須賀敦子 (池澤夏樹=個人編集 日本文学全集 25)

著者 :
  • 河出書房新社
4.07
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309728957

感想・レビュー・書評

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  • 須賀敦子さんの作品はほとんど読んだし、そのうちのいくつかは繰り返し読んでいます。
    だから池澤夏樹さんが編集して出版されることを知った一年前から、この本が出るのを楽しみにしていました。

    私が須賀敦子さんの本を読み始めたのは4年前の2月。
    その一年前に震災があって、私はショックで予定していた初めてのヨーロッパ旅行をキャンセル。
    「きっと一生ヨーロッパには行けないのだろう」と思いました。
    でも徐々に「行ける時に行っておいたほうがいいのではないか」と思い始め、須賀敦子さんの本を一気に5冊読んでからは「絶対にヨーロッパに行く」と決心したのです。

    それで頑張って5回行ってから再び須賀さんの本を読むと、しばしば訪れた街が登場し、やっぱり行って良かったなあと。
    そして最近「もうヨーロッパはいいか。しばらく忙しくて行けそうもないし。」と思っていたんですけど、今回この本を読んで「トリエステ行きたい…」という気持ちが湧きあがって、困っています。

    個人的に、ヨーロッパ旅行に行った以外に、『ある家族の会話』を読んだことと、歴史とくに近現代史を勉強したことで、須賀敦子さんの本の再読がより楽しめました。

    さてこの中で私の特に好きな作品といえば、『コルシア書店の仲間たち』のあとがき。
    これは何度読んでも心に深くしみこみます。
    4年前のレビューに記録してあります。

    もうひとつは『きらめく海のトリエステ』です。
    めずらしく敦子さんが感情的。

    さらにもうひとつ、今回ちょっと惹かれたのは『私のなかのナタリア・ギンズブルグ』
    だまし舟という折り紙のたとえはとても面白い。
    そして大好きな人を好きでいつづけたいなら、上手に距離をとるのがいいなと改めて思った次第です。

  • イタリア文学者でエッセイストとしても知られた須賀敦子さん(1929~1998)。
    彼女が残した様々な文章を、親交のあった作家の池澤夏樹さんが厳選して収録した作品集。

    収録作品は、初期・後期作品問わず、知人や家族の思い出や愛した街並みなど様々なことを記したエッセイ、イタリア文学を翻訳した際に巻末に掲載したあとがき、須賀さんとその夫が心から愛し、やがて須賀さんが翻訳したウンベルト・サバの詩など、バラエティに富んでいます。

    この多様さが、娘、学生、妻、エッセイスト、翻訳者、大学教授等、須賀さんがその69年の人生の中で持った様々な顔を、より連続性と奥行きを持って浮かび上がらせています。
    ある一定の時期に類似のテーマで書かれた文芸雑誌への連載をまとめたものとはまた違う魅力があります。
    (何より驚きだったのは、翻訳は翻訳でも、イタリア文学を日本語に訳すに留まらず、谷崎潤一郎や川端康成らの作品を、日本語からイタリア語に訳すお仕事をかなりされていたという点。)

    そして、記した年代や文章の目的によって、技巧や構成方法には少なからず差異はありますが、須賀さんの、静謐かつすっきりとした、そして、記した対象への深い愛情がわかる美しい文体は一貫しています。

    この文学全集には必ずつく池澤さんの解説も、相も変わらず素敵です。

    池澤さんご自身の人生を、須賀さんのそれに、重ね合わせたり、対比させたりしながら彼女の人生を追っているのですが、小説を書きたいと公言していながらひとつの小説も残すことなく旅立った須賀さんについて、「彼女は実在の人間に(むしろ実在のイタリア人に)あまりに強い関心と愛があるばかりに、そこから架空の人物を紡ぎ出すことができなかった。」と記す池澤さんの言葉には、愛しい記憶を素直に語り続けた須賀さんに対する確かな敬意が込められています。

    巻末には、須賀さんの生まれてから死ぬまでの年譜も掲載されていますので、須賀敦子さんという方とその作品を体系的に知る入門編として、最適な作品集だと思います。

  • 戦後間もないころに女性一人でイタリアで過ごした
    著者のエッセー、小説。
    ミラノや、トリエステなど
    なんとなく行ってみたい海外の場所が増えたような気がします。
    石畳の街並みや、古い教会、海、波止。なかなかみれない
    景色を文体で表現されていて、そのような景色やイメージ
    を感じることは面白いと思います。
    『コルシカ書店の仲間たち』『ウンベルト・サバ』が
    気に入りました。

  • エッセイと小説の違いを厳密にはよくわかっていなかった。前者は真実であり、後者は創作なのだそうだ。本書に収められているのはすべてエッセイであり、筆者は生涯小説を書かなかったという。それにしても、すべてが真実であるならば、何と楽しい人生であったことか。勿論、両親から猛反対された結婚や、その夫に先立たれたことは、さりげなく表現されているものの、大変つらい出来事であったと想像する。それでも本作の多くには、たくさんの友人たちと過ごした人生の楽しさにあふれている。筆者の愛するサバの詩がもっともそのことを象徴しているだろう。「人生とは、生きることの苦しみを癒してくれるものである」

  • 我々は海外の書を読むだけでなく、海外で暮らすところから生まれる文学を得た。それがなぜかくも豊饒な作品に結実したのか。

  • 231115*読了
    須賀敦子さんが好きだと感じた。
    日本文学全集の中でも、一番感じ入ったように思う。

    「コルシア書店の仲間たち」は2018年に単体で読んだことがあったけれど、改めて読むと、当時よりもすごくよかった。
    5年前は気持ち的にも慌ただしく、須賀敦子さんの文章を味わう余裕がなかったのだろうか。
    その時のブクログの感想も、そこ?みたいなことばっかり書いていて、自分自身の変化も感じる。
    その時も、須賀敦子さんについてはいろんな作家さんが語っているのを目にして、そんなにすごい人?と、「コルシア書店の仲間たち」を読んでもその気持ちが拭えなかったのだけれど、今回で分かった。すごい人です、間違いない。

    そのほかのエッセイもとてもよかった。
    物語を書く人ではなく、エッセイや翻訳で輝く人だったのも、なんだかいい。

    夫のペッピーノさんとの短い結婚生活、早くに夫を亡くした悲しみは計り知れないけれど、異国でこんなにも濃密な経験をし、そこで吸収したことをいきいきとした文章で読者に伝えてくれる須賀さん。
    とてもすばらしい女性だと思う。

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000055909

  • 文学

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著者プロフィール

1929年兵庫県生まれ。著書に『ミラノ 霧の風景』『コルシア書店の仲間たち』『ヴェネツィアの宿』『トリエステの坂道』『ユルスナールの靴』『須賀敦子全集(全8巻・別巻1)』など。1998年没。

「2010年 『須賀敦子全集【文庫版 全8巻】セット』 で使われていた紹介文から引用しています。」

須賀敦子の作品

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