その虐殺は皆で見なかったことにした: トルコ南東部ジズレ地下、黙認された惨劇

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309228136

感想・レビュー・書評

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  • なぜこんなことができるんだ、と思うようなことが描写されている。映画を見るような感覚で読んでいると、「人間の深層には残虐性が存在する。私も(兵士らと)同じ人間で、私の中にも同じ残虐性の芽があるはずだ。それに気づき、怒りは自分自身にも向きました」という部分に打ちのめされた。

    自国内で目に見える紛争や虐殺がなかった世代なので、この状況で自分や他者の残虐性を認知することは稀なのかもしれない。でも、集団化することで容易く呼び起こされるような気もする。
    自身が持っている残虐性について考えることが、どこかで他者とのちょうどよい距離をとるのに役立つかもしれない、とも考えた。

    ドネルケバブも美味しいし、谷中のザクロレストランも1度行ったことがあるし、「トルコは親日国である」という印象があるけど、実際にトルコという国について知っていることは少ないと思い知った。




  • 現実離れした残虐さに、何度も本を閉じた。
    でもそれらは現実で、日本でも同じように移民難民の人が(例えば入管の中で)拷問され殺されていて、
    きっとこれからももっと酷くなる。目を背けている暇などないと、思う気持ちと枯れ果てない涙の中で
    自分がどうしたら良いのか分からない。
    "見なかったこと"にはしたくない、その気持ちを持ってこれから、どうしたらいいんだろう

    トルコの闇も学ばないといけない。トルコの人たちも、大国(私たち の、犠牲国だ

    ただ、最後の方に出てくる一説が強く心に残る。
    私は、人が残虐になれる、『無感覚さ』を知っている。
    それを感じながら涙が出てくるのは、まだ私が人間という証拠だろうか、それとも必死な言い訳だろうか。


    戦後に生まれた。
    目の前で人を殺されるところは見たことが無い。
    大戦の話は、戦国時代の話と同じ、昔々のお話しだと思って生きてきた。

    それが間違いだった、きっと、私と同じで
    一歩進んで二歩下がる、たまに、二歩進んで一歩下がる時もある、
    そうやって、進んでいるのかいないのか、分からないくらい、人間は同じところで生きている。全体がまだ、赤ちゃんなのだ。

    "このゲームには、クルド人の苦しみは含まれていない"
    この本の、いろんな言葉が突き刺さる。
    人はなぜ自らの残虐性に身を任せるのか。
    子育てをしていて自分に感じること、感情を爆発させる方法しか知らない子どもを見て思うことは
    それが快感につながってしまうからなのかなと感じる。快感は二次的?
    ストレスに少しでも耐えられないというか。
    負の気持ちをそのまま外に出すこと、その瞬間、自分の思い通りにことが進むこと。
    それらはその瞬間だけのものであっても、ストレスに弱ければ弱いほど、その一瞬の快感に身を委ねてしまうのかな。
    どんな保護者であっても虐待する可能性があること、いじめが行われても助けなくても平気な位置で生きていけること、結果としてそれが殺人につながってること、
    トルコで行われた虐殺は、決して、私たち日本人と無関係な話ではないと強く感じる。

  • 3.4/53
    内容(「BOOK」データベースより)
    『「沈黙した者は、私の弔いに来させるな」。2016年、トルコでクルド人数百人が地下に閉じ込められたすえに虐殺されたが、国際社会はこれを黙認した。絶望の叫び声を聞き取り、それを掻き消した構造に迫る画期的な力作!』

    『その虐殺は皆で見なかったことにした: トルコ南東部ジズレ地下、黙認された惨劇』
    著者:舟越美夏
    出版社 ‏: ‎河出書房新社
    単行本 ‏: ‎224ページ
    発売日 ‏: ‎2020/11/25

  • 日本では政治的な理由でどうしてもフォーカスされないトルコのクルディスタンのジェノサイドの話。丁寧に取材をされていた。

  • ↓利用状況はこちらから↓
    https://mlib3.nit.ac.jp/webopac/BB00557544

  • クルド人の置かれた状況は非常に厳しく、エルドアンやトルコの軍隊、警察等に憤りを感じる。そして、自分になにができるのかと、やるせなくなる。
    危険な地域に入り、現地の声や現地外の関係者の話を丹念に拾ってくれた著者やカメラマンに感謝する。表面上は淡々とした文章から、地面の熱さ、砂ぼこり、緊張感、そして人々の痛みと苦しみを感じる。

    トルコの、クルド人に対する虐殺は一時的に耳目を集めても、本当にタイミングの悪いことに、シリアのISISの問題や移民の問題によって埋もれていってしまった。
    欧州人権裁判所に訴えて判決が出ても、トルコが従わなければ何も変わらない。NATOの国々は「自由と人権、民主主義の高い理想を掲げていても、結局は自国の利益が優先する」という状況。

    内需が厚く、特定の国が反発しても耐えられる米国が動かなければ、あとはEUが意思統一して動くしかないのではないかと思う。EUの国が単独でトルコを敵に回したら経済に影響がでるかもしれないが、EU全体で協力すれば吸収できるのではないか。

    私にできることは、虐殺された側の人々となにかしら連帯すること、日本で関係する人とまずはつながることなのかと思う。

  • シリアにばかり目がいくが、トルコもひどい状況だ。

  • ここに書かれたことが事実であるとすれば、軽々しく感想を述べられるものではないと個人的には感じる。こういったことを知らずに過ごしてはいけないと思いつつも、自分の無力さを痛感する。

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著者プロフィール

福岡県生まれ。1989年、上智大学ロシア語学科卒業、共同通信社入社。2001年から02年までプノンペン支局長、04年から06年までハノイ支局長(プノンペン支局長兼務)、06年から08年までマニラ支局長を務める。この間、米軍によるアフガニスタン攻撃、枯れ葉剤・米軍基地問題、女性問題、スマトラ沖地震津波、ミャンマーの民主化運動などを取材。
著書:『人はなぜ人を殺したのか―ポル・ポト派、語る』(毎日新聞社、2013年)

「2014年 『消去』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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