居心地の悪い部屋 (河出文庫 キ 4-1)

  • 河出書房新社
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感想 : 65
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464152

感想・レビュー・書評

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  • 不穏さが漂うアンソロジーでした。面白かったです。
    既読の作品もありましたがどれも「どう生きたらこんなこと思い付くんだろう…」と思ってしまいます。
    「オリエンテーション」「ケーキ」が特に好きでした。
    オリエンテーション…こんな会社でやっていけるのか不安が募るばかりです。部長がとても気になりますが考えないようにしなければならないのでしょう。
    ケーキは読んでいてとても不安になりました。何か精神に病を抱えてる人の思考がその流れのまま文章になっている気がします。。
    あざは既読でしたがアンナ・カヴァンはやはり良いです。
    こんな作品ばかりを集められる岸本さんのアンテナとセンス…信頼しています。

  • サイコーですわ

    「へべはジャリを殺す」
    ・ジャリはへべがいると見当をつけた方向に笑みを向けたが、へべはそこにはいなかった。
    ・よせよ友達じゃないか

    緊張感のあるシチュエーションでのコメディは緊張感不条理感を増す装置になる。
    ずっとなんかおかしくて違和感があるのに、全て正しい当たり前の手順のように進む異常事態。
    岸本さんの解説の、低体温の暴力…なんてかっこいい表現!

    「チャメトラ」
    ・だから男たちはみんな胸の内で夢を育むことを覚え四六時中夢を見た

    辛い状況下で人がどう生きるか、ということから、頭クラクラする思っても見ない展開、そして結びの、〜夢の重みで飛べなくなるまで〜かっこいいーー!
    空腹とはいえゲレロの傷口から出た長椅子と寝台と竃を針金に差し、火の上で炙った。豚肉に似た味がした。とは…うまそうだな。

    「あざ」
    思春期の友情と愛情がないまぜになった感覚。
    そのわずかなすっかり忘れてしまっていた断片が襲ってくる。大したことは起こっていないのになぜか引っかかっている断片。それがおよそありえないような奇妙な体験の中に立ち上る。それは恐怖とも郷愁とも言える。

    「どう眠った」
    ・こっちはピラミッドみたいに眠ったよ。
    ああそう。
    といっても小ぶりのピラミッドなんだけど。

    眠りという究極的な個人的体験を共有しようとするとこんなにも不条理になるのか。夢の話が不条理なのは普通だがそこを共有しようとするとこうなるのか。〜みたいに眠ったよ、、入りも独特。
    そしてその不条理の中にある日常。
    嫌なことを言う人間自分が正義だということを疑わずまたそれを善意で押し付けてくる人間。それに怒りを表せず微かな抵抗でなんとなく不機嫌にすることしかできない弱い自分。
    こういう嫌な感じを突きつけてくる話がもうべらぼうに好き。

    「父、まばたきもせず」
    娘の顔の泥が乾いて灰色になり、やがてひび割れる、という描写好きだなぁ。
    なかなか重めの内容の話が、ただ起きている状況に対して淡々と進んでいく話。ただ拍子抜けぐらいに話は進み淡々と終わり、タイトルを思い出す、「父、まばたきもせず」…痺れる!

    「分身」
    うん、それだけの話なのだがすごくいいよね。

    「オリエンテーション」
    あなたには関係のないものです。がそこここにあるのがいい。
    奇妙なマニュアルがたくさんあるこの会社と私の会社にどれだけの違いがあると言うのか。

    「潜水夫ダイバー」
    ・こいつさえいなくなれば何もかも元通りうまくいき〜
    ・ピーターは体じゅうに力がみなぎるのを感じていた。
    …いや、そういうとこやぞお前。
    身につまされるわ自分も含めて人は卑小で簡単に人を見下しそして懲りない。

    「やあ!やってるかい!」
    不意に屈託のない声が肥大化した自意識を打ち破り
    勝手に慌てふためく。これは俺だ。各年代ありとあらゆる俺だ俺はいくつになっても性を超えてもこうやって内なる自意識に囚われいつも屈託を抱え…などとごちゃごちゃ考える自分に背後から声がする、やあ!やってるかい!

