを持ってしまっていたけど、そうではなく「世の中を解釈する手段の一つ」というタツオさんの言葉はホントに革命だった。「物事に対する見方はひとつではない」なんていうけど、アニメも漫画も映画も、まだまだ自分が思っている以上に様々な手段で楽しめるみたいだ。消しゴムと鉛筆で萌えるレベルにはまだまだ程遠いが少しずつ筋トレしていくのもいいかもしれない。

  •  ずっと腐女子脳がほしかった。
     BLや百合は読むが、既存の作品に対して二次的な意味で腐ることがない私は、ずっと腐女子脳がほしかった。
     なぜならば、もともとの作品を、新たな視点で楽しめるというのは、ただ本を読むより2倍以上美味しい気がするからである。
     腐女子脳は天性のものであり、才能が無いものには与えられないのかと思っていたが、これを読むとそうでもなく、読み方を知ることにより、腐女子視点を鍛えることができるとのこと。なんだそれすごい。天才か。

     この本はとある男性2人が、BLについて知りえたことを、一般人にも分かりやすく説明した本である。腐女子じゃなくても目からうろこだ。
     自分にとって必要なものを見つける力というか、自分と考え方が違う他人に対する優しさを鍛える意味でも良書。
     とりあえず誰が読んでも面白いんじゃなかろうか。
     (BL嫌いはやめといたほうがいいかもしれない)

  • やおいの時代からBLにワープしてきた私のような人間にも良書。BLの受容の仕方と萌えの構造が論理的に説明されてる。


    逆に、BLというものが自分の中で構造的に確立できているひとにはおそらく物足りないだろう。
    古典時代劇をBL的に再受容するあたりは本書の目玉のひとつなのだろうが、そんなこと、腐女子は誕生した瞬間からやっていたわけで。
    若かりし頃の大岡越前と伊織先生は最高にエロい。

    物語がポルノの様相を呈することと受容の仕方がポルノであることは天と地ほども違うのに、言葉足らずで乱暴にくくったらそら炎上もするわな、ってあたりもわかりやすい。

    そういえば、某声優の書いた文章のなかで「なぜBLCDに『喘ぎ』が必要なのか」というのがあったが、それについても本書は回答している。
    BLの性行為は生身の男性とは違った意味で恋愛の「ご褒美」であり、「喘ぎ」は行為中の承認行動である。とすればそれは、恋愛のプロセスの一つであって、欲動を煽る装置とは違った意味でまた必要なものだと解釈することが可能。

  • 最高の本。
    ああーこれは本棚に置かなければならない。
    素晴らしい一冊。
    巻末のガイドも素晴らしい。

  • この本、本当に素晴らしかった。男性ながらBLの楽しみ方を修得した著者が、男性目線で、どうBLを解釈するか、その世界に入っていくにはどういう思考ステップを経る必要があるのかを、具体例を用いて解説してくれる。私は女性だけど、もともとBL脳を持っていないし、商業BLは楽しめても、自分で妄想する力がないので、このサンキュータツオさんの解説でやっと色んなことが腑に落ちたし、腐女子というものを理解できた気がする。

    印象的な言葉も色々あって、「BLは知的遊戯」「妄想世界において性差や性別はひとつの属性にすぎない」「腐はいろんな人間関係を”恋愛”と解釈してみること」など、今まで漠然と「萌え」みたいな言葉で説明されていたことが、すごく理論立てて、そして、BL脳がない人間に向けて言葉を選んであって、非常にわかりやすかった。皆コレ読んだほうがいいと思う。

    ひとつ苦言を言うと、章の頭にサマリーのような、問題提起のような文が入っているのだけど、章のまとめは末尾についているし、かといって、導入にしてもダラダラ書かれていて理解しづらいし、あのコーナーには改善の余地があると思う。

  • あー!面白かった!
    そうなんですよ!関係性なの!絆なの!
    そこに私はいないの!もはや親!というか壁!
    思ってた以上にタツオさんが腐女子の見方をわかっていて、それをうまく言語化して説明していたので、「BLとは?」と興味はあるけどよくわからない……という人に突きつけたい一冊。頭っから「理解できないわ~ww」って人はとりあえず「触れない」「そっとしておく」ってことだけ覚えて帰って欲しい。
    私自身、腐男子って腐女子と全く同じ目線でBL見てるわけじゃないよね……と思っていたので、その目線も知れてよかった。ほぼ同じだけど、楽しめる領域に行くには幾つかの障壁を乗り越える。腐男子=ゲイじゃない(まあ中にはいるかもだけど)。
    春日さんがどんどん腐目線を理解していく(自分のものにしていく)過程も面白かった。おすすめされていた時代劇見てみたい。

著者プロフィール

1976年東京生まれ。漫才師「米粒写経」として活躍する一方、一橋大学・早稲田大学・成城大学で非常勤講師もつとめる。早稲田大学第一文学部卒業後、早稲田大学大学院文学研究科日本語日本文化専攻博士後期課程修了。文学修士。日本初の学者芸人。ラジオのレギュラー出演のほか、雑誌連載も多数。主な著書に『これやこの サンキュータツオ随筆集』『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』『ヘンな論文』『もっとヘンな論文』(以上、KADOKAWA)など。

「2021年 『まちカドかがく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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