たんぽぽ娘 (奇想コレクション)

制作 : 伊藤 典夫 
  • 河出書房新社
3.50
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  • (8)
  • (4)
本棚登録 : 628
感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309622071

作品紹介・あらすじ

「たんぽぽ娘」改訳決定版のほか、甘い男女の出会いを描いた変奏曲「河を下る旅」「11世紀エネルギー補給ステーションのロマンス」「ジャンヌの弓」、宇宙クジラと交流する孤独な男「スターファインダー」、過去が保存された部屋の扉をあける「失われし時のかたみ」、遺作となった名品「荒寥の地より」など、本邦初訳の7編を含む全13編を収録。

感想・レビュー・書評

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  • なんとまあ、ラブリーな表紙になったことでしょう!
    若かりし頃読んで大好きになったのだけれど、絶版になってしまった『たんぽぽ娘』。
    ビブリア古書堂シリーズの人気にも後押しされたのか
    復刊の運びとなって、ファンとしてはうれしい限りです。
    『ジョナサンと宇宙クジラ』も入れてくれていたら、最高だったのに!
    という心の叫びは置いておくとして。。。

    「おとといは兎を見たわ、きのうは鹿、今日はあなた。」
    十代のあの頃は、初対面のマークに屈託なく語りかけ、
    運命の恋に一途に身を捧げるジュリーに心を重ねて読んだものでした。
    でも今は、知らず知らずのうちに、バスを降りて不安げにマークに近づいてくる
    アンの心に寄り添いながら読んでいる。
    読みたくても読めなかった時間が、重ねた歳月が
    この物語の味わいを、さらに芳醇にしてくれた気がしました。

    それにしても、あとがきでも触れられている通り、
    やっぱりロバート・F・ヤングはボーイ・ミーツ・ガールを描かせたら天下一品!
    本格派SFの翻訳では、原作に忠実なあまり難しい理系単語が飛び交って
    文系脳の私は「ひぃぃ!」とか「むー!」とか叫ぶしかない伊藤典夫さんの訳も
    ボーイ・ミーツ・ガールものでは、とてもやわらかく、心地よいのです。

    ヤングはこんな作品だって書けたんだぞ!と世に知らしめてあげたかったのか
    シニカルな表情の作品、ひねった作品も並ぶ中、私はやっぱり
    ロマンティック路線の『たんぽぽ娘』・『荒寥の地より』・『ジャンヌの弓』が好き♪

    遺作という『荒寥の地より』は、古き良き時代の暮らしや風景への
    作者の思いがしみじみと伝わってきて、せつない中にも温かさが溢れていて。
    そして『ジャンヌの弓』は、序盤で圧倒的な武器として登場した弓矢が
    いつしか恋人たちの胸を射抜くキューピッドの矢に変身するのがたまりません。

    手放してしまっても、ああ、また読みたいなぁと思わせてくれる本がある。
    本読みの幸せですね。

  • 『ビブリア古書堂の事件手帖』に登場し気になっていた作品『たんぽぽ娘』をやっと読んだ。
    『たんぽぽ娘』はステキな短編でした。

    丘の上にいたのは、たんぽぽ色の髪が風におどる、未来から来た女...
    「おとといは兎を見たわ、昨日は鹿、今日はあなた」
    と告げる。

    未来から来たとあっさりと語ったり、出会ったばかりの見知らぬ男性を「あなた」と呼ぶことに不思議を感じつつも、それ以上にほろ苦さや溢れる想いが全体を覆い、ステキな結末へと紡がれていく。
    「タイムトラベル」ものが好きな私に直球です!

    さて、本書は『たんぽぽ娘』著者ロバート・F・ヤングの200編近い短編の中から伊藤典夫氏が選んだヤング傑作13編です。
    「たんぽぽ娘」以外では「ジャンムの弓」だけが良かったかな。
    2編以外は、読者のことを意識していない、登場する人物が勝手に躍動していく話でもない、著者だけの自己満足な作品と感じた。
    残念。


    本書を読み終えてから繰り返しチカチカするフレーズがある...
    (待っていて わたしを 待っているよ あなたを)

    タイムトラベルものの作品にでてきたフレーズだと思うんだけど、想い出せない。
    北村薫さん「時と人」シリーズの「リセット」だったかな...。
    あー、なんだったかな...。

    本書全体は★2つだけど、「たんぽぽ娘」は★5つでした!

