幽玄F

著者 :
  • 河出書房新社
3.88
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本棚登録 : 827
感想 : 101
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309031385

感想・レビュー・書評

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  • 「三島由紀夫×トップガン」

    佐藤究作品はハズレがなく、今作もまた素晴らしかった。
    文章表現による戦闘機の操縦描写は美しく、荘厳さすら感じ、戦闘機乗りの主観には驚くべきリアリティがあった。

    しかし読後に抱いた感情は、よくわからない。無色透明な・・・なにか。
    心に波立つざわめきはあったが、形を成さなかった。

    しばらく放置して反芻すれば明瞭な形が浮かんでくるだろうかと2ヶ月ほど置いてみたが、変わらない。
    そんな不思議な読書体験だった。

    とはいえ、端的に面白かったので、ぜひ読んでみてください。そして、感想を教えてください。

    • yukimisakeさん
      三島由紀夫とトップガン!!
      めちゃくちゃ面白そうですね(≧∇≦)予約してみます。待ち人が凄そうですけど…笑
      三島由紀夫とトップガン!!
      めちゃくちゃ面白そうですね(≧∇≦)予約してみます。待ち人が凄そうですけど…笑
      2024/01/30
    • Tomoyukiさん
      中盤まで最高にカッコよかったです!
      中2心を揺さぶられますw
      ぜひ読んでみてください。
      yukimisakeさんの感想が今から楽しみです。笑...
      中盤まで最高にカッコよかったです!
      中2心を揺さぶられますw
      ぜひ読んでみてください。
      yukimisakeさんの感想が今から楽しみです。笑

      あと、yukimisakeさんのコメント欄のみなさん、テンション高すぎて最高ですね。笑
      2024/01/30
    • yukimisakeさん
      中2心を揺さぶられたい!!笑
      待ち人4人なのでそう待たずに読めそうです(^^)
      Tomoyukiさんのレビューは毎度読みやすい文章量でがっつ...
      中2心を揺さぶられたい!!笑
      待ち人4人なのでそう待たずに読めそうです(^^)
      Tomoyukiさんのレビューは毎度読みやすい文章量でがっつり鷲掴みにされるので凄いなと毎回思ってました。今回も音速で読みたい!となりました(≧∇≦)

      皆さんいつもフルスロットルでお相手して下さるので有難いです笑
      大抵が本の内容からズレるんですが笑
      2024/01/30
  • 飛ぶことに取り憑かれた天才パイロットの数奇な人生を描く。それだけ言えば、大空を駆け巡る浪漫あふれる激熱ストーリーを想像するだろうが、本作はちょっと違う。確かに急上昇、急展開はあるものの、そこは佐藤究さん得意のアンダーグラウンドな世界に飲み込まれるようなパートも有り、らしさが感じられて良かった。
    総評として、主人公の性格が掴みにくいのか、そもそも読み込みが浅いからか、作品が伝えたいことがなかなか汲み取れず、感想をうまくまとめることができないまま、書いては消してを繰り返している。
    積読作品が、それなりに溜まってきたので、落ち着いたら頃にもう一度読み、改めることにする。

  • ★5 人生丸ごと戦闘機に魅了された男… 変態的な価値観と真剣な愛情があまりにも怖く美しい #幽玄F

    ■きっと読みたくなるレビュー
    空の青さをみると、心が落ち着きますよね~
    河出の文藝夏号で掲載されていたし、爽やかな空を駆け抜けるような、純文よりの作品かなーと思ってました。

    実際に読んでみると、文章や表現の美しさや構造美は純文学を感じさせつつも、戦闘機萌えな主人公と、想像だにできないストーリー展開が面白いドエンタメ小説でした。いやー、面白かった!

