闘争のエチカ (河出文庫 は 5-1 BUNGEI Collection)
- 河出書房新社 (1994年2月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309404080
作品紹介・あらすじ
変容しつづける「世界」の中で、言葉は「生」や「歴史」に、どのような場所でまみえることができるのだろう-。現代日本を代表する二人の評論家が、超えるべき「現在」を相手に根源的な"闘争"を宣言するスリリングな対話。
感想・レビュー・書評
-
(01)
1980年代末頃の蓮實重彦と柄谷行人との対談集である。5回にわたる対談は便宜的に3章に分けられている。
主に、批評と文学についての議論であり、二人の対話は2020年の現在においても有効であろう。今もってこのような視点で批評と文学を捉え論じている批評家は少ないように思える。つまり、批評と文学は、当時から既に衰退の局面にあり、本書の延長に考えたとき、現在はさらに劣化した状態にあるようにもみえる。
議論は、もちろん、そこにとどまっているわけではない。交通空間や絶対外国人など、他ではあまりお目にかかれないワードを用いながら、抽象と具体に及ぶ。
構造主義、記号論、ポストモダニズム、ディコンストラクションといった現代思想の方法の検討が行われ、ドゥルーズやフーコーほかの20世紀のフランス(*02)の論陣を援用し、19世紀のキルケゴール、マルクスらにたびたび遡って批判が加えらる。
イメージや物語を暴き、歴史や小説を擁護する。道徳に対して倫理を強調する。無責任や凡庸、そして日常と反復と列挙を掲げる蓮實氏の態度は、興味深い。
(02)
吉本隆明への厳しい批判も見受けられる。また、中上健次、三島由紀夫、大江健三郎、村上春樹、大西巨人、島田雅彦といった戦後の作家らへの評をあり、20世紀の日本の言論史の概観としても読める。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
蓮実重彦、柄谷行人関連で初めに読んだ本だったと思う。
当時の印象は、二人が膨大な本を読んでいて、何か語ろうと思ったらこれぐらい読まなければならないのか、と思ったことだろうか。
あと三島由紀夫が読めなくなって、中上健次を一生懸命読むことになったきっかけでもあったような気がする。
とにかく何というか影響力が強い。
保坂和志が「あの二人は影響力が強すぎるのでどこかで引退したほうがいいのでは」という主旨の発言をしたらしいが(うろ覚えだが)わかる気もする。 -
戦前の京都学派も岩波文化も、実は一種のニュー・アカデミズムだったのですからね、と言っている。