    「ささやき」
    シルプルになんで面白い話だ!すきだ!
    ちょっと間抜けなユーモラスエピソードだったのに急なサスペンス。安心し切っていたリラックス空間は冷え冷えとした油断ならない空間に変わる。そしてそのきっかけとなる録音された音が怖がらせようとするもんでなく見てよこの人、なんていう普通の会話なのがいっそ恐ろしい。
    そしてラストの一言、なんてゾッとする言葉か。なんて何気ない言い方か。これ以上ないくらい恐ろしく
    しっくりくるラストにゾクゾクする快感!
    これ関西弁でもいいな。「そんな」は「すんな」くらいの発音がいいななどと考えるのも楽し。

    「ケーキ」
    丸々となりながらも何かに囚われできない。
    できるためにしなければならなかったことも思い煩っていた内に機を逸してしまう。
    「〜についてあまり考えなくなった、そしてとうとうほとんどそのことを考えなくなった」人生とはこういうものかもしれないが、そうだとしたら嫌なことだ。

    「喜びと哀愁の野球トリビア・クイズ」
    予告編でもう名作だとわかる映画がある。デヴィッドフィンチャーとかのそれは全部好き。なんなら本編より面白いものも。この話正にタイトル勝ち。このタイトルのカッコ良さすごい。肝心の内容は…これがまた抜群に面白い、それぞれに人生があるのだ。
    神は細部に宿る。
    解説岸本さんのエディ・ゲーデル選手の話がすごいいい!


    素晴らしいものに出会うとボキャブラリーは消える。好き、だけ。

  • 特にどうともない、めちゃくちゃ最悪な事態が起きるわけでもないけど読みはじめと読み終わりで感覚が違っている、特にどうというほどのことでもないのにモヤモヤする、どれも短い話でネタバレを気にする必要もない物語なのに、どこか違う場所に連れて行かれて途中下車したような。


    カヴァンの掌編が目当てで買ったけど他の作家の作品もよかった。「チャメトラ」「オリエンテーション」「ケーキ」が好き。
    なんか一文が長い作品が多いように感じた。なかなか句点がやってこないというのもなんとなく不安を煽るものなのかもしれない。
    どこ行くんだろうこの文、のような、行き先不明の。

  • 書名の通り、読んでいるとどこか落ち着かなくて不安になるような物語を集めた短編集。
    岸本さんの訳がとても読みやすかった。
    どれも個性的な作品ばかりで飽きさせない。
    『オリエンテーション』
    『ケーキ』
    『喜びと哀愁の野球トリビアクイズ』
    が良かった。

    もう読まなくていいと思いつつ、気づくとまた手に取っていたたまれなさを味わっている、そんな本だった。

  • 訳者の確かな手腕と選定眼を感じさせる素敵な一冊。
    文庫版とハードカバー版で一話ずつ収録作品が違い、どちらも楽しめた。

  • 編訳者あとがきにも、ある通り「電車を一本乗り違えただけなのに、もう二度と元の世界に帰れないような気がする」
    不安な気持ちにさせてくれて、何処に気持ちを落ち着かせてよいのか、分からなくなるのが素敵。
    気持ち悪い事は喜びだな。

  • 岸本さん編者なんて、そりゃ居心地最悪だよ。

  • ひとつの話を読み終わるたび、ため息とともに頭を抱えた。
    とても奇妙な短編集。
    前半が特に印象深かった。

  • うずっとする怖さ、不条理が私好み。これらの作家の他の作品も読みたくなった「へべはジャリを殺す」「あざ」「来訪者」 90

  • 想像していた"居心地の悪さ"とは違っており、個人的には期待外れ。意味不明な要素が多く、人を選ぶ作品。一話読んでみて面白いと思えるかどうか。

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著者プロフィール

1966年生まれ。現代アメリカを代表する作家の一人。ブラウン大学文芸科教授。邦訳に、『遁走状態』(新潮クレスト・ブックス)などがある。

「2015年 『居心地の悪い部屋』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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