- Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309246772
感想・レビュー・書評
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本家と並行して読んでたら、面白くて先に読み終えてしまいました。
小林康夫氏だけが著者名に上がってますが、大澤真幸氏との対談だから、二人の名前があった方がいいと思うんだけど。
第1章 「人文書」入門
なぜ本を読むのか。
「本は言葉が重みをもって、そこに凝集して存在している状態」という言葉から始まるのだけど、読み終えても、印象に残っている。
情報ではなく本として遺すことの重さ、でも書いている人も実は「分かっていない」部分がある。
伝えたいことと、読み手が受け取ることのギャップの中に「奇跡」という世界が現れる。
第2章 「読書の技法」入門
どうやって本を読むのか。
面白かったのは、専門家が作った?用いた?用語を、自分なりに咀嚼して置き換える方がいいのか。
それとも、簡単に自分の言葉に置き換えてしまわず、時を待つ方がいいのか。
二人の意見が分かれていて、どちらの言いたいこともよく分かる。
私は、すぐに理解出来ない、使いこなせなくても、その人の持つニュアンスを咀嚼する時間そのものに価値を見出していく考え方のほうが今は好き。
第3章 誰にもわかる「実存主義•構造主義•ポスト構造主義」
急に具体に入っていったので、ちょっとしんどかった章。
ただ、人間の主体を考えた時、言葉も生活も既に出来たものを間借りしているだけなのに、主体って言えるの?という意味は分かる。
もう少し進んで、欲望する機械としての人間という辺りは、今の自分の問題意識と関わってくるから勉強したい。
皆が皆、主体だ自由だとやっていくと、結局は他者の主体性や自由を否定することに繋がるのでは、と述べる。でも、単にそこで主体性を放置してしまうと、欲望だけが勝ってしまうんじゃないか、そんな気がしている。
第4章 自然科学と人文科学のインターフェース
数学的な考え方があることで、経験は出来なくても展開できる世界?がある。(安易に世界とか言っちゃったけど)
ちょうど√2の話に触れた所だったので、なるほどと思わされた。
マイノリティが飛躍的な秩序の変化を起こす可能性を持つことの、マジョリティの根源的恐怖と排除。
この部分も、頭に留めておきたいと思った。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
総合的な感想:人文系の知の魅力がすごい伝わってきた。文系の大学2年生くらいが読むと良いのかもしれない。
一人の人の全集を読む
社会の仕組みの全体像を書いた本としての『資本論』→近代社会の全体を相対化
歴史的にも社会的にも一つの世界観を提示する本
自然科学と人文科学のインタフェースは非常に面白い。『自我の起源』読みたい
渡辺慧『時』物理学の中で時間を考える
20世紀人文科学の流れを知る。実存→構造→脱構築。20世紀思想の理解が深まった。
p62結論ではなく、思考の過程を読もう。結論へのショートカットが横行し、また求められる現代に、必ず結論の背景に思考過程があることを思い出したい。自分で思考して何かを生み出す時は過程が重要なので。
わからないものが読んでいるうちにわかってくる経験をしていきたい。心がシンクロする本、同じ問題意識を持った本には出会えるのだろうか。
本だって、初めから終わりまで最初からわかった上で書いているわけではない。一緒に思考の過程を追い、探ろう。
p70長めのレビューを書いてみること。400字詰めで2~30枚くらい。
心打たれるパッセージの書き写し。
p75入門書について。これは知りたい内容だったので興味深かった。
キーコンセプトが全くわからず読んでも仕方ない。『100分で名著 純粋理性批判』にて、西研が「何をきっかけに書こうとして、何を示そうとしたのかを知っていれば哲学書は読める」のようなことを言っていたのを思い出した。
入門書の著者が、元の書に深く感動していることが伝わってくるのが良い入門書。でもそれは読まないとわからない。結局、評判の良い入門書を読むのが良さそう。
結論、キーコンセプトがわからない哲学書はとりあえずそのコンセプトを知っている程度に入門してから読む。入門書で「そうなんだ」と思って終わるのではなく、その後に原著を読む計画を立てる。
p89翻訳の脇に原典を置く話。
「我思う、ゆえに我あり」の原典の、カンマをどう読むか、というところまで考えるのが精読。精読ということの意義や面白さを、少しだが初めて感じることができた。
第3章:「誰にもわかる『実存主義・構造主義・ポスト構造主義』」と言っているが、「誰にも」は真っ赤なウソ。専門用語多め。結構深いところまで現代思想の知識を持っている人じゃないとちゃんと理解できないと思う。
p127 資本主義はディスコントラクション。
闘争モデルでは、「意味」を振りかざすゆえに、資本主義よりももっと恐ろしい絶滅抹消タイプのファシズムがもたらされることを20世紀の歴史が証明した。意味は危険、という考え方が面白い。
p146まで
実存主義の話はなんとな〜くしかわからなかった。知らない思想家や知らない概念や知らない比喩が多く出てきた。
p147『暇と退屈の倫理学』の消費社会に惑わされずに「浪費」をしようという論と似たことを言っていそう。資本主義というものの内部に取り込まれていない意味での主体性を復活させられるか?