    物心ついたときから飛行機に夢中な主人公。本書では彼の人生が丸ごと描かれてゆくのですが、実はなんとも物悲しい物語です。

    何かを好きになること、夢中になることは、人に生きがいや希望をもたらしてくれます。彼も飛行機乗りになるため、並々ならぬ努力を重ね、夢を実現していく。それは晴れた青空のように美しい。

    しかしその過程と現実の中、人との出会いや、時には挫折しながら自らの人生と飛行機を重ねてゆく。ただの飛行機乗りの話ではなく、人間であれば誰しも一度は悩む「何のために生まれてきたのか」という自己の存在証明に切り込んでいくのです。

    それは決して大げさに描かれるのではなく、でも血の色よりも濃い赤色で目の前を広がっていく。飛行機オタクの変態的な価値観、真剣な愛情があまりにも怖い。

    特に終盤クライマックスのスピード感とアクションシーンの筆致に、完全に心を奪われてしまいました。可憐すぎるのよ…こういう文字の連なりを体験できるのが読書の魅力なんですよね。素晴らしかったです。

    ■きっと共感できる書評
    私はいつも強迫観念に囚われている。目立った強みや特技も能力もなく、社会に対して目立った成果を出せておらず、このままの人生で良いのかと悩むことも多々ある。

    しかし個人の人生は長いように思えるけれど、世の中の時間は永遠に流れ続け、宇宙は無限に広がっている。そう考えると、革命めいたことをする必要はなく、実現できることでいいから、何かに貢献できるだけでも十分かもしれない。

    何事もこころ持ち次第で、ふるまいを優しく、にこやかに生きていければいいなと思いました。

  • 今はまっている佐藤究さん「幽玄F」今現在の最新作。

    三島由紀夫に挑んだ作品との事。
    自分は三島文学は「金閣寺」「潮騒」「仮面の告白」位しか読んだことはないが、「盾の会」を結成し市ヶ谷駐屯地での最期の壮絶な覚悟の死はあまりにも有名で強烈。
    色んな三島由紀夫に関する書物、ドキュメンタリー等はだいぶ観たり読んだりしてきた。
    数年前に東大安田講堂にての三島vs東大全共闘のドキュメンタリー映画を見た時もその堂々たる姿と若い学生のエネルギーを否定しない大人の慣用力が自分を惹き付けた。

    その三島由紀夫にチャレンジとは。
    三島文学は三島由紀夫本人の生き様が作品に極度に過激に融合しつつ、最期の強烈な「自死」も意識の中で一揃えである文学と自分は認識している。
    その時点で弱冠の不安に似た恐怖を感じさせられる。佐藤究さん、この先何処に向かうのだろうか?と思いつつこの作品を読んでいた。

    作品は「金閣寺」と似た作品。
    金閣寺の持つ「美」に取り憑かれた男が僧になりその「美」に魅了され、最終的に自己欲求に近い形で金閣寺を放火してしまう。

    今作品はそれが「空」に取り憑かれた男が主人公。
    航空自衛隊に入隊、この辺りも三島由紀夫が絡んでいたのかな?
    F35に搭乗し「護国とは」「自分とは」という問いに向き合っていた。

    「蛇」というキーワードが良く出てきたがここだけがしっかりと理解できなかった。
    「死」の象徴という読み方であっているのか?「空の青は「死」の補色」という表現もありナーガという神も出てきて混乱している。
    この作品の核の部分だと思うのだが
    しっかりと見えていない。この感想を書いた後、他の方々のレビューや作者のインタビュー等を読んで考えてみたい。

    「Ank」「テスカトリポカ」等の知性と狂気の入り交じった作品とは違うテイストの作品だった。
    やはり自分は佐藤究さんの描くその知性と狂気の入り交じるものに取り憑かれている。

    次は「爆発物処理班の遭遇したスピン」を読んでみる事に。

  • 「三島由紀夫をモチーフにした小説」とのことだったので、氏の小説は「金閣寺」しか読んだことのない僕には理解が難しい部分がたぶんにあるんだろうと覚悟の上で読んだ。

    やはり消化不良の感が…。
    文章は平易でスジは理解しやすい。
    ロードノベルとしてとても楽しく読ませていただいた。

    ただ、全体的に抑制的な語り口も相まって、最後まで読んで自分がたどり着いた所がどこなんだかわからない。

    三島文学に馴染んだ人には響くものがあるんだと思う。そこがわからないのが残念。
    この小説の主人公とおなじ読みの名前やすながとおるが登場する「豊饒の海」を読んでみたいと思った。

    ♫Letting Go(feat.Jenna G)/Goldie(2009)
    ← 刊行にあたりSpotifyに公開された、佐藤さんやデザインを手掛けた装丁家・川名潤さんらによるプレイリストから。

  • 空に、空を支配する重力・Gに、そして戦闘機に魅了され取り憑かれた天才パイロットの透

    一言で言えば「戦闘機バカ!」

    一般的には理解されにくい思考かもしれないがバカもここまで追求すればカッコ良すぎる!


