アブサロム、アブサロム! (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-9)
- 河出書房新社 (2008年7月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (476ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309709499
感想・レビュー・書評
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荘園主・サトペンは極貧から身を起してハイチで頭角を現し、最後に南部はジェファソンの町に住み着いて一代で財をなす。サトペンが自分のアイデンティティ(=極貧のなりあがり)を変えようと白人農園主(だったと思う)の娘と結婚したときから、破滅への序曲が始まる。息子が白人の純正な血をついでいないこと(妻が白人に見えて実は混血だったので、サトペンが築き上げた王国の後継者が黒人に!)を知ったサトペンはハイチの妻子を捨てて南部で新しい妻を迎えるが、その妻が産んだ娘は先妻の息子(異母兄弟)と惹かれあう…。近親相姦、ジェンダー、人種、南部。さまざまなファクターを縦横無尽に絡ませた、サトペン王国の興亡の物語。
天才とはフォークナーのような人間にささげられる言葉で、今は過剰に使われてインフレを起している。小説によって人生が180度変わることはないが、人生観が180度変わることはある。そのような体験ができる、数少ない世界文学のひとつ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
南北戦争時代らへんを生きたアメリカ南部のごっついおっさんを巡る話。これでもかというほど、黒人と白人の差異が強調される時代の物語。「血」「家」「子孫繁栄」といった、おっさんのあいだをうずまく思想、そして巨大な土地に自分の世界を作り上げていくおっさんのいかつい意志にものすごいもんがあった。中上健次をして「俺は日本のフォークナーになるぜ!」と言わしめたフォークナーである。「枯木灘」のおっさんとサトペンが重なった。読んでる時はそんなにめちゃくちゃおもろいと感じないが、後から想い出すと、じわじわとからだに滲み込んでくる物語である。2008.10.29-(31)-11.4.(7d).
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