挑発する少女小説 (河出新書)

著者 :
  • 河出書房新社
4.04
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感想 : 59
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  • / ISBN・EAN: 9784309631349

感想・レビュー・書評

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  • 好きだわ〜斎藤美奈子さん

    はい、少女小説を斬ります
    まずは美奈子さんの言う少女小説のお約束ごとから
    ①主人公はみな「おてんば」な少女である。
    ②主人公の多くは「みなしご」である。
    ③友情が恋愛を凌駕する世界である。
    ④少女期からの「卒業」が仕込まれている。

    そんな約束ごとを踏まえた9作品を今も読む価値があるのか、あるとしたらポイントはどこなのか
    そんな視点を美奈子さんの爽快すぎる語り口で解説してくれたのが本書です

    で、選ばれた9作品がこちら
    ・バーネット『小公女』(1905)
    ・オルコット『若草物語』(1868)
    ・シュピーリ『ハイジ』(1880)
    ・モンゴメリ『赤毛のアン』(1908)
    ・ウェブスター『あしながおじさん』(1912)
    ・バーネット『秘密の花園』(1911)
    ・ワイルダー『大草原の小さな家』(1932)
    ・ケストナー『ふたりのロッテ』(1949)
    ・リンドグレーン『長くつ下のピッピ』(1945)

    どれも名作中の名作
    でもたぶん『あしながおじさん』以外は読んだことない(映像作品では見たことあるよ)
    なぜならわい少女じゃなかったから

    でも本作を読んでみて、原作読んでみたいな〜って思いました
    それはとりも直さず美奈子さんの書評が素晴らしかったという証明になるのでわ?と思われます

    そうそう、最初の命題ね明大中野ね
    「今も読む価値があるのか?」ってやつよ

    美奈子さんが導き出した答えについては本書を読んで頂くとして、わいの意見としては結局美奈子さんに一票なのです

  • 世界中でヒットし、今も読み継がれている、10代の少女が主人公のリアリズム小説9作品の解説。日本でも60年代のジュニア小説、80年代のコバルト文庫、2000年代のケータイ小説など多くが生まれたが、この9作品のように長生きはしていない。何故か。

    ひとつは、時代や文化の隔たりを超えて、少女に訴えかける普遍性を持っていたこと。
    ひとつは、海外ものだったために古さがバレなかったし、異国のお話はオシャレに感じたりさえしたから。

    特徴は四つ。
    (1)主人公はみな「おてんば」な少女。ジェンダー規範を大なり小なり逸脱。良妻賢母教育のツールとして作られたのに、読者の支持を得て大人社会の陰謀を「出し抜いていた」。
    (2)主人公の多くは「みなしご」。19世紀の時代を反映しているからだとも言えるが、親を失った子供は自力で人生を切り開かざるを得ない。そこからドラマが生まれる。
    (3)友情が恋愛を凌駕する世界。しばしば物語には「女の子らしい女の子」か登場。主人公の個性を引き立てる役にもなるが、主人公は男の子よりも友情を優先する。
    (4)少女期からの「卒業」が仕込まれている。「おてんば」は成長とともに失われてゆく。
    別言すると、どれほどハメを外しても将来は約束されているから読者は安心して読めたのか。
    或いは一見「保守的」に見える結末も裏には意外な事情が隠されているのか。
    或いは、読者には「誤読する権利」があるので、多様な読み方ができるテキストでもあったから、とも言えるかも。

    以上が本文に入る前の斎藤美奈子女史の「はじめに」の概要である。コレで「小公女」「若草物語」「ハイジ」「赤毛のアン」「あしながおじさん」「秘密の花園」「大草原の小さな家シリーズ」「ふたりのロッテ」「長くつ下のピッピ」の重要な部分はもうわかった。もう読まなくてもいいんじゃないか。私もそう思いました。

    でも、本文を読んだらとっても面白くて置くこと能わざるを経験します。そりゃそうでしょ。原作やアニメで、あんなにも親しんできた物語を女史が案内するんですよ!なんか町山智浩さんの映画評につながるところが、女史の文学評にはある気がする。文体が読みやすいわりには構成がしっかりしていて、新しい視点がある。そして、反権力という点で一本芯が通っている!そういう意味では丸谷才一や吉田健一とは違う。
    ‥‥それはともかく、やはり1番面白かったのは、(4)の部分です。特に、女史が想像したり紹介したりする「その後の物語」には共感しきりです。