    空をあおぎ、息が切れるまで走って飛行機を追いかけた少年時代から、戦闘機を操縦したいが為だけに自衛隊へ入隊
    自衛隊を辞めた後もタイ、バングラデシュで飛行機に関わる人生に
    そして、やはり最後は戦闘機へ・・・


    戦闘機の最大の魅力はなんだろうか?
    やはりその速さだろうか?

    亜音速ー遷音速ー音速ー、そして超音速
    音速を超えると衝撃波とソニック・ブームを置き去りにする
    速度はマッハ1.0、マッハ1.1、マッハ1.2、マッハ1.3…
    音速(マッハ1.0)は時速1224km
    一体どれぐらい速いのかもうわからない!

    ちなみにウルトラマンはマッハ5で空を飛ぶ
    時速1224km×5=時速6120km

    いくら速い戦闘機でもウルトラマンには敵わないということはわかったw

    さらにウルトラマンは時速450kmで走り、200ノットで泳ぐこともできるという
    そして、一番速いウルトラマンはウルトラマンマックス!

    なんだか話がそれてきたぞ…w

    ウルトラマンの話はさて置き、音速の世界へCleared for takeoff!

    • 1Q84O1さん
      ユッキーさん、ウルトラマンについていろいろ検索してみましたよw
      マジ速いっす!w
      それはさて置き、今作はミステリーではないです
      これは何てい...
      ユッキーさん、ウルトラマンについていろいろ検索してみましたよw
      マジ速いっす!w
      それはさて置き、今作はミステリーではないです
      これは何ていうジャンルなんだろう…(^.^;
      わかんないです!ごめんなさーい!w
      2023/12/07
    • 1Q84O1さん
      土瓶師匠
      そうそう主人公がウルトラマンに魅了されて…、ってウルトラマンは出てこんわーい!Σ(゚Д゚)
      そういう話ではないです!
      土瓶師匠
      そうそう主人公がウルトラマンに魅了されて…、ってウルトラマンは出てこんわーい!Σ(゚Д゚)
      そういう話ではないです!
      2023/12/07
    • 1Q84O1さん
      ほん3さん、リタイアしちゃいましたかw
      私の感想で収穫できたのはウルトラマン情報だけですね…
      ごめんなさーい!w
      ほん3さん、リタイアしちゃいましたかw
      私の感想で収穫できたのはウルトラマン情報だけですね…
      ごめんなさーい!w
      2023/12/09
  • 最新鋭の戦闘機F35…かっこよすぎぃ!!!燃料犠牲にして垂直離陸とかロマンの塊!マッハ1.6とか想像もつかない世界。Gに殺されそう…。
    1Qさんのレビューで書かれてましたが、そう思うとウルトラマンて凄い…。

    お世話になっているtomoyukiさんのレビューを拝見して「三島由紀夫×トップガン」というご紹介に読みたい熱がマッハ1.3で駆け巡り拝読。
    のっけから戦闘機すげー!という小学生みたいな感想から始まりましたが決してミリオタ的な作品ではありません。

    まずこの装丁が素晴らしすぎます。書店で見かける毎にこの文字の歪みかっこいいなあと思っていたのですが、読み終えるとこの装丁の意味する所が漸く理解出来て舌を巻いた次第。
    ブックデザイナーって凄い才能だなと尊敬すると同時に本の装丁だけを集めた写真集が欲しいと常日頃思っていますがそれはさて置き。

    最初はトップガンのサントラをガンガンにかけつつ読んでいたのですが途中から「ちょっと待てよ、これ文学じゃないの?」と思い至り音楽をストップ。
    しかし最後にまた血が沸騰してきて『デンジャーゾーン
    』をかけ直すという、なんともジャンルの難しい作品でした。

    幼少の頃から飛行機、というよりは空に憧れを持っている易永透。
    この名前がにくくて三島由紀夫さんの『天人五衰』の登場人物を模したもの。
    飛行機が飛んでくると何もかも忘れてその姿を追いかけて走って行ってしまう情熱。
    パイロットになる為にスマホもゲームもしない透。おかげでクラスでは浮いているけどそんなのは些末事。
    何故なら透にとってはパイロットになって空を自由に駆けるのが全てだから。

