カラー版 文豪たちの西洋美術: 夏目漱石から松本清張まで

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (112ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309291222

作品紹介・あらすじ

夏目漱石のミレー 森?外のロダン 谷崎潤一郎のビアヅレエ芥川龍之介のグスタヴ・ドオレ 梶井基次郎のレンブラント 堀辰雄のラファエロ中島敦のデュウラア 太宰治のモジリアニ 三島由紀夫のグイド・レーニ川端康成のセザンヌ 安部公房のフラ・アンジェリコ 松本清張のアルテ・ポヴェラ ……作家たちはどんな作品に触発されてきたか―――いまだかつてない日本近代文学による西洋美術案内

感想・レビュー・書評

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  • 近代文学の55人の作家たちは作品の中で、西洋美術を、
    どう言及し、描いたのか。夏目漱石から松本清張まで年代順に
    60篇の文章を美術作品と共に紹介し、解説する。
    実は近代文学の作家たちは西洋美術にも視線を注いでいた。
    絵画、版画、彫刻、ドローイング、石像、挿絵・・・等々。
    異国への憧憬、共感、シチュエーションを創作に込めた、
    文学作品が紹介されています。
    小説や詩のほんの短い文ではありますが、
    作家の美術作品への思い入れや解釈、感性が窺えて、
    改めて作家や芸術家たちへの関心が高まります。
    文章とエピソードから推定した美術作品もありますが、
    関係性を提示されると、なるほどと思ってしまいます。
    それらがカラー画像で紹介されているのも、良かった。
    また、中里介山の時代小説『大菩薩峠』に、大ジョットと
    チマブーエについての言及があるのには驚きました。

  • そこまで近代作家達の作品を読み込んでいるわけでもないですが、文章中に何気なく美術品の描写があってもそのまま流して読んでしまっていたので、改めて文章と作品を照らし合わせて解説してあると、わかりやすくてとても良かったです。

  •  作家と絵画とのエピソードや物語との関係性を集めたもの。絵画や作品も載せてあるのはありがたい。
     個人的には佐藤春夫の薔薇の登場率高いなと思ってたけど、そういう理由があったのねと妙な納得をしてしまった。

  • 第87回アワヒニビブリオバトル「【3日目】おうち時間DEビブリオバトル」2時間目 芸術で紹介された本です。
    オンライン開催。
    2022.05.05

  • ふむ

  • 紹介された図版は、カラーで美しい。

  • 1906年の「草枕」から1979年の「天才画の女」まで「文豪」たちが作品の中で西洋の美術作品にどのように言及し、どのような意味を込めているか。59人60点。(三島由紀夫のみ2点)うち女性は3人。小説家や画家で初めて見聞きする人が何人もいた。

    画家発見
    北園克衛のピエエル・ロワ
    どちらも初めて聞く。ともにシュルレアリズム関係で北園(1902-78)は詩人。詩集「サボテン島」(1938)でシュルレアリスム系の画家に言及。載っているロワ(1880-1950)の「無題」(1931)は詩集では「電流に貫通されたピエエル・ロワの卵とピンク色の三角旗。それらはアスファルトの上に完全に投影する。画像検索もしてみると、キリコとタンギーが混ざったような絵という印象。なぜ今まで知らなかったのかなあ。経歴を見るとキリコによってブルトンに紹介されたとあった。


    数少ない女性
    「野溝七生子のチチアン」
    作家も画家も初めて耳にする。野溝は1897-1987。チチアンは1490-1576。イタリア・ベネチア派を代表する画家のひとりでティツィアーノ・ヴェチェッリオのフランス読み。野溝の「女獣心理」(1940)に出てくる。三角関係の中の二人の女性の姿をチチアンの「聖愛と俗愛」(1514)という作品の中の女性になぞらえている。ティツィアーノなら知っている。

    「吉屋信子のヘルムアフロディトゥス」
    ヘルムアフロディトゥスは両性具有の神。その神がうつぶせに横たわる彫刻で紀元前2世紀ヘレニズム時代作のコピーと思われるものが1608年にローマで発見された。それは乳房があり男性性器のあるヘルム~が全裸でうつぶせになる姿。吉屋信子(1596-1973)は少女作家として知られるが幻想小説も書いているという。「海潮音」(1947)という作品の中で世にたぐいなき美青年の主人公が海で泳いで岩にうつぶせになる姿をヘルム~のようだ、とする文がある。この神も彫刻も作品も初めて知りました。

    「小泉喜美子のレオナルド・ダ・ビンチ」
    小泉喜美子(1943-85)の「月下の蘭」(1979)の中でレオナルド・ダ・ヴィンチの「聖ヨハネ」が出てくる。その絵は両性具有的な面で、小説の主人公が蘭づくりに異常な情熱を持ち、「人面花」を作りたいといい、「ミルトニア・アンドロニュヌス」と名付けた蘭が怪しいつぼみをつけている際に言及。・・蘭に取りつかれる作品

    冒頭は夏目漱石。「草枕」のなかでミレーの「オフィーリア」に言及している。

    島崎藤村の「新生」(1919)でシャヴェンヌの「冬」に言及。小説は読んでないが、この「冬」という作品がいい。ピエール・ビュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1924-98)

    太宰治は「人間失格」(1948)の中でモディリアニの「横たわる裸婦」(1917)に言及。


    著者・谷川渥は1948年生まれ。
    株式会社「システムアメリカ」発行の小冊子「アートフラグメント」に同タイトルで2007年から2019年まで綴ったエッセイをまとめたもの。本にする上で現存作家は除いた。


    2020.12.30初版 図書館

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著者プロフィール

谷川 渥(たにがわ・あつし):美学者、批評家、文学博士。東京大学大学院美学芸術学専攻博士課程修了。國學院大學文学部教授、杭州師範大学客座教授、京都精華大学客員教授などを歴任。日本近代芸術史の諸問題を踏まえながら、マニエリスム・バロックからモダニズム・現代美術にいたる広範な領域を視野に収め、多様な〈美的表象〉を渉猟し、美学と批評を架橋する。著書に『形象と時間』『美学の逆説』『シュルレアリスムのアメリカ』『鏡と皮膚』『図説だまし絵』『肉体の迷宮』『幻想の花園』『ローマの眠り』など多数。

「2023年 『三島由紀夫 薔薇のバロキスム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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