榲桲に目鼻のつく話

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 34
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (114ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309921631

感想・レビュー・書評

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  • ブクログに登録する段になって河出書房新社刊だと気づきびっくりしてる。なぜか国書刊行会だと思ってた。
    黄色が眩しい、絵がまるで刺繍のように浮かぶ質感のカバーが素敵。絵をふんだんに含む100頁超の大ボリュームでこの装丁でこの値段、実はすごく安価なのでは……? 講談社の何の変哲もない装丁の絵本とたいして変わらないなんて信じられない。

    『化鳥』『朱日記』ときて今度はこれ、中川学による絵がまたすごく良い。うまく言えないけど、抽象化ないし簡略化、および意匠化の程度が絶妙に好みなんだと思う。日本の絵画に古くから受け継がれる文脈のようなもの、紙芝居の絵から絵を継ぐ呼吸のようなものまで備えて、カラフルで賑々しい絵を画面いっぱいに見せてくれるからわくわくしてしまう。そしてその絵の多さ。たまらなく贅沢。
    そんな絵でも盛り上げてくれる物語はなかなか得たいが知れない。伝聞として始まって、それは回想で、気づけば現実のものとして了解していたはずの物語が現実を超えたところで続いていくのを見る形。友人の少年が聞かせたでたらめの語りが、ものの一瞬で形を得てしまうのにぞっとした。音羽の悲哀と父の苦悩が現実のものとしてあってなお、あの時乾三少年は異界にいたのだと思う。そして物語は当初の伝聞に帰ってこない。余韻が沁みる。

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著者プロフィール

1873(明治6)年〜1939(昭和14)年)、小説家。石川県金沢市下新町出身。
15歳のとき、尾崎紅葉『二人比丘尼色懺悔』に衝撃を受け、17歳で師事。
1893年、京都日出新聞にてデビュー作『冠弥左衛門』を連載。
1894年、父が逝去したことで経済的援助がなくなり、文筆一本で生計を立てる決意をし、『予備兵』『義血侠血』などを執筆。1895年に『夜行巡査』と『外科室』を発表。
脚気を患いながらも精力的に執筆を続け、小説『高野聖』(1900年)、『草迷宮』(1908年)、『由縁の女』(1919年)や戯曲『夜叉ヶ池』(1913年)、『天守物語』(1917年)など、数々の名作を残す。1939年9月、癌性肺腫瘍のため逝去。

「2023年 『処方秘箋  泉 鏡花 幻妖美譚傑作集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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