    どことなく『風立ちぬ』『紅の豚』が脳内に浮かびますが、後々に本作ではこの空を自由に駆けまわるという夢は呪いに近いものにも思えて来ます。

    それを思わせる私が好きなエピソードがあります。唯一の友人、溝口が入院中に絵を描いていたのですがどうしても空の色と同じ絵具が見つからない。
    透はそれを探す為に美術教師に相談をしに行きます。絵具自体は見つからないのですが、ここで透は「心理捕色」というものを知ります。
    赤い円を1分見続けた後に黒の十字を見ると、そこにはない筈の青緑の円が十字の周りに残像としてぼやっと見えて来る、という現象なのですが教師は君たちの探している空の色というものはこういう事なのかも知れないと告げます。

    これをとある場所で透は体感するのですが「空の青とは死の捕食だ」と思い知らされます。
    しかし透は鋼の意志で見事、航空自衛隊に入隊。
    戦闘機乗りを目指します。

    ここで何度も出て来る「護国」という言葉。
    『豊饒の海』を脱稿したその日、陸自の市ヶ谷駐屯地で割腹自殺した三島由紀夫さんに思いを馳せて、佐藤さんが丁寧に描いている事が感じられます。

    透が長年魅入られている空に本当の自由はあるのか。
    透は音速のその先に何を見つけるのか。

    彼の情熱と夢への呪い。影の主役の戦闘機を従えての全てを賭けたラストフライトが本当に胸熱で、読み終えた後に気づけばF35のデモンストレーションの動画を小一時間程見続けてしまい、そうだエースコンバットをプレイすれば今なら天才パイロットになれるかも知れない!
    とゲームソフトを探しましたが、既に売っていた事を思い出し絶望しました。

    ラストのシーンも私には胸を打つ程に美しく、私もベランダから空を見上げようとしたら雨が降っており再度の絶望。
    どうやら私は空を飛ぶ事を神に許されていないようです。

    『テスカトリポカ』でも思ったのですが、この深い物語を上手く表現できないです。佐藤さんの作品は4作目ですが、常に日本人らしい文学の香りがしている気がします。

    さて、本書を読み終えて、10年前の記憶が蘇りました。
    当時友人の叔父さんが自衛隊の結構地位の高い方でして、そのコネで自衛隊基地で行われた航空ショーを、部外者立ち入り禁止の本部の屋上から鑑賞できる、という、世の中の戦闘機マニアの方に聞かれたらぼこぼこにされそうな特別待遇を受けた事がありました。

    何も遮るもののない青い空にブルーインパルスが轟音を上げて駆け巡る姿は今でも鮮明に記憶に残っています。
    本当にかっこよくて無心になって目をキラキラさせて見ていたと思いますが、私はそれでも空に憧れを持つ事はありませんでした。

    ですがその時の光景を思い出すと作中に出てきた心敬という歌人の詩もなんとなく分かる気がします。
    最後にそれを置いて終わりにしようと思います。

    『心持ち肝要にて候。常に飛花落葉を見ても。草木の露をなかめても。この世の夢まほろしの心を思ひとり。ふるまひをやさしく。幽玄に心をとめよ。』

    『大虚(おおぞら)を求めてなおも見つからず。心持ち肝要にて候』

    • yukimisakeさん
      HENTAI(編隊)飛行だー!tomoyukiさんとHENTAI飛行ー!(( ⊂=( ^ω^)=⊃ )) ブーン

      台無し!!笑笑
      HENTAI(編隊)飛行だー!tomoyukiさんとHENTAI飛行ー!(( ⊂=( ^ω^)=⊃ )) ブーン

      台無し!!笑笑
      2024/03/18
    • Tomoyukiさん
      ココがウワサのHENTAIの集まるコメント欄か….w
      ココがウワサのHENTAIの集まるコメント欄か….w
      2024/03/18
    • yukimisakeさん
      そんな観光名所みたいに!笑
      さあ、他人事じゃありませんよ、早く脱いで!
      ( 。・ω・。)ノ 凸ポチッ♪デンジャーゾーン
      そんな観光名所みたいに!笑
      さあ、他人事じゃありませんよ、早く脱いで!
      ( 。・ω・。)ノ 凸ポチッ♪デンジャーゾーン
      2024/03/18
  • 冒頭からすんなり惹き込まれた。
    そして、ずっと最後まで穏やかな物語の世界の中に包みこまれた印象でした。
    空を美しく飛ぶことを追い続けた男の一生、感動モノでした。

