ヒップホップ・ドリーム

著者 :
  • 河出書房新社
4.13
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本棚登録 : 256
感想 : 29
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309276052

感想・レビュー・書評

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  • r2.1.9文庫で再読。
    初読時よりこの人やべえやつだな。。。と引く意味でも感心する意味でも思った。

    面白かった。強面の印象の強い著者がそこまでアウトローな少年時代を過ごしたわけではないというのは意外だったし、後半の所属会社との確執の話は非常にリアルだった。そういう社長、小さい芸能系の会社にいるいる。著者の主張を全面的に信頼するわけではないが、非は会社側にあることは明らかなのではないか、
    縦と横の間の、人間関係の斜めのつながりという発想は面白い。現場のリアルを見つめる観察眼と内省的な部分が結合している感じ。
    そう、そういう現場とか内面といった部分は非常に強いのだけど、大したこと言ってないリリックを社会派と自画自賛しているところだけは萎えた。狐火、ブルーハーブ、とかは確かにここ数年になってから社会派のリリックを紡いでいるが、ジブラもケーダブも宇多丸も、著者より余程鋭い社会的なメッセージを先行的に発している。そこはどう捉えているのか?著者が社会をどう斬るのか、お仕着せの言葉でなく煮込んだ末に出てくるものを見てみたくなる。

  • まず感想としてはめちゃ面白かった。
    漢を知ったのはダンジョンだったので、最初の印象はコワモテなキャラ重視のラッパーで、フリースタイルの技術はそこまでかなと思ってたけど、キャラは作ってるわけではなくリアルに醸成されたモノだとわかったし、リアルしかラップしないというルールと、とぢらかというと技術的にうんぬんというより、芸術的なタイプなのがそう見えていたんだと理解できた。
    そして、やっぱり信念が固い人は強いなとまた思わされた。

    カッコつけたがりなんだけど、それをあるあるネタのように心境を正直に書いてたりしてるのが面白い。
    登場人物については注釈で丁寧に説明が書かれていますが、かなり多く複雑に絡みあっているので、よくドラマとかであるヒップホップ関係者の相関図があるとわかりやすいし更に面白く読めそう。

    何者でも無いけれど自分も自伝書きたくなった。

  • 2017.6.19
    ロックバンドやパンクバンドのヒストリー本、アーティストの伝記のようなものは沢山読んできたが、ヒップホップは初めてで、ストリートでの話とか不良っぽい話とか大変面白く読んだ。パンクの人にも共通するけど、ラップ、ヒップホップの人も第一線で活躍してる人は超が付くほど真面目である。

  • よく出版できたな、と危ない話もありつつ、漢さん筋が通ってて、男としてカッコいいと思いました。

  • シノギの話とか、ライブラレコードとのいざこざの話とか、やばい人達の舞台裏が見れて楽しかった。

  • 編集の人の仕事のせいもあるのかもしれないけど、言葉選びがいいです。
    ボリューム感があって自伝として普通に面白いし、描写が上手いのか、その時の緊張感や興奮がよく伝わってきます。

    個人的にはMSCのリーダーとしての漢さんを知らなかったから、背負ってる感じがかっこよかったです。
    通そうとしてる筋も一貫してる。
    BOSSとかanarchyとのエピソードも面白かった。

    どこまで本当かわからないけど、こういう世界もあるんだなと思いました。
    それは行き過ぎでしょっていう哲学もあったけど。

  • 早く読むべきだった。

  • MSCが「西武新宿線中井に邸宅持つオカルト集団」だった時代の話がヤバすぎる。漢やMSCが沈黙してた頃にネットで流れてた噂の真偽も漢の口から聞けて良かった。

  • 日本を代表するヒップホップクルーであるMSCのリーダー的存在であるMC漢(akaGAMI)の自伝。自伝と言っても、たぶん漢は「本が読めない」と語るぐらいなので、自分で自分の半生を書き下ろしたのではなく、インタビューを元に文章を再構成したものと思われる。そして、企画・構成は、「しくじるなよルーディ」で2010年代の日本のヒップホップについての本を著した、音楽ライターの二木(フタツギ)信。
    内容としては、ギャングスタラッパーとして知られる漢が、これまでどのように生きてきたかということを、自身のヒップホップについての哲学を交えて語っている。