    何度も言いますが、私は一貫して「頑張る女の子」推しです。決して「男の子」ではない。
    何故なんだろう。
    女の子には、男の子よりも「未来」がある気がするから。
    元男の子だった私の叶えなかった夢を叶えてくれそうな気がするから。
    元男の子の勝手な思い込みなのかな。
    でも、こんなこと、市井のいち老人が言っても女の子は誰ひとりとして「責任」なんか感じたりしないでしょ。
    でも男の子は、そんなこと聞くと何故か一定数「責任」を感じるんです。そこんところが、違いかな。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さんの仰言っているコトから松田道雄を思い浮かべている。
      kuma0504さんの仰言っているコトから松田道雄を思い浮かべている。
      2021/09/15
    • kuma0504さん
      猫丸さん、コメントありがとうございました♪
      すみません、松田道雄って、読んだことがないんです。
      猫丸さん、コメントありがとうございました♪
      すみません、松田道雄って、読んだことがないんです。
      2021/09/15
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      kuma0504さんへのお薦めは「明治大正 京都追憶」そうそう思い浮かべたのが「私は女性にしか期待しない」でした、、、
      kuma0504さんへのお薦めは「明治大正 京都追憶」そうそう思い浮かべたのが「私は女性にしか期待しない」でした、、、
      2021/09/17
  • “かつて夢中で読んだ人も、まったく読んだことがない人も。
    いまあらためて知る、戦う少女たちの物語”
    (1)魔法使いと決別すること――バーネット『小公女』
    (2)男の子になりたいと思うこと――オルコット『若草物語』
    (3)資本主義社会で生きること――シュピーリ『ハイジ』
    (4)女の子らしさを肯定すること――モンゴメリ『赤毛のアン』
    (5)自分の部屋を持つこと――ウェブスター『あしながおじさん』
    (6)健康を取り戻すこと――バーネット『秘密の花園』
    (7)制約を乗りこえること――ワイルダー『大草原の小さな家』シリーズ
    (8)冒険に踏み出すこと――ケストナー『ふたりのロッテ』
    (9)常識を逸脱すること――リンドグレーン『長くつ下のピッピ』

    目次を見ただけで胸がキュッとなる女性は多いのでは?私自身もかつてこれらの作品を夢中になって読み、思いっきり感情移入していた元少女です。

    著者の斎藤美奈子さんの文章が温かく、勇ましく、辛口がピリッときいていて、読んでいるうちに気持ちがどんどん前向きになる。少女小説の登場人物達との再会の場を用意し、「あなたが今輝かしい大人ではなくても、すっかり妥協を知った人生を送っていても、元少女よ、共に生きよう!強く生きよう!!(あ、男子もいたんだった)」と熱いエールを贈ってくれる同窓会の幹事さんのよう。
    私自身はもうちょっとしっとりとした気持ちで読んでいた『若草物語』も、斎藤さんの手にかかれば勇猛果敢な元少女応援歌!


    ところで、あらためて「少女小説」とは何か。
    斎藤さんによれば、「少女小説」には四つの共通した特徴があるそうだ。
    ①主人公がおてんばで規格外な少女であること。
    ②主人公の多くがみなしごであること。
    ③友情・同性愛が、恋愛・異性愛を凌駕すること。(これに関連して、「少女小説」では、ジェンダー規範に則った女の子らしい女の子が主人公の親友や姉妹として存在する。私自身が通った大阪の小学校を思い返すと、「ジェンダー規範に則った女の子らしい女の子」の方がよっぽど規格外だった気もするが)
    ④作品内で「少女期からの卒業」が盛り込まれていること。
    この四点を基本の視点として、当時の社会背景も織り込みながら、「少女小説」の代表的9作品を読み解いていく。

