南仏プロヴァンスの25年 あのころと今

  • 河出書房新社
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感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309207889

感想・レビュー・書評

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  • 著者のピーター・メイルさん、2018年に亡くなったのですね。もっともっと長生きして、諧謔味のある文章で、老いの先達になって欲しかった・・・・。
    プロヴァンスシリーズで知った、翻訳者の池さんも大好きです。歌語かと思うような非日常語を、褻(ケ)の日々の描写にさらりと織り交ぜてくるのがたまらないです。御長命と御健硯を祈ります。

    今回も振り仮名つきでやっと読める言葉がいくつか出てきました。しかし漢字は表意文字だし、前後の文脈で意味は十分通じますから、読めなくても意味は取れます。
    ただ、「曰く」と「言わく」と書いていたのは誤植だよね?

    さて、内容ですが、移住当初は吹けば飛ぶようなエトランゼだったメイル氏が、宮殿晩餐会に招待されたり勲章を貰ったりしていて、大立者になったなあと思います。
    大立者なんだけれど、ぶれない小市民感がうれしいです。

    プロヴァンスシリーズの新作を読めないのは残念ですが、そこは旧作を再読して凌ぎましょう。大丈夫。再読に耐えるというのが名作の条件ですから。

  • 2018年に亡くなった12か月の著者の絶筆。
    25年経っても相変わらずのプロヴァンスの季節と時間を感じる文体。
    カフェでロゼを飲みながら読みたい

  • フランスの田舎のゆったりとした甘美な暮らしが伝わるエッセイ集。南仏プロヴァンスと現代のわたしたちの時間とは、時間の流れ方がまるで違いました。「矍鑠たる」や「庶幾う」など見なれない言葉が時々出てくるので、どんな方が翻訳されているだろうと思ったら、なんと今年80歳を迎えられる翻訳家のお方でした。ピーター・メイル氏とは一歳違い。きっと原文で読んでも老紳士らしい文章なのだろうな。一つひとつの日本語に足止めされるエッセイは好きですよ。あとがきの文章も格好良くて惚れてしまいました。

    p34
    風味豊かで、時に辛口のロゼはグラス一杯の夏の輝きではないか。

    プロヴァンス人は地球上のどこよりも特典に恵まれた環境に生きていると信じきっていて、他所へ移る意思はない。ゴルドで知り合った中には、生涯この土地で暮らしている家族が少なくない。同じ一軒の家で、幾世代もの例もある。地元住民の集団的記憶は百年を越す昔に遡る。プロヴァンス人は生きた歴史の教科書だ。
    それがゆとりを持って人生をのんびり楽しむ心優しい人種を育てたと思われる。

    p42
    トリュフは灌木の根に寄生して繊維状の菌の塊を作る。これを菌糸体と言うのだが、どこにあるかわからないから、天然トリュフは発見が極めてむずかしい。

    p62
    記憶は選択を経て熟成する。退屈なこと、期待に添わなかったこと、許し難いことなどを除外して、後に残るのが理想を絵に描いたようなバラ色の記憶である。往々にして不正確ながら、心慰む思い出には違いない。再訪すれば郷愁に打たれる世界でもある。本当に、こんなふうだったろうか。これがあの頃の自分だろうか。

  • もう25年も前なのか! ピーター・メイルの南仏ブーム。憧れを募らせたものだ。
    2018年に亡くなった著者の遺稿で、その間のいろいろを軽妙につづる。レジオンドヌール受勲や、リドさまによる映画化のエピソードにも触れ、楽しい。
    エピソードや描写の素晴らしさを際立ててるのが、池央耿さんの翻訳だと思う。「矍鑠たる」「踝」「按排されて」など、カチッと漢字を多用してプロヴァンスの豊かな自然を描写するってのが、イギリスからの移住者の視点という雰囲気を醸すおもしろさよ。ちょっと林望先生ぽいつーか。
    メイルの新作が読めないのは残念だけど、いつか行ってみたいな、フランスの南部へ。

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著者プロフィール

イギリス出身の作家。広告会社を経て文筆業に。1980年代、南仏プロヴァンスに移住し、そこでの暮らしを描いた一連の著作が大ベストセラーに。子供向けのユーモラスな性教育の絵本も多く遺した。

「2020年 『なにがはじまるの?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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