    半生についてだが、まずもって漢の家庭環境がハードコアで、父親がチンピラのような生活をしており、両親は不仲で、親戚がちょくちょく逮捕されたり、といった話が出てくる。前半は、漢自身が子供の頃からとにかくケンカに明け暮れたり、冗談半分で友人たちと集団万引きをしたりと、まぁ不良の生活を送っていたことが語られる。中盤では、そうしたケンカっぱやいだけの不良が、どのようにしてヒップホップの世界に足を踏み入れ、そしてアンダーグラウンドシーンで名を馳せるようになったのかが語られている。
    また後半ではそれまでMSCが所属していたLibraという会社と起こったbeefが、どのような背景によるものなのかを丁寧に説明している。ここを読むと、Libraの社長のヤクザっぷりがやばくて、これは金払いたくねえなって思う。

    そして哲学についてだが、これは「リアルにやる」ということに尽きる。
    そもそも漢が「自分はラッパーに向いている」と思ったことも、ラップがストリート(不良)のものであるという前提と強く関係している。すなわち、漢がラップに興味を持った当時のラップ業界は、「ストリート志向」のようなことが表向きは言われながらも、実際には金持ちの子どもや大学生などのおぼっちゃんが多かった。そうした諸々は漢からすればフェイクでしかない。それに対して自分は「正統な」ストリートの体験をバックグランドとして持っており、であればそれを正直に歌うことが価値を持つ。
    リアルであることを第一に掲げ、言葉の重みを何よりも重視することが、自身の生き方の指針であると同時に、ヒップホップ表現においても一致する。

    と、まぁこう書くと「そんなもんか。正直なのはいいんじゃない」と思うが、だが実際のところ、そこで語られている内容は極端である。というのも、「事実に基づいたことを歌う」ならばいいのだが、その逆に「うっかり言ってしまったことがあれば、それを一週間以内に実行すればリアルになる」といったルールが適用されていることである。
    具体的には、ラップバトルで相手に対して「今度あったらお前を刺す」と歌ったMSCのメンバーの言葉を「リアル」にするために、実際に敵対するグループに襲撃をかけ、刺傷するような事件を起こしているからだ。「ラップバトルであっても言葉の重みを重視しろ」というのは良いが、ラップバトルで吐いた言葉に基いて刺されたらたまったもんではない。他にも、メンバーがはずみで言った発言に基いて大麻の売人のイラン人をビール瓶で殴打した話など、「オイオイ」としか思わない。

    もちろん、無軌道なケンカをするのが目的ではないとは言っているものの、あまりお近づきになりたくないとは思う。

    ところで、もう一つ気になるのは、自身のギャングスタ・スタイルについて、曖昧な記述をしている箇所である。
    これは一言でいうと、「俺の言うことを真に受けるな」という内容である。

    「みなさんもギャング映画やヤクザ映画がお好きでしょう。それと同じ感覚でMC漢のギャングスタ・ラップを楽しんでください。(略)この本で語っていることにも”演出”が入っているかもしれませんよ。だから『いい歳こいて何がハスリングだ』とか正論で批判するのはやめてくださいね」(p153)

    この章の記述ははっきり言って真意がよくわからない。素朴に読めば「リアル」という彼の哲学と矛盾するので、文字通り「煙に巻かれた」印象がある。

    僕がこの本を読んでみようと思ったのは、「フリースタイルダンジョン」(フリースタイルバトルの番組)でよく見かける漢が、どのようなことを考えて生きているのか、素朴な興味があったからである。そもそもこの本自体がけっこう売れているので、どういうもんなのかなと思ったのもある。

    共感できる部分も多かったが、やはりマッチョな部分は間違いなくあり、そういうのはどうにかならないのかなと思ったりする。

    それからおまけの感想を一つ。
    漢がラップバトルなどでゲイをバカにするようなラップをしているかどうかはしらないが、二丁目を擁する新宿の住人なら、ヒップホップ界におけるホモフォビアを批判するようなものを歌ったって良いのではないかとも思ったりはする。

  • 新宿スタイルかっこいい。ライブラとのその後を定期的に何かで発表してくれないかな。

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