    特に『ハイジ』の解説が面白かった。再読が楽しみになる新たな視点をたくさんもらった。
    ●なぜアルプスが作品の舞台として選ばれたのか。
    ●都会なくしてリゾート地は成立しない。「そうだ、スイスへ行こう」
    ●都会生活はハイジの人生に何をもたらしたのか。
    ●ペーターの扱い・立ち位置
    ●ハイジの無邪気さの正体は?
    ●『ハイジ』は過酷な資本主義社会を生き抜く子どもたちの物語
    ●少女たちに向けた『ハイジ』の裏メッセージとは?
    『ハイジ』という小説はとても面白いが、ハイジという少女は私にはちょっと掴みどころのない不思議な子だった。斎藤さんの「ハイジは過剰適応じゃないのか」「夢遊病は単なるホームシックなのか」との指摘で、リアルな少女の姿をやっと感じ取れた気がする。
    そうだ。言われてみれば、皆に愛されるハイジの「子供らしさ」は大人が好む「子供らしさ」だ。子供って結構不機嫌だったり、警戒心が強かったりするものだし、そんなにすぐに新天地に馴染める子の方が少ないだろう。
    ハイジに立派な後見人も付いてめでたしめでたしというラストに対しても、斎藤さんはスパパパーーーンッと一刀両断。笑ってしまう反面、「ハイジ良かったなあ、羨ましいなあ」と思った過去の私の軟弱さがちょっと恥ずかしい(笑)


    私は大学4年生の夏に、一度少女小説に再会している。
    大学図書館内をぶらついていたときに児童書コーナーが異様に充実していることに気付き、懐かしの絵本から読み始め、童話、昔話と進み、福音館の『秘密の花園』に辿り着いた。『大草原の小さな家』、『ピッピ』、『小公女』、『ハイジ』、『赤毛のアン』、『あしながおじさん』……本書では紹介されていない作品も手当たり次第夢中で読んだ。
    久しぶりに再読してみると、子供の頃はヒーローのように強く、格好良く見えた少女たちの孤独や弱さもよく見えるようになっていた。反対に嫌なヤツと思っていた登場人物たちの言い分や事情を理解できるようになっていた。子供の頃にはよくわからなかった/ちょっと物足りなく感じた小説の結末が、心にじんわりと沁みるようになっていた。
    自分は変わったのだなとその時に知ったが、少女たちや登場人物たちの新たな一面を知ったことで、かえって作品への愛着は増したように思う。自分の胸の内に、少女たちがまだ笑顔で生きていることに気付き、それも嬉しかった。
    成人式や大学の卒業式に出席しなかった私にとっては、あの再読体験が「少女時代からの卒業式」だったかもしれない。


    ※実は本書で紹介された9作品のうち、『二人のロッテ』だけは読んでいない。これは読まなくては。でも本当のところ、9作品全部今すぐ読みたいくらい。読書熱をガンガンあおられてしまった。

    ※Audible利用(7h1m)
    読了まで3日間(1.1倍)

    • ゆたこちさん
      なおなおさん♪『花開くアメリカ児童文学』調べてみたら、表紙が素敵すぎです~(*´艸`) 内容も面白そう。「読みたい」に登録いたしました♪

      ...
      なおなおさん♪『花開くアメリカ児童文学』調べてみたら、表紙が素敵すぎです~(*´艸`) 内容も面白そう。「読みたい」に登録いたしました♪

      私は『若草物語』は好きでしたが、『あしながおじさん』って印象がずっと薄かったんですよ。
      この本で知ったのですが、掲載は中流階級向けの奥さま雑誌だったそうで、もともとは子供向けの本ではなく、年頃の女の子をもつ親向けの子育て指南書的読み物だったみたいです。
      女の子に贈りたいお洒落小物の商品名や読ませたい本、また全寮制女子大のすすめなど、プロモーションががんがん含まれているし、中流階級の奥さま方にとって安心&満足な結末が用意されている、と。でも、よく読むと著者の経歴ならではの社会派の視点もしっかり盛り込まれているそうで、なんだか具沢山な話だったんだなあと印象が変わって驚きました。
      『あしながおじさん』の章は、斎藤さんの辛口通り越して悪口が冴え渡っているので(笑)、もしご興味があればこの章だけでも読むと面白いかもしれないです(*^-^*)

