- Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309246222
感想・レビュー・書評
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出産・育児というと、男女問わず人生の一大イベントの一つといえるでしょう。
特に女性の場合は、出産に際してどうしても仕事を離れなければならない期間があり、出産に対する不安に加え、その後の社会復帰や仕事の仕方について考えることも多いと思います。
最近、身近で出産した人が多かったこともあり、今日は出産・育児に関する本『産ませない社会』を読みました。
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本書『産ませない社会』は、赤ちゃんを育てる母親の孤独や、出産・育児での休暇を認めない社会、産婦人科の医師の不足など、出産と子育てにかかわる様々な問題に関するルポタージュ。
基本的にいい話は少なく社会問題の暗めの話が多いので、いままさに出産や育児に困っているという人にはあまりお勧めできないかもしれないです。
しかし、内容は綿密な取材に基づいたしっかりとしたもので考えさせられる。
以下内容についていくつかのトピックを紹介します。
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・出産後の育児うつ
出産後、母親としての自分を受け入れきれない母親は多い。
母親の育児への拒否感としては、「赤ちゃんがまるで異次元の生き物のようだ」と感じる母親は少なくないという。
妊婦の約6割が初めて抱く赤ちゃんが自分の子だということを考えると確かにそれも納得できる。
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・人工中絶に関して
人工中絶に関しては、人工妊娠中絶は刑法第29条で202~206条で堕胎の罪として規定されており、母体の保護が必要な場合や暴行者に姦淫された場合などを除き禁止されているが、いい悪いで一概に判断できない面もあるという。
例えば、「上の子がダウン症で、次に生まれてくる子もダウン症では物理的に育てることができない、親が死んだ後のことに残されたこのことを考えると検査を受けるしかない」というようなケースもある。
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・産婦人科の医師の不足
日本の専門医の時給は3344円で、アメリカは1万1200円。イギリスは7854円と、全体として医師の給与は低い。
特に、産婦人科の医師の給与はほかの専門医よりも給与が安く、深夜の当直が多いことなども出産のリスクを上げる原因として示唆されている。
「究極、帝王切開のできる外科医と正常分晩ができる看護士がいればおさんは成り立つ」と揶揄されるが、
お産の現場では胎児や母体の死亡事故も多く、訴訟に発展するケースも多いため、給与に見合わず過度なストレスを受けやすいことを著者は指摘する。
一方で、医師の不足や金儲け主義による、安易な帝王切開に対しても、警鐘を鳴らす。産婦人科が不足し始めたころから、必要のない帝王切開が増え始めたという。
これには、帝王切開をすることで胎児が仮死状態で生まれてきた場合などに訴訟を起こされにくくする狙いと、医師が帰る前に出産を終わらせようとする狙いがあるという。
最近では、「下から産ませられる力量のあるドクターは少ない」とベテランの看護師は嘆く。
セレブ向けの産婦人科病棟では、出産後にフレンチ料理がでるようなところもあるというが、付随的な価値よりもお産の質を上げることが先決である、と著者は言う。
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このように本書では、出産・育児に関する問題点を知ることができる点でよい本です。
本書を読むと、出産にしり込みする人も出てしまいそうですが、本来出産には新しい命の喜びとか、子法を授かるといったプラスのイメージだということ、を併せて思い出すことが重要であると感じました。
働き方改革が推進して、出産・育児がしやすい世の中になっていくことを期待しています。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
自分が思ってる以上に深刻な世の中。
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興味ある分野の本だったので、おもしろく読みました。
なぜ女性は子どもを産めなくなってしまったのか、ということについて考えさせられました。
この本を読んでどんな社会だったら、産みやすいかな?と考えてみました。
・周囲が温かな目で見守ってくれること
・妊娠、出産しても無理なく働けること
・男の人(夫)も残業が少ないこと
・産む場所があり、心身ともにサポートしてくれる助産師、医者がいること
・産後も母親が孤立しないこと