第三の性 (河出文庫 も 1-1 ウィメンズコレクション)

著者 :
  • 河出書房新社
3.00
  • (0)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 11
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309403342

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 沙枝と律子という二人の女性のあいだで交わされた交換ノートのかたちで発表された作品です。

    二人の対話は、「産む」女と「産まない」女という対立を孕みながら、「性」にまつわる意識を掘り下げることへ向かっていきます。「性」は生殖のためのメカニズムでありながら、そこにとどまっていることはできず、他者との直接的なつながりをつくり出さずにはおきません。しかしこれまで男性たちは、女性にとっても「性」がそのようなものであることを黙殺してきたという指摘がなされます。

    このような問題への気づきは、「性」についての意識を掘り下げ問題を共有することへ向けて女性たちをうながしますが、そのなかで新たな問題が浮かびあがってきます。「わたしが子どもを産み育てていきながら、なるほどと感じたのは次のようなことでした。形態的な複数も、本質的な単独者崩壊も、彼は(そして男たち一般は)実体として生きながら、観念的に既成の単独性を持ちつづけるということ。そしてそれは生活の外にある社会の原理と、拮抗する内的手段であるということ。また男たちは女のように十カ月もの間性機能の変化を持続させないために、単純に疑似的な単独性にもぐりこめるということ」。そしてこの新たに前面に立ちはだかる問題は、つねに沙枝の「理解者」でありつづけた夫との関係に影を落としていることが明かされます。

    著者は「文庫版あとがき」で、男女のあいだでこうした問題について対話するためのことばが存在しなかった当時の状況について語っていますが、対話の不成立を対話そのもののなかにくり込む苦しさのようなものが立ち込めているのを感じます。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

森崎和江(もりさき・かずえ) 1927年朝鮮大邱生まれ。福岡県立女子専門学校(現・福岡女子大学)卒。詩人・作家。谷川雁・上野英信・石牟礼道子などと「サークル村」をおこし、文化運動・大正炭坑闘争を闘う。執筆活動・テレビなどで活躍した。主な著書に、『まっくら』『奈落物語』『からゆきさん』『荒野の郷』『悲しすぎて笑う』『大人の童話・死の話』『第三の性』『慶州は母の呼び声』など多数。詩集に『かりうどの朝』『森崎和江詩集』など。2022年、95歳で死去。

「2024年 『買春王国の女たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

森崎和江の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×