      感想、いつも長くなるばかりで思うように書けないので、面白かったと言って頂けて嬉しいです(*^^*ゞ
      いつもコメントも長くてすみません(。-人-。)
      2023/03/07
    • なおなおさん
      ゆたこちさん、こんばんは。
      なるほど〜「あしながおじさん」について興味深いお話をありがとうございます。
      当時興味なくて読み進められないのに、...
      ゆたこちさん、こんばんは。
      なるほど〜「あしながおじさん」について興味深いお話をありがとうございます。
      当時興味なくて読み進められないのに、母が読め読め〜と勧めて来たのですが、親向けってことは、親こそ読め!的な本だったのかしら。齋藤さんの悪口も気になります笑
      図説花開く〜も借りてきてちゃんと読もうと思いました(^^)
      2023/03/08
    • ゆたこちさん
      なおなおさん、こんばんは。
      なおなおさんのお母さんには共有したくなるほど響いた本だったんですね(^^)
      私も自分が好きだった本はつい息子達に...
      なおなおさん、こんばんは。
      なおなおさんのお母さんには共有したくなるほど響いた本だったんですね(^^)
      私も自分が好きだった本はつい息子達に勧めたくなって、しれっと本棚に混ぜ混んだりしますが、まあ、あんまり読まれないですね(笑)

      私も花開く~図書館で探してみようと思います。お勝手のあんも今日借りてきたので楽しみです♪
      これからもなおなおさんのレビュー、楽しみにしております(〃´ω`〃)
      2023/03/09
  • 斎藤美奈子に外れ無し、ということに気づいてから積読本をどんどん消費中。
    これもまた楽しめた。
    ほとんどの本を読んでいるか、ドラマ映画で見ているか、なので、他の書評本とはまたちょっと違った感慨がある。

    なぜあんなに少女小説に夢中になったのか、その謎は、作者によって父親が消されて、主人公たちの楔が無くなったことによるのだね。「みなしご」という設定は、家父長制からの脱却でもあるのだ。

    次の積読もまた読もう!ってどんだけ斎藤さんの本を放っておいたんだ笑

  • 面白くて一気読み。自分はこういうのを読みたいんだとつくづく思った。かつて熱心に読んだ少女小説。フェミ的にはどうなのよという内容が多く、まあ、あれは若気の至りというか通過儀礼というか、本気であれこれ言うものじゃないかなと思いつつ、一方では、ノスタルジーにとどまらない愛着を感じる作品がいくつもあって、ずっとモヤモヤしていたように思う。

    そこにズバリと斬り込む斎藤美奈子さん。さすがの切れ味で、ずっと愛されてきた少女小説には、それだけの魅力や意味があるのだと説いて、私のモヤモヤを吹き飛ばしてくれる。「赤毛のアン」に「若草物語」「秘密の花園」「小公女」などなど、少女小説はどれも良妻賢母教育のツールではあったけれど、その表向きの顔とは別の、強いメッセージを発してきたのだと美奈子姐さんは言う。

    そのメッセージとは「女の子よ、くじけるな」ということ。世の中には、女であるがゆえのつらいこと苦しいことがいろいろあるけれど、それに負けるな、くじけずに生きていけ。長く読まれる少女小説には、そういう励ましが埋め込まれていると喝破されて、もう目から鱗がバラバラ落ちた。そうだ、そうだよ。主人公たちが結局「家庭婦人」におさまろうがなんだろうが、自分で自分の道を切り開いていくところに爽快さがあったんだよね。時代時代で求めていくものは変わるけど、その気概が伝わるから、読み継がれてきたのだ。

    取り上げられる少女小説は九作。知ってはいるけれど、はて読んだかしら?というものもあるが、ストーリーを紹介しながら論じられるので、どれも興味深く読めた。「長くつ下のピッピ」とか、へぇ~そういうお話だったのかと思ったり。大好きで何度も読み返した「赤毛のアン」についての章が面白いのは当然として(「赤毛のアン」には、「女の子らしさの肯定」があるという分析には、確かに!と膝を打った)、さほど好きではなかった「小公女」や「あしながおじさん」についても、なるほどなあと思うところが随所にあった。