  • 表題作を最初に読んだのはいつのことだったかを考えていて、もしかしたらこれが初めてなのかも、と思い至った。あまりにも有名なアイディアで、すっかり読んだような気になっていた。他の収録作もほぼ初見。楽しんで読んだ。

    タイムトラベルとロマンスっていうのは実に相性が良くて、それも特に日本人好みらしい。オールタイムベストというと必ず入る「夏への扉」をはじめ、国内作なら「マイナス・ゼロ」や、懐かしの「タイムトラベラー」もそうだよね。(「時をかける少女」と言うべきなんだろうけど、私はテレビの少年ドラマシリーズをこよなく愛しているので)

    「たんぽぽ娘」のようなセンチメンタルなお話ばかりかと思ったら、皮肉な味わいだったり、ちょっとダークな感じのものもあって、「良き時代のSF」の香りがたっぷり。第一級のSF作家とは言えないけれど、もっと紹介されてもいいと思った。

    「たんぽぽ娘」以外はあまり知られていなかった理由の一つを、あとがきで、編者の伊藤典夫さんが書いている。ヤングは長編が「すべて壊れている」と断言できるのだそうだ。
    「少女愛ばかりが目立ち、それとは対照的に成熟した女性への憎悪が前面に押し出されてくるのだ」だって。うーん、そうなんですか。

    ヤングの長篇がどれくらい「壊れている」のかはわからないが、大体、SFは大人の女性が苦手である(これは前にもどっかで書いた気がする)。ひたすら好まれるのは少女。これがSFというジャンルそのものの性質から来るのかどうか、何とも言えないけれど(その可能性は結構高いかも)、長くSFを読んできて、しばしばこの点に引っかかりを覚えてきた。アニメ方面だともう露骨だものね。

    SF(特に古典的SF)は、宇宙とかメカとかいわば「コドモの興味」を徹底的に追求していったものだ(美化して言えば「心の中の少年」ってヤツね。ううっ)。一段低いものと見なされて、なかなかブンガクの仲間に入れてもらえなかった状況は、現在では変わってきているけれど、本作のような昔ながらのSFが、ケチをつけながらも好ましいのはノスタルジーゆえか?

  •  実家の押入れの中にコバルト版があるはずだけど、もう探しようがないので、改めて未紹介作品を含む短編集を読んだ。
     ヤングという作家のイメージとして、ロバート・ネイサンやジャック・フィニイのようなノスタルジック・ファンタジー作家だと勝手に思い込んでいたが、風刺っぽいもの、スペオペ調など、多彩なものを書いていたんだ!
     表題作のよさは改めてコメントするまでもないが、「河を下る旅」はイチオシ。再生の物語。これだけでも読む価値あり。
     バロウズの火星シリーズとブラッドベリ作品ののオマージュとなっている秀逸な一品もある。予備知識がないと全く楽しめないが、、、

  • わたし、ずっと待っていたの。ずっと。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「ずっと待っていたの。ずっと。」
      同じ思いの方が、多勢いらっしゃるでしょうね。でも同じ訳を一度に3冊も出さなくてもねぇ~
      (これは改訳だけど...
      「ずっと待っていたの。ずっと。」
      同じ思いの方が、多勢いらっしゃるでしょうね。でも同じ訳を一度に3冊も出さなくてもねぇ~
      (これは改訳だけど)
      2013/05/30
  • 表題作のタンポポ娘と河を下る旅が1番好きだと思った。いくつかよく自分にはわからない短編があったけど、全体的に面白かった。

  • 全編を通して、ふわっとした可愛らしい印象の珍しいSF作品集。表題と合ってる。
    宇宙空間でのハードな戦闘描写もあるにはあるが、どちらかと言えばファンタジー寄りな作風。
    にもかかわらず、背後に得体の知れない怖さが見え隠れしていて、奇想コレクションとは言い得て妙だなと思った。

    ただ、作家の幼女〜少女嗜好が露骨な部分もあって、すでに大人になり過ぎたというか、BBAの私は立つ瀬もなく(笑)
    現代アメリカ社会においては、二側面からスケープゴートにされたことだろう、などと思ったり。

  • 短編集。
    「たんぽぽ娘」だけ読んだ。

    2014.01

  • 『ビブリア古書堂~』からしったクチです。ミーハー丸出し。ダントツで表題作が良かった。古典SFのお手本のような作品。ハインラインの『夏への扉』のような。全体としては表題作を超えるものはなかった。ヤングは日本受けしないんだろうなぁということはなんとなく感じた。2013/339

  • あああ、面白かったです。13編の短編、どれも胸の震える面白さでした。でもやっぱり表題の「たんぽぽ娘」ですかね! 最後のあの、うわあああ、という感動はたまりませんでした。「河を下る旅」もいいなあ。

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著者プロフィール

1915年、ニューヨーク州生まれ。53年、デビュー。F&SF誌やサタデー・イブニング・ポスト誌などに200編近くの短編を発表。1986年没。短編集に『ジョナサンと宇宙クジラ』『ピーナツバター作戦』。

「2015年 『たんぽぽ娘』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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