狼煙を見よ:東アジア反日武装戦線“狼"部隊

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309026015

感想・レビュー・書評

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  • 1969年に自らの日常を描いた「豆腐屋の四季」でデビュ-した松下竜一さんの書かれた「狼煙を見よ」河出書房新社発刊 今こそ、読んでいただきたい一冊です。隆祥館書店にて発売中です!!|二村知子 隆祥館書店
    https://note.com/ryushokanbook/n/n5f47d4e22dc9

    松下竜一「狼煙を見よ」東京・北(写真で見る文学周遊) - 日本経済新聞(2022年3月26日)
    https://www.nikkei.com/article/DGXZQOFH212Q00R20C22A3000000/

    狼煙を見よ :松下 竜一|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309026015/

  • これは、社会変革を期するすべての若者がその教訓を得るためにも、必読とすべき一冊だと確信する。

    僕は20代なので当時のことは実感としては全く知らない。
    知っているのは、あさま山荘事件とか、その前のリンチ事件とか、日本赤軍のハイジャックとか、なんとなく”行き過ぎた奴らがいた”くらいのイメージだけ。正直、東アジア反日武装戦線など聞いたことさえなかった。
    そして、どんな大義があるにせよ、武装闘争は否定されるだろうと素朴に思っていた。

    この本を手に取ったきっかけは、” 狼を探して”というドキュメンタリー映画に関しての話題から、その事件や彼らの存在を知って。映画自体は見逃してしまったが、少し調べると彼らの思想自体は至極真っ当で自分が最近考えていたこととも近く、”どこで誤ったのか”という問題意識で読み始めた。

    読後の結論として、やはり犠牲者をも出した彼らの爆弾闘争という手段自体は強く否定されるだろうことは変わらない。しかしそれと同時に、自分の当初の問題意識の素朴さに、打ちのめされた。
    彼らが命を賭けて否定しようとした”日本人であるという特権の否定”は、”学生である特権の否定”を貫こうとした全共闘運動を、その至純さの点でさらに突き詰めた結論であり、そしてそれは我々すべての日本人がどこかで想いを馳せながら、目を瞑っているところに正面から向き合った結論なのだということが痛いほど伝わってきた。
    そして彼らが、爆弾闘争で人的被害を出した時に感じた悔恨に、その思いを強くした。彼らはひどく正直、つまりこの狂った世界を生きるには正直すぎたという点で狂ってしまっていたのだと、思い至らずにはいられない。

    いま、歴史の暗部には自虐史観などという訳の分からない妄言で蓋がされようとなっており、小池都知事は9.1の追悼声明を出さず、シリアやミャンマーで起こる悲劇を知りながら何もせず、途上国への経済支配を強めようとしているこの国で、わたしたちは何をしなければならないのだろうか。
    時間が経過し、被害にあった無実な市井の人々の死という忘れ得ぬ重みとは独立してこの事件を総括できる時が今来たのではないだろうか。彼らが何を志向し、どこで間違えたのか。松山竜一さんの煩悶する姿に己を重ね、悩みながら、向き合わなければならないのではないかと思う。

  • 桐島聡逮捕で興味を持ち読み始めた。
    全共闘運動、そこから続く過激派の時代の空気感の中、
    彼らは、日本帝国主義、企業の植民地主義的な海外進出、
    朝鮮半島への経済支配、アイヌなど少数民族征服。
    日本人の「原罪」を抱えている以上、闘争しないと
    いけないと考える。

    そこから対象企業の爆破という論理に至るのだが、
    三菱重工ビル爆破事件では、
    爆弾の威力がよく分からない上、予告電話をして
    人的被害を防ごうとしているが、それが5分前という
    事実上、避難できないタイミングであることなど、
    大まじめに考えている割に、計画にずさんさが目立つ。

    天皇のお召し列車爆破を狙った「虹作戦」にしても
    爆破ケーブルを時間までに設置できなかったばかりか、
    狙っていた線路がお召し車両が通過しない線路だとか、
    ちぐはぐさが目立つ。

    さらに、逮捕に備えて、青酸カリをカプセルで
    持っているのに、その日に限って忘れたり、
    飲もうとして婦警に見つかって手を払われたり、
    結局、1人が成功した他は死ねなかった。

    獄中でも、ほぼ全員が自供してしまった挙げ句
    救援会の佐々木則夫の兄から自己批判を迫られたり、
    拘置所で点呼に反抗するなど「闘争」を繰り広げたり
    するにあたっては、何か漫画的なものまで感じてしまう。

    目的が正しければ、手段は正当化されるという
    理屈なのだろうが、無関係で亡くなった人たちは
    浮かばれない。

    松下竜一氏は市民運動に携わっていたため。
    かなり同情的なスタンスだが、彼らに共感を抱くことは
    ついぞできなかった。

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著者プロフィール

歌文集『豆腐屋の四季』でデビュー。豆腐屋を14年間続けた後、1970年、"模範青年"を脱皮して、作家宣言。生活(いのちき)の中の小さな詩を書き綴ったエッセイと、重厚な記録文学を書き続ける。「暗闇の思想」を提唱して豊前火力反対運動・環境権裁判を闘い、『草の根通信』を31年間発行、反戦・反核・反原発の闘いに邁進する。その闘いの原点は『豆腐屋の四季』にある。弱い人間の闘い方とは、局面負けたとしても、自分を信じ、仲間を信じ、未来を信じることである。3.11福島原発事故以後、若い世代にも「暗闇の思想」が読み直されている。「だれかの健康を害してしか成り立たぬような文化生活であるのならば、その文化生活をこそ問い直さねばならぬ」

「2012年 『暗闇に耐える思想 松下竜一講演録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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