    著者の著作では、「はじめに」「まえがき」がとても面白くためになる。本書でも、少女小説の「お約束ごと」を整理したくだりに、言われてみればその通りと納得。ヒロインは「おてんば」で「みなしご」で「友情が恋愛を凌駕」していて「少女から卒業」していく。こういう俯瞰的な視点のあることが、著者の切れ味の元なんだろう。

  • ああ「みなしご」、なんと魅惑的な響き。ここにとり上げられている少女小説は、もちろん夢中で読んだクチである。その頃感じていた「そうそう!」な気持ちと、「えええ??」な気持ちの両方を切ってもらえて、大変満足する。ツッコミも痛快。面白かった。『ハイジ』や『秘密の花園』の歩けて治って大団円…にモヤモヤしていたのも思い出した。そこも、「歩くことが正しいことか」とちゃんと言及してくれるので、斎藤美奈子は信用出来る!と思ってしまうのだった。

    家庭小説だったはずなのに、逸脱し、自由を求めて闘っていたよね。
    ビバ、わきまえない少女たち。

  • 文芸評論家、斎藤美奈子さんに聞く──作家たちがアイドルだった時代 | GQ Japan
    https://www.gqjapan.jp/culture/column/20171116/minako-saito

    【夏の文芸エクラ大賞】斎藤美奈子さんがコロナ禍の世と話題本を解説! | Web eclat | 50代女性のためのファッション、ビューティ、ライフスタイル最新情報
    https://eclat.hpplus.jp/article/57015

    挑発する少女小説 :斎藤 美奈子|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309631349/

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ベスト『挑発する少女小説』 | 教文館ナルニア国
      https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archives...
      ベスト『挑発する少女小説』 | 教文館ナルニア国
      https://www.kyobunkwan.co.jp/narnia/archives/weblog/31729
      2021/07/26
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      自分自身を信じて 『挑発する少女小説』 文芸評論家・斎藤美奈子さん(64) :東京新聞 TOKYO Web
      https://www.toky...
      自分自身を信じて 『挑発する少女小説』 文芸評論家・斎藤美奈子さん(64) :東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/125840?rct=book
      2021/08/23
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      日本児童文学学会第60回研究大会 | Peatix
      https://childrensliterature60.peatix.com/

      講...
      日本児童文学学会第60回研究大会 | Peatix
      https://childrensliterature60.peatix.com/

      講演会 14:10~15:40    
      演題:今さらながら、今だからこその少女小説
         ―『若草物語』から『長くつ下のピッピ』まで―
      講師:斎藤美奈子さん(文芸評論家)
      2021/11/11
  • 小公女、若草物語、ハイジ、赤毛のアン、あしながおじさん、秘密の花園、大草原の小さな家、ふたりのロッテ、長くつ下のピッピ…
    19世紀後半~20世紀前半に描かれた、欧米発の翻訳少女小説。世界中で親しまれてきた上記の名作達に、どこかで触れてきた女性は少なくないだろう。私自身、作品をしっかり読んだのは「若草物語」のみだが、それ以外の作品の殆どは世界名作劇場のアニメやテレビドラマ、子供向けダイジェスト読み物(マンガ含む)で出会ってきた。
    たくさんの女子達の心を捉えてきた名作を、斎藤さんが新たな視点で斬り込んでくれた!いや~毎度の事ながらキレッキレです。幼い頃はうっすらとしか理解できていなかったことも、自分が大人になり、歴史的視点からも物語を俯瞰で見ることができるようになったからこそ、気付くことがこんなにあるとは…!斎藤さんのテンポよい語りに乗せられ、一気読みしてしまいました。
    改めて物語の背景を知ると、ヒロイン達の強かさが浮かび上がってくる…今更ながら、エグいなぁと思うことも多々あり(そこがまた面白い)。斎藤さんの鋭い指摘が気持ちよいほど腑に落ちる!保守的…に思えた少女小説、確かに「挑発」してます。斎藤さんも結構挑発してるので、作品によっては辛口すぎませんか~という部分もあるにはあるが。
    それぞれ独立した章かと思いきや、順番にも意味があるのが読んでいてわかる。「大草原の小さな家」のローラのある決断に対し、「ローラと同世代のアン・シャーリー(赤毛のアン)が聞いたら蹴飛ばしたでしょう。一世代上のジョー・マーチ(若草物語)には怖くて報告もできません」にはちょっと笑った。興味のある章から読むのもアリだろうけど、順を追って読んだ方が、少女小説の「挑発」の意味がより深く理解できると思う。
    それにしても、少女小説がこんなに深掘りできるとはとすごく新鮮だ。そして、多感な時期にこれらの作品に出会えてよかったなと思っている。これは確かに、改めて読み直したくなるなぁ。「戦う少女たちの物語」には、大人になっても励まされ、勇気付けられる。これからも。