p148「資本主義は変数Xへの欲望によって動くシステム」←資本主義の言語化としていいね!!!
p157「おそらく人間が知りたいことは、特に若い人が知りたいことは、学問の分野にこだわっていたら本当のことはわからないし、それぞれの分野で起きていることを互いに刺激し合いながら深めていくような知的営みが出てくる時ようやく学問の面白さもわかってくると思うんです」良い文!
p173~175科学に対するよい考察。
心理現象が脳と対応していることそれ自体の不思議には、科学的研究とは違ったロジックでアプローチしないと。そこで人文知。
量子力学と、哲学的な認識論と存在論が合流してほしい…
カオスのエッジで意識や秩序について考える…こういう学習をもっとしていきたいね。複雑系の科学の勉強をしたい。
複雑性の縮減による増大は、実体験としてよくあるよね。
最終章の知についての考察は、考えてきた人たちらしさが滲み出ていた。
行為としての知を探求したい。 -
実存主義から構造主義、ポスト構造主義の流れの解説は非常にわかり易かった。
神の全能感を人間に適用し、人間は自由な主体だとする実存主義が生まれ、
そこから実は人間は構造によって縛られていて、真に自由というわけでないとする構造主義が台頭し、それに対する批判としてポスト構造主義が生まれた。
残りは読者のターゲット層にマッチしていないレベルの談義だった。
テクニカルタームの連発で、ものすごく丁寧に読まないと何が言っているのかよくわからないのが多数。
本書のターゲット層を忘れていないのであれば、
これは「こんな難しいことを考えている俺、そしてこんな難しいことを考えている哲学ってすごくね?」
という心理構造があるとしか思えない。
そして小林氏のアベノミクスと近代資本主義の批判は酷かった。
この程度の分析しか出来ないなら哲学(と社会学)からの批判なんかするなよ、と読んでいて突っ込みをいれたくなった。
グループワークで建設的な議論をしているメンバーの中で、
的外れな知識をつけたバカがわけわからんこと言って足を引っ張っている、そんな絵が思い浮かんだ。 -
今の自分の頭では処理しきれないことが多かったが、とても勉強になった。
咀嚼していく。 -
20190518 右京図書館
昔の偉い先生方のようにスパルタや放任ではない、現代の良識的な先生による「学問の方法」についての、ふんわりとした手引き、と見える。 -
難しい。私の知的レベルが足らず、議論のベースになっている哲学などの概念も知らないため、全く理解できない箇所もある。でも、読めないわけではない。わからないけど、ぼんやりと感じるものがある。
私の知らない世界はたくさんあって、それを知りに行くのはおもしろいかもしれない、と感じさせてくれる。紹介されている本を、少しずつでも手に取ってみようかと思った。
抜き書き
学校や教科書では、すでに生成し終わったところ、すでにできあがったところを教えるわけです。行為を通じての生成、というものが、もう終わってしまった、ところから始めている。これだとダメだし、本当には理解できないし、そして知ることの喜びも味わえないんですね。
→例として平方根が挙げられているが、歴史などについても同じことが言えると思う。高校生の時に地理が面白いと思ったのは、気候、植生などについてその原因からしっかり説明していたからだと思う。
インターネットの問題は、全体性がわからないということなんですね。単純な、インターネットで情報を見つけた場合、それがどのくらい重要なのか、その相対的な大きさが把握できない、という問題がある。本や、あるいは新聞と比べた時の、インターネットの弱みはここにありますよね。
