ドゴールのいるフランス---危機の時代のリーダーの条件

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309245164

作品紹介・あらすじ

第二次世界大戦とアルジェリア戦争で二度祖国を救い、戦後の国際社会で不退転のリーダーシップを発揮してフランスの独自性を大胆に打ち出したドゴール。長い特派員経歴を持つ著者が、徹底した関係者への取材を通して、これまでのドゴール像を全く一新する血の通ったドゴールの姿を浮き彫りにした、渾身の書下し評伝。

感想・レビュー・書評

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  • 待望の、昌子によるドゴールです。評伝というよりも、ジャーナリストらしい筆さばきであらためてドゴールを日本人へ紹介する、という内容です。フランスでの要人へのインタビューが随所に織りこまれており、これが本書の特色です。日本においてなぜドゴールが注目されないのか、すこし言及がありますがまわりくどいです。

    戦後日本は、サルトルを寵愛した進歩的文化人が学界やマスコミをリードしたから、というひとこですみます。チャーチルやドゴールがきらいな人は、そもそも戦争と平和を考える資格がありません。この本に積極的な姿勢で挑む人こそ、明日の平和に貢献できる人なのです。

    ひとつ具体例を紹介しておきます。ジャン・モーリヤックという人がいますが、この人は指導者の条件として「戦争に勝つこと」をあげています。平時のいまどき…、と思うかもしれませんが、これがまっとうなフランス人の平和への発想です。

    昌子曰く、フランス人は大統領選では、意識的に、あるいは無意識のうちに、外交力も含めて、あらゆる意味で、この「戦争に勝てる人」を選んでいるのかもしれない、と。(滋味掬すべし)

    チャーチルも登場しますが、記述はやや不安定です。たとえばマコーリーの『英国史』を14歳で読破した、とありますが、おそらくマコーリーの詩を暗誦したことを指しているのでしょう。ウィンストンがマコーリーと真剣に格闘するのは、インドに滞在したときです。ウィンストンは二十代にはいってから、ほんものの読書の世界へとはいっていきます。ギボンの衰亡史を読むのもこのころです。閑話休題。

    参考文献一覧に、フランス語によるドゴールについての本が厳選されています(たぶん)。フランス語が楽勝な人はもちろんのこと、フランス語をすこし学びはじめたという人も、ドゴールにすこしでも関心があれば、ぜひフランス語で闘いましょう。ドゴールを知るには、フランス語が読めなければどうしようもない、というのが現実です。

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著者プロフィール

ボーン・上田記念国際記者賞受賞

「2022年 『パリ日記―特派員が見た現代史記録1990-2021 第4巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

山口昌子の作品

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