ナボコフの文学講義 上 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463810

感想・レビュー・書評

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  •  小説『ロリータ』の大ヒットで世界的に知られる著者が、アメリカの大学で教師をしていたときに講じた講義をまとめた一冊。『ボヴァリー夫人』(フロベール)、『変身』(カフカ)、『ユリシーズ』(ジョイス)など、4か国7作品を取り上げている。
     著者は本書で、「文学は作り物である」、「文学は思想に奉仕しない」、「文学なんて現実的な価値はまるでない」と断言する。その一方で、いや、だからこそというべきか、文学は著者にとって「読み解きと解釈のゲーム性に満ちた宝の山であり、聖者信仰にも似た敬虔な手つきで一字一句をほぐしてゆく(池澤夏樹、解説)」。
     文学はいくらでも自由に読むことができるが、著者の読み方は対象作品への情熱にあふれており、その愛情のかけ方はあきれるほどに緻密で面白い。古典文学を読めない人にこそおススメしたい、小説の読み方読本。

  • 9/9読了。『ロリータ』のナボコフによる文学論講義の上巻。本書は長らく入手困難で実はかつての復刊ドットコムにもリクエスト投票したほど待望の一冊。それが文庫版で復刊して感慨もひとしお。大学での講義録や講義ノートのパッチワークで再現された"授業"は、ありがちな著者のプロフィールや時代背景の説明を最小限にとどめ、テキストをひたすら読み込みます。文学作品としての小説を楽しみ方を惜しみなく披露し、構造、文体、技法に拘る"小説オタク"っぷりを発揮しています。この上巻で紹介されている3作品は未読なのですが、とにかく圧倒されました。下巻やロシア文学講義も楽しみですが、積ん読本が他にも氾濫してるのでしばらくお預けです。

  • (後で書きます)

  • マンスフィールド・パーク、荒涼館、ボヴァリー夫人について、実に詳細でVIVIDな「講義」である(ナボコフのメモを組み立てなおした編者の力でもあるだろうが)。アップダイク夫人は、この講義を聞いていた、とアップダイクが書いている。

    ナボコフの主張としては、自分の眼鏡を通しただけの癖のある視点で読んではいけない、というもの。文学的天才が自己の脳髄から生みだした小宇宙については、読者は、ありのまま正確に詳細に緻密に味読せよということか。神髄は細部と、その複雑な組みあがりの中に現れるということだ。

  • 愛を感じる。そしてまた勇気を貰える解説だ。

  • 書評どころかまさしく読書感想文になってしまうので先に謝りますゴメンナサイ。

    だって、ナボコフ先生の授業、面白いんだもん。
    えっとね、第一印象は「いや~~ん、この、IQの高い陰湿インテリめ!」でした。
    あ、すいません、石投げないでくださいそこ。

    だって本当にそう思ったんだもん。ナボコフ先生、スキだな。いいなぁこの、IQの高い人が子供みたいに熱心に無邪気にかつ執拗に、重箱の隅をつつきまくってるトコ!たまらんぜ。だった。陽気な陰湿さというのかな、ねぇ、もう、楽しくて大好きで仕方ない、その姿勢は伝わるんだけどそもそもIQ高い人だから、あ、そこ、そこまでえぐりきっちゃいますか?で、容赦がない。


    例えば最初のほうにあるジェイン・オースティンについて。まず冒頭の文章について取り上げ、冒頭付近でいかに作者が状況のお膳立てを整えているかの作者賛歌が続く。それはまぁ、目の前でかえるの解剖(実際には見たことないけど)をする解剖学の権威のメスのように丁寧かつ、「しつこい」。いやこれ、悪い意味じゃないですよ。でも例えば、登場人物のひとり、ノリス夫人がいかに鼻持ちならない女性であるのかというのをえんえん7ページにわたって丁寧に、もう解剖していたらホネも粉々になるくらいに分析して~解析して~結論付けて~いやさ仮定を立てて~そうしてきわめて無慈悲に「はい、やなやつ~」と断じているのですよ、やり口が上質なのに、メスはきれっきれですからね。ノリス夫人、血まみれのずだぼろです。気の毒でもう、彼女のシーン、読めないくらい(笑)

    でもなぁ、ここまで個性的な人の講義だったら聴講したいな。今だったらきっとストリーム配信だって出来ただろうに。もったいない!ネットの功罪は多々あるけれど、こうした本を読むと、あーもっと早くインフラが整っていたら!なんて、思ってしまうのでした。ま、この手作り感のある講義録はこれはこれで、途方もなく、素敵なのだけれど。

    後半も楽しみだな。意地悪なおじさん、いやじゃないわ、あたし。

  • 上下巻読了後の感想は、とてもエキサイティングな内容でしたということに尽きるかな。お急ぎの方や、ナボコフ爺が取り上げている古典を未読の方は、冒頭の僅か10ページほどにまとまられた「良き読者と良き作家」だけでも目を通すことをお薦めする。文学だけでなく、絵画や映画やアニメなど様々な芸術作品に触れる際の心構えに共通する、芸術学のキモの部分についての見解が書かれている。

  • 『マンスフィールド・パーク』を手放しで評価するのをためらい、『ボヴァリー夫人』を手放しで評価するところ、芸術至上主義ナボコフの判断基準が脂っこくもある。なので、彼の論じていたディケンズをいちばん読んでみたくなった。

  • クンデラの小説論と通底するものが(当然かもしれないが)ある。

    ただ、自分ではここまで読む能力は無い…
    しかし、こういう読み方ができないと読む意味なんか無い、的なことを言われていると、そうなのかなぁ、と。

    もう一度は読みたい。

  • 『マンスフィールド荘園』(邦題は「マンスフィールド・パーク」)と『ボヴァリー夫人』は未読。
    元ネタを知らなくても充分に楽しめるが、読んでおいた方がより楽しめるのは確か。
    『荒涼館』についての長い講義録を面白く読んだ。
    冒頭の『良き読者と良き作家』には『良き読者になるためには、どうあるべきか』の10の条件が挙げられていたんだけども、学生の答が『情緒的に一体になる』『筋のある小説』『社会・経済的観点』に偏っていたそうで、ちょっと驚いた。うーん、洋の東西を問わず、そういう傾向ってあるのかしらん……。

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著者プロフィール

1899年ペテルブルク生まれ。ベルリン亡命後、1940年アメリカに移住し、英語による執筆を始める。55年『ロリータ』が世界的ベストセラー。ほかに『賜物』(52)、『アーダ』(69)など。77年没。。

「2022年 『ディフェンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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