→ニュースを見ようと思った時や、旅行プランを立てようと思ってネットを見るときによく感じること。新聞やガイドブックの方が、全体像が見えて分かりやすい。
参考書
銃・病原菌・鉄 ダイアモンド
マルクスー資本論の思考 熊野純彦
現代社会の存立構造 真木悠介
マルクス 資本論
国家はなぜ衰退するのか アセモグル、ロビンソン
世界がわかる宗教社会学入門 橋爪大三郎
存在と時間 ハイデガー 熊野訳 -
<閲覧スタッフより>
大学教員が学びのおもしろさを語った本、学生がゼミや授業で学んだ成果をまとめた本を集めました。大学での学びがよく分からない方、さまざまな学びに興味のある方、ぜひご覧ください!
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所在記号:002||コハ
資料番号:10227707
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1990年代のベストセラー・シリーズ、『知の技法』、『知の論理』、『知のモラル』、『新・知の技法』の編者かつ中心的な執筆者であった小林康夫氏と、社会学者の大澤真幸氏による対談。書名は『「知の技法」入門』となっているが、直接的に上述のシリーズの続編を意図した企画ではなかったようだ。
まず、「I.入門篇」では、第1章で「人文書入門」、第2章で「読書の技法入門」が取り上げられている。第1章では、人文書を、「この世界に内在しつつ、世界に関わっている者にとって、まさに世界がどうであるかという「真理」を探究している書物」(大澤氏)であり、その使命を「この舟を放棄しうる、別の船がありうる、別の可能性を示唆する。そういう希望を抱かせること」(大澤氏)とした上で、その推薦書約50冊と、そのエッセンス・読み方を述べている。第2章では、「結論でなく、思考の過程を読もう」、「ノート法について」、「レヴューを書いてみる」、「付箋、線引き、マーク」、「入門書の使い方」、「良い入門書とは?」、「読書会の効用」、「精読の方法」、「原典との付き合い方」、「自分の言葉に置き換えてみる」などが語られる。
次に、「II.理論篇」では、第3章で、「誰にでもわかる実存主義・構造主義・ポスト構造主義」として、二〇世紀の思考の大きな流れが取り上げられ、第4章で、「自然科学と人文科学のインターフェース」として、意識と物質のミッシングリンクが取り上げられているが、本篇は、ハイレベルなベース知識がないと付いて行くことが難しい遣り取りになっている。
最後に、「III.知の技法とは何か?」が語られるが、これはそのまま、あとがきの「この対談のバック・グラウンドがあるとしたら、「危機」だということ。カタストロフィーに向かって盲進しているわれわれ人類の歴史的な「危機」、それと相関しつつ、もう少し狭く人文科学、あるいは人間についての思考の衰弱の「危機」、さらには必然的に資本主義的な原理と相互浸透せざるをえなくなった現今の大学の「危機」~そのような多重的な「危機」のなかで、「知」の希望をどのように語ることができるか、・・・それが問題だったのだ」(小林氏)に繋がっていく。
本年6月、文部科学省が、国立大学に対し、人文社会科学系の学部や大学院について、廃止や、社会的要請が高い分野への転換に努めるなど、組織と業務全般を見直すよう通知を出したことが大きな波紋を呼んでいるが、まさに両氏が抱く危機感を一段と高めるような事態が実際に起ころうとしている。
知的欲求を刺激し、「知」とは何か、「学ぶ」とは何か、を改めて問いかける一冊。
(2015年8月了) -
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