わすれなぐさ (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 132
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309419831

感想・レビュー・書評

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  • 愛萌さんが紹介していたからただ読みたくて買ったので事前情報を何も入れずに読みました。
    文体が古風で、そういうコンセプトの本なのか、面白いなと思ったらなんとなんと1933年に書かれたものでびっくりしました!!

    昭和初期に色濃く残る男尊女卑の価値観と、それに抗おうとする牧子やそれをものもとしない陽子など個性豊かな3人の少女が織りなす物語。

    ものすごく面白かった…!!!
    私が男性で、これは古い価値観のものだと冷静に受け止めた上で読んだため、フェミニズム的な文脈にそこまで嫌悪感や当事者感がなく読めてしまった部分もあるのかもしれないが、3人の少女たちの爽やかでお茶目なストーリーにしっぽりとハマりました。

    古風な文体も最初は少し戸惑ったが、キュートでめちゃくちゃ素敵でした!

    ◯特にオススメの読者層
    少女が主人公で(古風な)小説に関心のある人
    昭和初期の価値観に関心のある人

  • 好きなイラストレーターさんが表紙を担当していて、作者さんも内容もよく知らないまま購入
    そうしたらなんと少女小説!

    いやでもこれがまた面白い事

    まずセリフが素敵
    「お母様、今日はおよろしいの」だの「ね、今夜から仲よしのお友達になって下さる?」だの、適当に開いたページからの引用でもこんなに美しい

    そしてキャラクター
    その中でもなんと言っても陽子でしょう
    自分の好きなタイプのキャラクターではないのに、読んでいるとその魔力にあらがえない牧子の気持ちがよくわかるという
    悪女・小悪魔・魔性の女

    あと、キャラクターの深みというのかな、陽子も一枝も読者に想像の(妄想の?)余地を残してくれているんですよね
    人物設定はしっかりしているのに内面描写をしていない事でいろいろと自分なりの解釈が捗るというか
    (宮田愛萌さんの解説とかそれが顕著だったように思う)
    書くこと書かないことのバランスがちょうどいいんですよね
    そりゃー夢見る女子が大量発生して人気作家になるわーと

    90年前の作品、女学校が舞台、そして少女小説
    自分から関わりに行かないタイプの作品でしたが、偶然から手に取り、そしてめちゃくちゃ面白かったというとても良い経験が出来ました

    不勉強にも吉屋信子さんを存じ上げなかったもので、読む前に調べてみたりしたのですが、その情報も読むうえでプラスに働いたなと思います

  • 昔読んだ小説が、文庫で復活していたので早速購入。吉屋信子の書く物語は、少女がまだ窮屈で、従順で素直であることを強いられていた時代に、少女たちに「自分」を持つことの意味を優しく伝えているように思う。

  • クラス内では“軟派”の女王で「クレオパトラ」とあだ名される陽子、“硬派”で「ロボット」と呼ばれる模範生の一枝、個人主義で無口で風変わりな牧子。陽子の誕生日会をきっかけに、陽子は牧子に接近してきて……。

    ------------------------------------------------

    吉屋作品初読み。約90年前にこんな“エモい”小説が書かれていたとは!レトロな言葉遣い、女学校に通う少女達の日常、少女同士の微妙な関係や感情、これぞ少女(百合)小説。

    クラスの中でもいちばんのお嬢様で女王様気質な陽子は牧子をイベント毎に振り回す。タクシーで警察の検問を振り切るとか無茶苦茶なこともするし、(本人は意図的にではないが)牧子にとって辛いことも言うのだが、なんだか嫌いにはなれないキャラクターなのだよなあ。
    「お姉さんなのだから、お母さんやきょうだいを護りなさい」「女は子を産んで良妻賢母になりなさい」と言われている牧子・一枝とは対照的に、自由奔放、解放的?な部分が印象に残るせいだろうか。
    そして陽子のこの部分があってこそ、クラスでの身分違いの友情/恋、陽子の魅力や“おまじない”が引き立っている。

    牧子の父は息子の亙(わたる)がピアノを弾くことに顔をしかめるも、終盤のある出来事をきっかけに心を改めるのだが、男性も女性もいつの時代も生きづらいものだなあと思ったり、令和にも通じる感覚を著者が描いていたことには良い意味で驚いた。

    ラストはハッピーエンドで良かった。手紙を読んで一緒に涙ぐむ一枝と牧子、牧子が「私達三人で仲よしになって」と陽子に伝えるシーンがすごく良い。
    作風、文体、少女達の美しい友情/恋、素敵な作品だった。

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著者プロフィール

1896年、新潟市生まれ。52年「鬼火」で女流文学賞、67年菊池寛賞を受賞。『花物語』『安宅家の人々』『徳川の夫人たち』『女人平家』『自伝的女流文壇史』など、幅広いジャンルで活躍した。著書多数。73年逝去。

「2023年 『返らぬ日』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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