  • 青いブックデザインが印象的ですね。

     この著書を手にした時に、何故本書帯裏に『日本の戦後精神の支柱「三島由紀夫」に挑んだ』と書いているのかでした。
     読了した今は、一筋縄では括りきれない深さを感じます。決してミリオタ小説ではありません。

     雑学的に言うならば、戦後の日本が、米国の占領政策で失われた産業に関係があるのかと思いました。戦災で軍需産業はなくなり、復興時に造船の民営で世界一の造船国になり、鉄道輸送は国有で残りました。しかし航空機は自国で製造出来なくなり、旅客機等は米国に発注しています。国産旅客機が空を飛ぶなんて、ニュースになるほどの珍しい報道が現状です。かつて戦闘機の一流設計者は、国鉄に再就職して鉄道の開発者になり、「夢の超特急」を生み出した。著者は、それについて一切触れていないが、僕のニュアンスを汲み取ってください。

    主人公易永透は、真言仏教のお寺に生まれた境遇で「ただ私は戦闘機という機械に乗りたかっただけで、その戦闘機の飛ぶ空が〈護国の空〉だったのです」と書いています。巻末の謝辞に、三島も超音速戦闘機の搭乗体験記「F104」もあり、それなら、透は「正直なところ、私には日の丸も国家も背負えません」と書いて、「自由に空を飛んだことなど、俺は一度もない」という記述は佐藤氏が戦後の三島の憂いを代弁しているかのように思いました。しかし透は、あくまで本当の青い空と地上では決して体感することが出来ない世界観「生と死」の狭間で、超音速で飛ぶ快感を知ってしまったから、少年の頃の夢を諦め切れなくて離陸はあっても着陸は考えなかったのだと…。

    三島文学思想が美の描写ならば、何とも表現し難い佐藤究流に融合したのではないかと解釈すると、この小説は興味深い。

     人間のバーディゴ(空間識失調・失神します)の限界は9Gだと言われています。音速飛行とは、音の速さを超えるということ。当然、超音速のパイロットは、搭乗している戦闘機の爆音は聞こえない。コックピットは静謐に包まれ無線の交信音のみ、視覚では絵具では再現できない青い空。操縦している者のみが体験できる世界観でしょうか。
     読書は楽しい。(詳しくは著書を!)

     ずいぶん端折って書いていて説明不足は否めないので、意味を理解し難い部分は著書をお読みになってください。
     小説の解釈は人それぞれで、どなたの書評も参考にしていません。若干の引用はありますが、筋書きは書かなかった。
    勿論著書には、最新鋭の音速戦闘機の性能の説明が多く散見されているが、佐藤究氏は、ミリオタ小説を書くほどの愚は侵していない。
    .
    「本書帯より一部抜粋」
    空と血と。
    天才パイロットが戦闘機Fと共に辿る、数奇な運命とはーーー。
    日本の戦後、そして世界の現在を問う。

  • 読書備忘録814号。
    ★★★★。

    ちょっとだけ未来の物語。
    主人公易永透。飛行機に魅せられた少年。
    両親の離婚をきっかけに祖父に預けられる。祖父は真言宗の僧侶。
    友だちの溝口に誘われて三沢基地の航空ショーに。
    そこで、重力に逆らう圧倒的な力!戦闘機を目の当たりにし、航空宇宙自衛隊(未来)に入隊する。
    透は類まれな耐G能力を発揮し、25歳でイーグルドライバー(F-15乗り)となり、2026年26歳でついに第5世代戦闘機F-35Aのパイロットとなる。

