戦前のこわい話〈増補版〉: 怪奇実話集 (河出文庫)

制作 : 志村 有弘 
  • 河出書房新社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309419718

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  • 志村有弘・編『戦前のこわい話 増補版 怪奇実話集』河出文庫。

    明治から昭和の戦前までにあった、怪談実話、不可解な物語、猟奇事件を生々しく伝える、怪奇と恐怖の実話アンソロジー。8編を収録。

    『増刊実話』に掲載された実話短編、丸山茂『闇の人形師』、今藤定長『猟奇魔』、皆川五郎『淫獣』の3編が生々しく、恐ろしかった。

    大田雄麻『春吉と死霊』。死霊に魅入られた悲しい男の話。家にまつわる忌まわしい因縁が不幸を呼ぶ。武蔵野らしい面影を残す片山村で豆腐屋を営む春吉の家では、女房が27歳になると死ぬという不思議があった。春吉の祖母も母親も春吉の妻もまるで図ったかのように27歳で亡くなった。

    青木亮『死馬の呪い』。この話は他のアンソロジーで読んだ記憶がある。吾作の娘が隣村に嫁ぐことになり、娘を慕っていた黒毛の馬が逃げ出す。そして……

    やみのくれなゐ『猫の祟り』。少年たちが虐めていた子猫を引き取り、育てたはずなのに何故にその猫に祟られたのか意味が解らない。辻褄の合わない中で恐怖を描かれても、その怖さは半減してしまう。

    丸山茂『闇の人形師』。江戸川乱歩の小説の如く怪異と謎に満ちた猟奇的な殺人事件の真相が描かれる。『増刊実話』に掲載された実話短編。深夜に清水谷公園で巡査が発見した上品な美人女性の変死体。女性の両の乳房は抉り取られていた。その女性は華族の令嬢だった。

    今藤定長『猟奇魔』。こちらも『増刊実話』に掲載された実話短編。旭川の運送会社に送られた引き取り手の無い荷物。3ヶ月後に荷物を確認すると中から女性の腐乱死体が発見される。

    皆川五郎『淫獣』。またまた『増刊実話』に掲載された実話短編。どこかで聞いた話だと思っていたら、唐沢俊一・ソルボンヌK子『大猟奇』に紹介されていた話であったことを思い出す。農家の貯蔵小屋で見付かった女性の首無し死体。犯人の猟奇的犯行とその結末。

    高橋清治『生肝殺人事件』。大昔に何やら怪しげな民間療法を実行するために連続殺人事件があったというのは、何かの本を読んだことを微かに覚えている。人を殺害して肝臓を奪うという連続殺人事件。犯人の目的は……

    山之口貘『無銭宿』。何が怖いのか解らないうちにそれが幽霊だったと言われても、ピンと来ない。そんな肩透かしを食らわせられたような短編。

    定価792円
    ★★★★

  • 一つ一つの話の結末は、途中で語られた事象がすべて結論づけられるわけでもなく、悪くいってしまえばまとまりに欠けるのだが、そのまとまりに欠けるところが、そういうものだったんだというリアルさを醸し出す効果もあり、なかなか読み応えがあった。

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