辺境の路地へ

著者 :
  • 河出書房新社
3.47
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本棚登録 : 254
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309027265

感想・レビュー・書評

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  • この間読んだ「路地の子」はなかなか衝撃的でした。被差別部落と食肉の関係を身を持って書いた自伝的なルポで、ある意味気分が悪くなるくらいに赤裸々に書かれた本で、作者を好きになれずどちらかというとそのクズっぷりに嫌気が差すほどでした。でも読み終わってみるとその飾らないクズっぷりが妙に気になる。そしてこの本を読みました。
    これほぼアウトロー私小説と言ってもいいのではないかと思います。少なくともルポタージュではないです。
    しかしそういうカテゴライズが無粋に思わせる野蛮な魅力が有ります。それが色々な土地で地べたに這いつくばって生きている人とのやり取りのリアルさを増幅し、無頼な小説のようなテイストを醸し出しています。
    章によって僕は評価が異なります、好きな話は胸に迫ったし、こいつムカつくと思わせる章も有りました。なんだろうな、好きじゃないけどなんだか気になるって感じでしょうか。

  • 国内各地の旅レポート。ただ、タイトルにも「辺境」とあるように、あまり一般的に有名なところではなく、八戸の飲み屋、北海道の過疎化が進んだ漁港町、八甲田山の幽霊伝説がある場所、福井の原発PR館、その昔売春島として有名になった三重県のW島、神戸の風俗街他、での著者の滞在記となっている。

    多くは著者と、風俗嬢を含む現地女性との交際エピソードが入ってくるのだが、既に地元で同棲しているにもかかわらず、取材と称して外出した先で、いきなり現地女性と同棲を始めて帰らなかったり、沖縄の土産物屋の女主人といい雰囲気になったりと、著者のろくでなしっぷり(笑)も良くわかる、面白いエッセイとなっている。

    なお、上記W島については、古くは特殊マンガ家の根本敬著の「因果鉄道の旅」でも紹介されていたり、高木瑞穂著「売春島」では、その成り立ちから終焉までを詳細に記してあるので、ご興味のある方はそれらを参照ください。

  • その土地土地の風俗等について徒然なるままに書き綴った不思議なノンフィクション。というよりはエッセイ。時間潰しには悪くないが。。。

  • あとがきによって、
    非常に後味が悪いものになった。
    しかも正月から読む内容では無かった。
    しかしながら、人間何とか生きていけるもんだなと、
    意外にも勇気をもらった。
    明日から新年最初の仕事が始まる。
    嫌なことや辛いことがたくさんあるだろうが、
    それでも人間何とか生きていけると思いながら、
    生きていけそうだ。

  • 平成も終わろうとしているいま「昭和(それも高度経済成長期前夜くらい)」感丸出しな雰囲気が良い。『日本の路地を旅する』のような気骨さはなく、下世話な話題が多いが上原善広氏の程よい緩さが出ている。

    描かれる世界はなんとも言えぬもの哀しさが漂い陰鬱感はあるものの、中上健次や西村賢太が好きな人には息抜きにさらっと読めて楽しめる本だ。

  • ここでの「路地」とは、カミングアウトした著者が呼んできた部落ではなく、旅先の鄙びた界隈、三業地の露地裏、一般に言うところの路地を指す。僕自身、そうした場末にとても魅力を感じていて、つげ義春の『貧困旅行記』を読んだりしては、若いころにもっと訪ねておけばよかったと悔いている。昭和の原風景であって、今やエキゾチックにさえ思える。ここに載る八甲田山、酸ガ湯温泉、真栄原には寄っているが、まあ通り一遍の物見で、やり手婆や立ちんぼど掛け合うなんぞ手だれた真似には及ばない。面白いくない旅ばかりと著者は振り返るが、観光ならぬ旅とはかようなものであろうにと憧れる。

  • 被差別部落を扱ったノンフィクションを書いてきた上原氏が、取材などの旅をテーマにして綴ったもの。
    氏のこれまでの著作では「路地」は被差別部落のこと。本書も全国の旧部落を回ったルポかと思いきや、外れた。
    場末というか、ひなびきったというか、普通に生活していると立ち入ることすらない、おどろおどろしい世界。そこで出会った世の中の不幸を背負いこんだような女性たち。著者の赤裸々の告白。なんとも物悲しく、期待したテーマではなかったが、不思議と読後感は悪くなかった。

  • ウシジマくんぽい雰囲気。好んでおばあちゃんがいる風俗店に行ってみた話が多い。

  • 八戸の女
    怨念のニレ
    八甲田の幽霊
    酸ヶ湯滞在記
    定宿
    原発PR館
    殺人のあった部屋
    温泉芸者
    売春島
    新世界の女
    神戸福原界隈
    白系日本人
    真栄原吉原界隈
    やちむん
    北国逃亡

  • 八戸の女の話はつげ義春の貧困旅行記の最初の話のオマージュか?
    あの頃は自分はおかしかったとか言ってこんなのが物語として消費されるなんて女の立場からしたらこのやろうと思うけどこれでサッと話が終わる感じがめちゃくちゃ面白い、こうゆうなんでもない普通の人の1エピソードを連ねるのが社会学なのかな
    一期一会としか表現できないのがはがゆいけど、こうゆうう、儚いでもないけど2度と会えないような会う気もないような人っていうことにすごく惹きつけられる

    最後の方クズ加減に拍車がかかってびっくり
    子供おるんかい

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著者プロフィール

1978年、大阪府生まれ。大阪体育大学卒業後、ノンフィクションの取材・執筆を始める。2010年、『日本の路地を歩く』(文藝春秋)で第41回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年、「『最も危険な政治家』橋本徹研究」(「新潮45」)の記事で第18回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞大賞受賞。著書に『被差別のグルメ』、『被差別の食卓』(以上新潮新書)、『異邦人一世界の辺境を旅する』(文春文庫)、『私家版 差別語辞典』(新潮選書)など多数。

「2017年 『シリーズ紙礫6 路地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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