ルポ 産ませない社会

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309246222

作品紹介・あらすじ

"孤育て"、妊娠解雇、職場流産、ベルトコンベア化するお産…なぜ、今、子どもを産むことに前向きになれないのか。「産めない」のではない。社会が「産ませない」のだ。子育てを未だに「女性」に押しつけ続ける現実を問う、痛切なルポ。

感想・レビュー・書評

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  • 約十年前の本だが、現状はあまり変わっていない。そう思うのは、たまひよの妊婦用SNSで「つわりが酷く仕事を辞めた」「職場で産休育休が取れない」「経済的に苦しい」といった悩みが日々投稿されるのを眺めているから。本書では、仕事をしている妊婦、産婦人科で働く医師や助産師、乳児院やNICUで働く看護師、障がいのある子どもをもつ親など、それぞれの立場から、この社会で子どもを産み育てることの大変さが述べられている。
    当事者のリアルな声は、政策を決定する人々にまで、なかなか届かない。だから少子化対策をしても、根本的な解決には至らない。まずは労働者の賃金上昇と、あらゆる子どもを育てるのに必要なサービスの充実を。
    人々が心に余裕をもち、妊婦や子育て世代を大切にする社会になるといいと願う。

  • 「絶望的な現状に切り込む」評:城戸久枝(ノンフィクションライター)北海道新聞
    http://www5.hokkaido-np.co.jp/books/

    河出書房新社のPR
    「「産めない」のではなく、社会が「産ませない」のだ。孤立する母親、妊娠解雇、ベルトコンベア化するお産、商業化し消費される妊娠……出産に前向きになれない社会に光を探す痛切なルポ。
    まるで、「子どもが心配なら家で(母親が)みろ」と言わんばかりの環境が整ってはいないだろうか。
    マタニティ・ハラスメント、“孤育て”、妊娠解雇、職場流産、ベルトコンベア化するお産……なぜ今、子どもを産むことに前向きになれないのか。
    子育てを未だに「女性」に押しつけ続ける現実を問う、痛切なルポ。」

  • 図書館で借りた本。
    産婦人科状況など、医療の実態にも深く言及するルポだった。
    不妊治療と高齢出産の現状、乳幼児虐待など、幅広く網羅している。
    勉強になった。

  • 妊娠によって退職に追い込まれたりする方の例や忙殺され、流れ作業化される医療現場、医師や看護師、助産師の労働実態などかなり悲惨な状況のレポートが多く少々凹むが、現在の日本の出生率低下現象から覗かれる直接要因の多くを浮き彫りにしており、直視しないわけにはいかないように思う。妊娠・出産を積極的に支援する企業の育成や心身ともにケアする医療現場の改善などはとても意義のあることだが、これだけでは出生率低下の歯止めにはならないようにも感じる。根本原因はもっと深いところにある。

  • 子供を産むことに前向きになれないのか?
    今何ができるのか? を 問う本でした。

    親になれない 人が増えているようです。

    必死になって 体外受精して妊娠した女性が
    検査で 胎児の異常が見られたら 
    今回の卵は諦めます。まだ冷凍保存している卵子があります。
    という事を言ったそうです。
    他にも 双子ができたら 二人は育てられないとか で
    手放してしまったり。
    産んでみたら こんなにも痛い(出産が)とは こんなにも赤ちゃんが泣くなんて などと
    出産=ゴールと思っていた人達には受け入れられない事が沢山。
    しかも 傍には 産み育てをした 先輩たちが近くにいない。
    そして 産後うつになっても 誰も助けてくれない。

    お産を受け持つ産科病院も
    忙しさで 妊婦のフォローまで手が回らない。
    計画的にやらないと 病院が大変だから 
    帝王切開などで コントロールすることが増えてしまった。
    これは 分娩のつらさをに見かねて 家族らも 帝王切開を求めてしまう事も増加の原因らしい。さらに自然分娩で万が一仮死状態になったら というリスクも避ける為に。

    働く妊婦さんへの社会の対応は
    サポート全くなしとか 妊娠したら やめてもらうというような体制。
    良い職場もある中 ひどい所が目に入ってしまいますね。