  • 帯のコピーと少女の横顔のインパクトで、いうならば帯買い。

    「小公女」「若草物語」「ハイジ」「赤毛のアン」「あしながおじさん」「秘密の花園」「大草原の小さな家」シリーズ、「ふたりのロッテ」「長くつ下のピッピ」といった現実の社会に生きる少女が主人公の翻訳小説(家庭小説/少女小説かといわれると、とくに最後の2作はもっとニュートラルな児童書というイメージだけど)を読み直し、こうした作品が世間の女の子らしさの型にはまらない女の子の生き方をみせており、「翻訳少女小説がおもしろいのは、世代も国境も超えて、世界中の女性が成長過程のどこかで同じ本を読んでおり、それが次の創作につながっていること」とあとがきにまとめている。実は「ピッピ」をちゃんと読んだことないのだけど、この作品が少女小説のパロディだといわれると、あ、なるほどと急に興味が湧く。なるほどなあと分析をおもしろく読みつつも、できたら子どもには表向きのメッセージにも裏に込められたメッセージにも無頓着にただ楽しんでもらえるといいなあと思う(つまり、親や先生は、余計なことを言い添えたり下心バリバリで読ませようとしたりしないで…)。
    ちなみに少女の自立の物語といえば、ここに登場しなかったけれどジーン・ポーター「リンバロストの乙女」もわすれがたい。氷室冴子のエッセイ(海外家庭/少女小説ガイドブック)『マイ・ディア』で知り、その関連企画<マイ・ディア・ストーリー>として復刊された赤いギンガムチェックの角川文庫で読んだ思い出。

    ハウス名作劇場には少年主人公の「トム・ソーヤーの冒険」「小公子」もあったし、基本的に本好き少女は今も昔も主人公の性別などにとらわれずに名作に親しむものだと思うけど、男の子は少女が主人公のお話(というか、ケストナーを除けば女性作家による作品?)をあまり手に取らない傾向がある(実際、「赤毛のアン」が愛読書という男性がいると、めずらしいな、と思ってしまうものね)のはどうしてなのだろう? そういえば、漫画の世界でも、女の子が少年漫画を堂々と読むのに対して、男の子の少女漫画へのハードルは高いという話も…こういうのも、無意識レベルのマチズモみたいなのと関係あるのかしら。

    追記(8月20日):帰省中の大学生長女が手にとってすぐ読了。帯イラストの描き手はすでにご存知だった模様。幼年童話から一般書へのステップアップが異様に早く、あんまり児童文学を読んでいないのではないかと思われた娘だけど、さすがに主な少女小説は読破しており(「秘密の花園」で読書感想文を書いたなんてしらなかったな)この本の内容も楽しんだらしいので、次に読む本として「マイ・ディア」を渡した。

  • 取り上げられている少女小説は、どれも小学生から中学生の間に読んだ。
    こんな意味があったのかと興味深い。改めて読み直してみたい。

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著者プロフィール

1956年新潟市生まれ。文芸評論家。1994年『妊娠小説』(筑摩書房)でデビュー。2002年『文章読本さん江』(筑摩書房)で小林秀雄賞。他の著書に『紅一点論』『趣味は読書。』『モダンガール論』『本の本』『学校が教えないほんとうの政治の話』『日本の同時代小説』『中古典のすすめ』等多数。

「2020年 『忖度しません』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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