食べることも愛することも、耕すことから始まる ---脱ニューヨーカーのとんでもなく汚くて、ありえないほど美味しい生活

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 106
感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (290ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206066

作品紹介・あらすじ

汚くて際限のない創造的営みである「農」と厄介で複雑で、なんとも癪にさわる農夫に恋してしまったハーバード出のジャーナリストが見つけた、あたらしいライフスタイル。

感想・レビュー・書評

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  • ハーバードを卒業し、ニューヨークでライターとして活躍していた著者が、取材で知り合った有機農業を生業とするパートナーと恋に落ち、二人で農場を開いた回想録。

    タイトルもなんだか狙いっぽいし、ふーん、という感じで何気なく図書館から借りてきた本書。正直、インテリを鼻にかけてこれ見よがしに、農業やってる自分を美化でもしてるんじゃないの?なんていう意地の悪い先入観たっぷりで読み始めたのだが。

    まず、著者の語りの素晴らしさにノックアウト。
    描き出される情景は美しく、草木や動物たちの生命の躍動がにおい立つような文章。それを見事に引き出した翻訳も読みやすく、また、かなり「変わっている」パートナー、マークとの、ロマンチックなような、泥臭いような(現に泥まみれだったのだとは思うが)、ハラハラするようなロマンス(とも言えないような)も目が離せず、そして農場で繰り広げられるあれやこれやのハプニングに、時のたつのも忘れてぐいぐい読み進めてしまった。

    荒れ放題の古い農場を、たった二人で理想の農場に変えるために奮闘するその姿は、驚きや尊敬を通り越してあきれるほど。
    けれど、二人とも恐ろしく真剣に、作物や生き物に、命あるものに向き合っている。
    当然、家畜として飼っている牛や豚は、食材として利用されるため、または、生かしておいては家畜としての役割をはたさないとき「つぶされる」。たとえそれが、子牛であっても長く一緒に働いた牛であっても、ためらわず命を奪う。それが農業で暮らしを立てることであるし、人が命の糧を得るためには避けては通れない道なのである。
    そのかわり、屠畜という一番目をそらしたくなる過程は、初めから終わりまですべてをしっかりとやり遂げ、食べられる部分は決して無駄にはしない。たとえ豚の血液であっても。そして必要以上に感傷的になることなく、まっすぐに向き合い感謝し、自分の仕事を全うする。
    自分の持てる時間と知恵と体力のすべてを注ぎ込んで、農場の作物、生き物たちに全身でぶつかっていく。

    農業に平和で静かな時などひと時もないという著者だが、命に直接触れ、自然と折り合いをつけながら、生き物の息遣いを聞きながら暮らすことの素晴らしさに、心底惚れ込んでいるようである。

    産みたての卵の温かさ、懸命に働く農耕馬の体から立ち上る湯気、生まれたばかりの子牛が立ち上がるのをじっと見守る母牛のまなざし、黄金色に輝くようなしぼりたての乳、たわわに実りつやつやと光るトマト、ふっくらと膨らんだいんげんの莢、困っているのを見かねて何くれとなく世話を焼いてくれる隣人、友人たち。
    なにもかも、綺麗ごとばかりではないけれども、汗水たらして働いて、その苦労が形になって現れた時、そしてそれをおしいただくとき、生命の輝きを目の当たりにするとき、これ以上ない幸福を感じるのだろう。

    そんな著者の思いが、農業など全く経験のない私にもひしひしと伝わってくる素晴らしい作品であった。

    追記。
    パートナーのマークが自家製の材料で作ってくれる料理の数々が、どれもこれもめちゃくちゃおいしそう。なにしろ、有機農法のできたてとれたてを即調理するのだから、おいしくないはずがない。食べてみたい~。

  • 鶏の屠畜から恋愛は始まる。ニューヨークで自由を満喫していた女性が、ライターとして出向いた取材先の農夫と恋に落ちる。彼は農業だけでなく料理も凄腕、彼のおもてなし、新鮮な鹿のレバー料理で、彼女は陥落。共に有機農場を立ち上げようと意思をかたくするが、血と泥と汗にまみれた、その苦難の日々。このラブリーな邦題からは、想像できないほどの壮絶な内容。鼻血が出そうな濃厚な読書。

  • 農業大学校で學んでいるおり、教員の方に紹介されて読みました。生業としての農業の厳しさとは違う夢物語ですが当時は新鮮な驚きでした。また、読み返してみようと思います。

  • フリーのライターが恋に落ちて農家になる、その過程を綴った恋愛小説??

    農業をする。自然と生き物を相手にする生活「こりゃ大変だ」という印象。
    されど自然、そして食べ物、愛する人との暮らしは、まさに「耕すことから始まる」とある様に、耕し終えたら豊かな生活が待っているんだろうなぁ〜と思う。

    私にはちょっと読みにくかったけれど、そしてここまでハードな生活は無理だけれど、こんな豊かな生活はやはり憧れてしまう。
    エセックス農場↓
    https://essexfarmcsa.com

  • 面白かった!ハーバード出てフリーライターやってた著者が、農夫と恋に落ちてイチからエセックスで農場を立ち上げ!とれたてミルクにとれたて野菜、オーガニックの自給自足の暮らしといえば聞こえはいいけれど、ハードで泥くさい現実をきっちりと突きつけてくれる。しかしそこにあるのはつらさだけじゃない。文字通り、地に足をつけて働く充実感への憧れが募った。

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  • 余程の極限状態に陥らない限り、私には他者の頚動脈を切除することは出来ないと思う。
    だから本来なら私には肉を食べる資格がない。
    でも、現実には嫌な仕事は他人に任せて美味しいところだけは貪っている。

    The dirty lifeの著者キンボール氏も当初は「ほかの生き物に苦しみを与えず食物を得る方法はないものか」と考えたらしいが、そんな時はソロー(森の生活の著者)が町に住む母親のところに毎日ランチをご馳走になりに通っていたというエピソードを思い出したとのこと…

    とにかく私の菜食主義的志向がかなり揺さぶられた良書が二つ。
    さ~て、これからどうしよう…

  • ニューヨークで働いていた女性が、たまたま取材で出会った農場の青年に恋して、二人で昔ながらの農業を始める。そこで起こる様々な困難や、喜びが描かれる。生きることは食べること、それはつまり他の生き物の生命を奪うことだ。「殺して感謝して食べる」それが物凄くリアルに伝わってくる。キレイ事として書かれていないことに好感が持てた。

  • 服部さん

  • 新品のアニエスbの白いブラウスを着た日にブタの解体を手伝う・・・、それが人生を変えることになるなんて。
    ハーバード大卒マンハッタン在住のジャーナリストである著者は、まったく農業と縁がなかった。しかし、夏に農場で恋に落ち、冬が来る頃にはマンハッタンのアパートを出て、彼と農場探しの旅へ!農場探しから開拓、農場経営まで、農業の奥深さを知ることが出来るエピソード満載の一冊!

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