チョコレート革命

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 329
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309025834

感想・レビュー・書評

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  • 『サラダ記念日』で一世を風靡した俵万智さんの第三歌集。
    28歳から34歳までの歌だそうです。

    恋(不倫の恋)の歌が多いのですが、旅した時の歌、父親への歌、17歳で亡くなった詩人の山田かまちへ捧げた歌もあります。

    でも、レビューを読まれた方が混乱しないように一番多い恋(不倫の恋)の歌を以下に載せます。
    不倫の恋は道徳的ではないですが、せつない恋ですね。
    ひしひしと伝わってきました。


    まず、タイトルとなった歌。
    ○男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす

    恋には、大人の返事など、いらない。君に向かってひるがえした、甘く苦い反旗。チョコレート革命とは、そんな気分をとらえた言葉だった。
    大人の言葉には、摩擦をさけるための知恵や、自分を守るための方便や、相手を傷つけないためのあいまいさが、たっぷり含まれている。そういった言葉は、いきてゆくために必要なこともあるけれど、恋愛のなかでは、使いたくない種類のものだ。そしてまた、短歌を作るときにも。言葉が大人の顔をしはじめたら、チョコレート革命を起こさなくては、と思う。
    ーとあとがきで俵さんはおっしゃられています。


    ○日曜はお父さんしている君のため晴れてもいいよ三月の空

    ○逢うたびに抱かれなくてもいいように一緒に暮らしてみたい七月

    ○地ビールの泡(バブル)やさしき秋の夜ひゃくねんたったらだあれもいない

    ○「泣くなよ」と言われて気づく今我が泣いているのは「わたし」のためと

    ○肩並べ新宿駅に向かう時もう少し続け信号の赤

    ○スリッパの右と左を間違えたような感じに響くサヨナラ

    ○君の好きな曲さえ知らぬ一人(いちにん)が君の新婦となる木の芽どき

    ○花札の絵柄のような春よ来い なんてことない日も悪くない

    ○抱きあわず語りあかせる夜ありてこれもやさしき情事と思う

    ○ブーゲンビリアのブラウスを着て会いにゆく花束のように抱かれてみたく

    ○妻という安易ねたまし春の日のたとえば墓参に連れ添うことの

    ○家族にはアルバムがあるということのだからなんなのと言えない重み

    ○焼き肉とグラタンが好きという少女よ私はあなたのお父さんが好き

    ○ポン・ヌフに初夏(はつなつ)の風ありふれた恋人同士として歩きたい

  • 大人の言葉には、摩擦を避けるための知恵や、自分を守るための方便や、相手を傷つけないためのあいまいさが、たっぷり含まれている。そういった言葉は、生きていくために必要なこともあるけれど、恋愛の中では使いたくない種類のものだ。

  • 恋ってどうしようもないな。
    女ってすばらしいな。

  • 夏休み-31

    激ヤバだ。激ヤバだ。自分の言葉がどんどん拙くなる。
    苦しい恋の歌に挟まれる、広い世界の土地模様。とにかく拙い私は語れないので、何首かひいて、勘弁。

    ------

    我はもう撃たれてしまいし鳥なれば君の視界の外に安らぐ

    故郷とは生地にあらず「家族」という花ことば持つ花咲くところ

    今日あったことを告げたき一日の終わりに通じぬ携帯電話

    シャンプーを選ぶ横顔見ておればさしこむように「好き」と思えり

    -----

  • サラダ記念日とは打って変わって、大人の恋。
    俵万智さんより好きになる歌人は、この先きっといないでしょうと思った。そう思わせる「ほんとう」の気持ちが、この歌集には込められていた。

    男ではなくて大人の返事する君にチョコレート革命起こす

    私もいつも、同じことを思っています。
    言葉が大人になってしまったら、チョコレート革命を起こす。私もその反旗運動に、参加させてください。

  • 愛することが追いつめることになってゆくバスルームから星が見えるよ

    この歌はずっとこれからも大好きだろうな。

    この気持ちを歌にして出版までしてしまう、俵万智は素直な人なんだなぁと思った。あとがきにもあるように

    「大人の言葉には摩擦をさけるための知恵や自分を守るための方便や相手を傷つけないためのあいまいさがたっぷり含まれている。そういった言葉は生きていくために必要なこともあるけれど、恋愛のなかでは使いたくない種類のものだ。そしてまた、短歌を作るときにも。」


    好きな歌
    地ビールの泡(バブル)やさしき秋の夜ひゃくねんたったらだあれもいない

    友だちに戻れないかもしれないと思えば寂し口づけなども

    水密桃(すいみつ)の汁吸うごとく愛されて前世も我は女と思う

    別れ話を抱えて君に会いにゆくこんな日も吾は「晴れ女」なり

    もう二度と来ないと思う君の部屋 腐らせないでねミルク、玉ねぎ

    ゴミを拾い家計を助ける子どもらのなんなんだろうこの明るさは

    かつて会いかつて別れし我らゆえ優しく飲める夜と思えり

    思いきり見つめることの言い訳の小道具となる日もあるカメラ

    抱きあわず語りあかせる夜ありてこれもやさしき情事と思う

    一枚の膜を隔てて愛しあう君の理性をときに寂しむ

  • 私はサラダ記念日の方が好き

  • 2017/11/25 読了。

  • 俵万智ファンなので★5

  • 優等生と呼ばれて長き年月をかっとばしたき一球がくる

    「勝ち負けの問題じゃない」と諭されぬ問題じゃないなら勝たせてほしい

    「泣くなよ」と言われて気づく今我が泣いているのは「わたし」のためと

    俺でなくぼくでもなくて「ここにいるこの子」と呼んでみたい、自分を

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著者プロフィール

1987年の第1歌集《サラダ記念日》はベストセラー。歌集に《かぜのてのひら》《チョコレート革命》《プーさんの鼻》《オレがマリオ》《未来のサイズ》《アボカドの種》、評伝《牧水の恋》、エッセイ《青の国、うたの国》など。2022年、短歌の裾野を広げた功績から朝日賞を受賞。読売歌壇選者のほか、宮崎で毎年開催される高校生の「牧水・短歌甲子園」審査員もつとめる。

「2023年 『旅の人、島の人』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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