    物語の前半は、透の自衛隊での活躍という感じの物語。
    タイでの訓練。米国でのF-35B空中給油訓練など。
    しかし、透には決定的に欠けているものがあった。護国の精神。
    自衛隊に所属していながら、その目的は護国ではなく、純粋に世界で最も過激な航空機に乗ること。
    そんな透に不幸が降り掛かる。
    米国訓練中、機体故障により低酸素状態でのブラックアウト寸前の状態に。
    そしてそれはイップスのように音速を超えると襲ってくる症状となってしまった。もう自衛隊にいる意味はない。自分の乗れない戦闘機を近くで見ていたくない。

    物語の後半は、透が自衛隊を辞めたあとタイ、バングラディシュでローカルな航空業界で働きながら生きる姿を描く。
    ギャンブルで借金まみれになった豪州空軍のパイロットが、借金返済の為にF-35Bで中国に亡命する。
    途中、バングラディシュの密林に不時着したことで透の歯車が狂いだす・・・。
    透はF-35Bを飛べる状態にして空へ。マッハ1.6。音速を超えてもあの症状は表れなかった!
    そして透が目指した方向は・・・。

    いやはや、また作者らしい作品でした。内容の消化にめちゃくちゃ時間が掛かる!
    思想として登場する三島由紀夫。彼の政体、国体の持論。平和憲法に対する考え。そして自衛隊に対する考え。透はタイで、とある事件で三島の思想に触れる。
    加えて、幼少時代から中国密教を根源とする真言宗の教えに触れてきたバックグラウンド。
    その結果として物語のエンディングが!と、思いがちですが、多分透は単純にF-35Bを克服したかっただけでしょう!
    ただ、向かった先が問題で、彼の地で彼は何をしようとしたのか・・・。

    テスカトリポカ(ポカリスエットとも言う)に通じる精神世界が根底ある物語で読むのに疲れました!
    ただ、F-35Bのフライトシーンはやはりミリタリーオタクのシンタロウとしてはサブイボでした。

    日本もF-35B部隊を新田原に新設する予定ですし、ヘリコプター搭載型の護衛艦いずもに搭載して空母運用する日も近いでしょう。
    いずも、かが(いずも型2番艦)は太平洋戦争時の最大級の空母赤城、加賀とサイズはほぼ一緒です。空母運用できない訳がない。
    ただ、甲板がSTOVL(ほぼ垂直離着陸)するに際しての耐熱性がないので改修が必要です。
    うんちくが止まらなくなるからやめる!

    最後に、トップガンでF-14(第4世代)がSu-57(第5世代)モデルの戦闘機に追いかけられますが、百万が一にも勝てませんね。4.5世代のF/A-18(トップガンで主人公たちが乗ってたやつ)でも勝つのは難しい。

    さあ、戦闘妖精雪風の最新刊も借りてきたし、空の物語を堪能することにしよう!

    • shintak5555さん
      ユキさま
      ユキさまのおかげなんですよ、これ読んだの。レビュー読ませて頂いて!
      ブクログで読書の世界が広がったことは間違いない!
      ユキさま
      ユキさまのおかげなんですよ、これ読んだの。レビュー読ませて頂いて!
      ブクログで読書の世界が広がったことは間違いない!
      2024/03/31
    • yukimisakeさん
      え!そうだったんですか?!お役に立てて嬉しい!ありがとうございます(о´∀`о)
      こちらもシンさまのお陰で月村さんとか雪風も読めるし広がって...
      え!そうだったんですか?!お役に立てて嬉しい!ありがとうございます(о´∀`о)
      こちらもシンさまのお陰で月村さんとか雪風も読めるし広がってます♪

      あと、銭湯行くとシンさま思い出します笑
      2024/03/31
    • shintak5555さん
      ユキさま
      銭湯♨️はサイコーっす!
      銭湯と、ビールネタと、実際に読んだ本の実物ネタはインスタに!
      ユキさま
      銭湯♨️はサイコーっす!
      銭湯と、ビールネタと、実際に読んだ本の実物ネタはインスタに!
      2024/03/31
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著者プロフィール

1977年福岡県生まれ。2004年、佐藤憲胤名義で書いた『サージウスの死神』が第47回群像新人文学賞優秀作となり、デビュー。2016年『QJKJQ』で第62回江戸川乱歩賞を受賞。『Ank: a mirroring ape』で第20回大藪春彦賞、第39回吉川英治文学新人賞を、『テスカトリポカ』で第34回山本周五郎賞、第165回直木賞を受賞。

佐藤究の作品

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