    出産後のサポートもきちんとできている病院もあれば
    そうでない所もある。

    どんな子供も産まれてきたら 親子ともども 温かく社会が見守ってあげれるように
    ならないと 安心して 子育てが できないのでしょうね。

    そういう 社会に早くなると 良いですね。

  • 問題だな。

  • 出産・育児というと、男女問わず人生の一大イベントの一つといえるでしょう。

    特に女性の場合は、出産に際してどうしても仕事を離れなければならない期間があり、出産に対する不安に加え、その後の社会復帰や仕事の仕方について考えることも多いと思います。

    最近、身近で出産した人が多かったこともあり、今日は出産・育児に関する本『産ませない社会』を読みました。

    ーーーーー

    本書『産ませない社会』は、赤ちゃんを育てる母親の孤独や、出産・育児での休暇を認めない社会、産婦人科の医師の不足など、出産と子育てにかかわる様々な問題に関するルポタージュ。

    基本的にいい話は少なく社会問題の暗めの話が多いので、いままさに出産や育児に困っているという人にはあまりお勧めできないかもしれないです。

    しかし、内容は綿密な取材に基づいたしっかりとしたもので考えさせられる。

    以下内容についていくつかのトピックを紹介します。

    ーーーーー

    ・出産後の育児うつ

    出産後、母親としての自分を受け入れきれない母親は多い。

    母親の育児への拒否感としては、「赤ちゃんがまるで異次元の生き物のようだ」と感じる母親は少なくないという。

    妊婦の約6割が初めて抱く赤ちゃんが自分の子だということを考えると確かにそれも納得できる。

    ーーーー

    ・人工中絶に関して

    人工中絶に関しては、人工妊娠中絶は刑法第29条で202~206条で堕胎の罪として規定されており、母体の保護が必要な場合や暴行者に姦淫された場合などを除き禁止されているが、いい悪いで一概に判断できない面もあるという。

    例えば、「上の子がダウン症で、次に生まれてくる子もダウン症では物理的に育てることができない、親が死んだ後のことに残されたこのことを考えると検査を受けるしかない」というようなケースもある。

    ーーーー

    ・産婦人科の医師の不足

    日本の専門医の時給は3344円で、アメリカは1万1200円。イギリスは7854円と、全体として医師の給与は低い。

    特に、産婦人科の医師の給与はほかの専門医よりも給与が安く、深夜の当直が多いことなども出産のリスクを上げる原因として示唆されている。

    「究極、帝王切開のできる外科医と正常分晩ができる看護士がいればおさんは成り立つ」と揶揄されるが、

    お産の現場では胎児や母体の死亡事故も多く、訴訟に発展するケースも多いため、給与に見合わず過度なストレスを受けやすいことを著者は指摘する。

    一方で、医師の不足や金儲け主義による、安易な帝王切開に対しても、警鐘を鳴らす。産婦人科が不足し始めたころから、必要のない帝王切開が増え始めたという。

    これには、帝王切開をすることで胎児が仮死状態で生まれてきた場合などに訴訟を起こされにくくする狙いと、医師が帰る前に出産を終わらせようとする狙いがあるという。

    最近では、「下から産ませられる力量のあるドクターは少ない」とベテランの看護師は嘆く。

    セレブ向けの産婦人科病棟では、出産後にフレンチ料理がでるようなところもあるというが、付随的な価値よりもお産の質を上げることが先決である、と著者は言う。

    ーーーーー

    このように本書では、出産・育児に関する問題点を知ることができる点でよい本です。

    本書を読むと、出産にしり込みする人も出てしまいそうですが、本来出産には新しい命の喜びとか、子法を授かるといったプラスのイメージだということ、を併せて思い出すことが重要であると感じました。

    働き方改革が推進して、出産・育児がしやすい世の中になっていくことを期待しています。

  • 理不尽さや不合理さに頭がクラクラした。こんな風に扱われるなら社会に出たくないと思った。全ての妊婦、子どもたちが祝福される社会になればいいとおもう。いや、しなくてはならない。

  • 2013年10月に実施した学生選書企画で学生の皆さんによって選ばれ購入した本です。
    通常の配架場所: 開架図書(3階)
    請求記号: 367.21//Ko12

    【選書理由・おすすめコメント】
    これから社会に出る自分にとって衝撃的でした。「妊娠解雇、職場流産」少子化の今女性の働きが重視されてはいるが、この本から「産めない」のではなく社会が「産ませない」という言葉を重く受け止めないといけないと思いました。
    (社会経済システム学科 3年)

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著者プロフィール

ジャーナリスト

「2021年 『POSSE vol.49』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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